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生きづらさなんて基本装備

ドストエフスキー「地下室の手記」は朝の出勤ラッシュでは読んではいけない。感情生活が乱れ、正気でいられなくなる。毅然と語りかけるロシア人の尊老の姿に圧倒され、あらゆる感情の矛盾を良しとしてきた人間は絶望的な敗北感を味わうことになる。文字通り「名伏しがたい」感情に心を支配されてしまう。歪んだ感情ではメールすらまともに返信できない。

「現代のちゃんとした人間は、すべて臆病者で、奴隷であるし、そうでなければならないものだ。これは、現代人の正常な状態である。」

19世紀に、資本主義社会に生きる人間の姿をえぐりだした。小休止のない地続きの「今」を生きる現代人には残酷すぎる言葉だ。ドストエフスキーは見抜いていた。

そういえば、昨日8月15日は終戦記念日だそうだ。「戦争」にフィクション感が脚色されつつある世の中で、平和ボケした日本人は何を思うのだろう。

大新聞はここぞとばかりに社色をだしながら、「戦争」について論じていたが、それも、8月ジャーナリズムの一環か。それも風物詩と化したのか。

ちゃんとした優等生人間の私は、大新聞はさておき、明日も日経MJを読みながら、ビジネス談話に花を咲かせるのだ。そして、平然と「送受信」ボタンを押すのだ。


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