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【#21】Dr.タカバタケと『彼女』の惑星移民【創作大賞2024参加作品】
【本編連載】#21
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『3223年 地球にて回想』
2
だからさ、桜の花の舞うAC.TOKYOでお前を見た時は拍子抜けしたよ。でも、一目で俺が補佐するべき、天才なんだってわかった。ムカつきを感じていたαチルドレンにもかかわらずな。
そうだな、その日の話をしようか。
あの日、俺は緊張していたんだよ。運命を変える日が始まるってな。
俺が研究室に入ったすぐ後に来た、色白のひ弱そうな、ボクちゃん。それがお前だった。
とにかく動きが不審だったぜ? 顔は真っ青で、ゆらゆらと揺れているかと思ったら、いきなり倒れそうになって……そのまま外に連れ出したよ。そしたら「そ、装置が作動して時空が歪んでいる……」って!
傑作だ! αの人間はやっぱり俺たちとは違うと思った。
俺は元来人間嫌いだ。もちろん大人になってからはメリットのための人間関係を結ぶことはできるようになっていた。だが本当の友達は、マリーとマリーンしかいなかった。でも、お前と話したその数回のやり取りで、既に俺の心はお前を受け入れていたんだよ。
不思議だ。
その夜に、初めて一緒にワインを飲んだ。本当に楽しかったな。そしてそこで、お前の異質な知性と天才ぶりを感じたよ。一発で『ああこれが本当の天才。発見・発明をする人種なんだ』って思った。
心地よかった。俺は、俺の夢のためのパートナーを見つけたんだと思った。同時にお前が叶えたいと思う夢をなんでも叶えてやるって思ったよ。
本当だぜ?
でも本当にあの夜は楽しかったよ。後日店に行ったらマスターに、「顔もタイプも全然違うけど、かわいい弟さんね。紹介して」って言われて、噴き出したよ。
桜の舞う入所式の日。
もうひとつ俺はとんでもないものを見つけた。
研究室に入ったとき目に飛び込んできた、金色の髪と金色の瞳……マリー、君が現れたのかと思った。
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あの冷たかった君はAIボディの偽物で、隠れて成長して、目の前に現れたのかと思ったよ。
今でも相変わらず人見知りなんだろうなと思いながら、君を見ていた。
テキストで見る限り、マリーと同じように両親のデータはなかった。私邸で育ったということ以外、ほとんどの情報は隠されていた。私邸で育つなんて普通あり得ない。もしかしたらお偉いさんの子供なのかもしれないと思った。
俺の直感は、アンジョーはどこかで必ずマリーとつながっていると言った。
確かめようなんてない。
でもそれでもよかった。
アンジョー、君を太陽から救えれば、マリーを救ったんだと自分の中に落とし込める。
君との出会いは、俺にとってはそういう特別なものだった。
そしてシーは地球の運命と俺たちの進む道を語った。
衝撃的だったけど、全部受け入れられた。俺はこれを待っていたんだと思った。
シーには感謝している。世界の運命を変えるために、俺をその一員に選び、使命を与えてくれた。ノボーと、アンジョーに会わせてくれた。
シー、ノボー。俺は、お前たちのためだったら何でもやってやる。シー、あんたの言葉は全部信じる。星が運命を変えたがっているんだよな?
ありがたい。すべてつながっている。全部俺の夢につながっている。
アンジョー、君を救うことが、俺の新しい夢になった。
3
本当に充実した時間だった。リコウ時代も充実していたけど、すべてが違った。
とにかく楽しかった。真剣なのに笑いが絶えず、世界の運命を背負っているのに楽しいレクリエーションをしている気分だった。
みんな本物の天才だからだ。今まで周りに物足りなさを感じていたから、思う存分自分の実力を出し切り、自由に動ける感じが心地よかった。
シーとノボーで組むことが多かったから、俺はいつもアンジョーと組んでいた。
アンジョーとのやり取りは特に楽しかった。アンジョーは基本的にいつでも機嫌が悪い。でもまだ子供だから、少しでも興味が沸くとすぐにそれに引き付けられ、のめり込んでいく。
何かを吸収しているときのアンジョーは素直だった。マリーが真剣に絵を描いたり、本を読んだりする姿を思い出した。
アンジョー、君がそこに生きているということそれだけで、俺には奇跡が起きているように思えたよ。
始めてアンジョーをマリーンにのせた時。マリーンが一言も声を発さないのには笑った。
いわく、「回路が混乱し、言語を発することができませんでした」だって。マリーンの測定装置には限界はあるけど、俺の直感だけではなく、マリーンが認識する限りも、遺伝子解析すれば、マリーとアンジョーは相当近しい存在であるという見解だった。
#22 👇
6月13日17:00投稿
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【語句解説】
(別途記事にしていますが、初回登場語句は本文に注釈してあります)
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【4つのマガジン】
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