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【残念怪談】新解釈トイレの窓から

今回も以前怪談風に仕上げた記事の実態を書いていこうと思う。

あれは小学校の二年生の頃だったか。
その頃に家族で住んでいた家はとても古く、トイレと風呂が屋外にあるような造りになっていた。
夜は怖くてとても一人では行くことが出来ず、いつも母に着いてきてもらっていた。

田舎の古いトイレはブロックがそのまま壁になっており、立ってする方の目の前には明かり取り用の小さな窓。
目線を下げて便器。
足元には換気のための20cm程の隙間が空いている。

その日は昼間。

トイレに行きたくなりいつもように外へ出る。

太陽が真上に昇った時刻くらいだった為、何も考えず用を足す。

目線を便器に落とし、何気なく足元の隙間を見ていると外が見える。

光が入ってきているため安心しきっていた。

考えることは虫が入ってこないかだけだ。

用を足しながら、顔を上げて曇りガラスの窓を見る。



男が立っている。

曇りガラスにべったり顔を近付けて。

表情がわかる。


考えてみて頂きたい。

下の隙間を私はずっと見ていた。
人が近付けば影が出来るか、この距離ならば足が見えるはずだ。

以前弟にいたずらをした時には、足と影で事前にバレていた。

顔を上げて窓を開けると誰もいない。
トイレを出て敷地内を見ても誰もいなかった。

その日は私一人での留守番。

人間だったのか、それとも。


と、ここまでが怪談風に仕上げた話だ。

事実は少しだけ時間を戻す。


男が立っている。

曇りガラスにべったり顔を近付けて。

表情がわかる。

足元に視線を落とすが、換気口には足が見えない。
小窓に視線を戻すとまだ男はこちらを見ていた。

背筋から頭頂部まで、身体の中を冷気が通り抜けるような感覚。
脂汗も滲む。


あまりにも驚いたせいか、それまで出ていたモノが止まってしまった。
だが、残尿感はたっぷり残っている。

一度撤退するか。

いや、今戻ったらかなりの確率で漏らしてしまう。

葛藤に駆られていたのだが、そんな切羽詰まった状況でも目の前に男が立っている。

「こいつ何をやってんだ?」

小学二年生で初めて使用した乱暴な言葉。
目の前の男のどうしようもない理不尽な仕打ちは、私の精神年齢を4歳は早めた。

怒りというものは恐怖を凌駕する。

私は目の前の男に対して、小窓ごと正拳突きを放った。

派手な音を立て揺れる小窓。

瞬間。

曇りガラスに目を丸くする男の姿を写したのを最後に、その後トイレでの現象は一切起きることは無かった。

図らずも除霊に成功してしまったようだ。

これを読んで下さった皆様も、もし得体の知れない存在に悩まされているのならば、一度正拳突きを試してもらいたい。

尚、それに関して起きた事象についての責任は負いかねることを明記しておく。

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