【心霊体験】ベッドの柵 トイレの窓から【短編】
【ベッドの柵】
高校三年の夏休み。
早いと車の免許を取得している子もいる。
私の友人も免許を取得し、軽自動車を早速乗り回して遊んでいた。
夏の夜、若い男女が集まる。
「心霊スポットに行こう」
(ほら始まった・・・)
友人の一人が、F県A市にあるその地の大名の墓がヤバい・・・と提案。
高速道路を爆走し、約三時間。
到着時刻23:00
そこはF県でも修学旅行、観光等人が多く訪れる町ではあるが、夜は街灯の間隔が広く、スポット的に照らされている程度。
件の大名の墓は、夜に人が訪れることを想定していないのだろう、街灯も無く、月明りも届かない真っ暗な森の中に建てられていた。
「やっぱりやめようよ・・・」
一緒に行った女の子が言う。
「大丈夫だ!いいから行くぞ!」
調子にのった友人(仮に田中 誠としておく)が言う。
この田中 誠。
いつもやりすぎる所がある。
かっこつけというか、自分を大きく見せたいというか。
とにかく痛い奴。
墓に行くと、そこは神聖な空気が満ちている。
私には恐怖感は微塵も感じない。
真っ暗な中、当時の豆電球のような懐中電灯の光だけだったが、清々しくさえあった。。
その時。
バキッ
バキッ
振り返ると、田中が大名の墓に向かって卒塔婆を叩きつけていた。
どんどん清々しかった気が澱んでいく。
家臣だろう。
怒りの表情を浮かべ、森の奥からこちらを見ている。
女の子達が声を上げて泣いていた。
さすがに人道的に有り得ないと思い、ぶん殴って倒れた田中を引きずり車に戻った。
その後、もう帰ろう・・・と誰からともなく言い帰路に。
その後夏休みが明け、一週間しても田中が登校してこない。
先生に聞いても「体調が良くないらしい」と。
帰りに田中の家へ寄ってみることにした。
部活帰りに尋ねると、やつれた田中の母親が出迎えた。
二階へ上がり田中の部屋に入ると、うめき声が聞こえる。
ベッドの中で四つん這いになり。
ううぅぅぅぅううぅぅぅぅぅうぅぅぅぅううぅぅぅぅ・・・
「誠・・・」
通常人間の目は横長だが、田中の目は縦長に変形していた。
田中の母親に私の知っている霊媒師に見せるように伝え、私からも連絡をしてその場は去った。
一週間後。
母親から夜に電話があり、すぐに来てほしいと。
田中の家に到着し、発狂する母親をなだめ、二階の田中の部屋へ。
田中がベッドに横たわっている。
いや。
パイプベッドの上部柵から身体だけが伸びている。
頭は?
柵をくぐり抜け、頭だけが柵の外にでている状態だ。
柵の幅は恐らく7~8cm程。
鉄柵の為、人の力ではどうにもならない。
その隙間に首が挟まって亡くなっていた。
どうやって頭を通したのか。
今でも謎だ。
【トイレの窓から】
あれは小学校の二年生の頃だったか。
その頃に家族で住んでいた家はとても古く、トイレと風呂が屋外にあるような造りになっていた。
夜は怖くてとても一人では行くことが出来ず、いつも母に着いてきてもらっていた。
田舎の古いトイレはブロックがそのまま壁になっており、立ってする方の目の前には明かり取り用の小さな窓。
目線を下げて便器。
足元には換気のための20cm程の隙間が空いている。
その日は昼間。
トイレに行きたくなりいつもように外へ出る。
太陽が真上に昇った時刻くらいだった為、何も考えず用を足す。
目線を便器に落とし、何気なく足元の隙間を見ていると外が見える。
光が入ってきているため安心しきっていた。
考えることは虫が入ってこないかだけだ。
用を足しながら、顔を上げて曇りガラスの窓を見る。
男が立っている。
曇りガラスにべったり顔を近付けて。
表情がわかる。
考えてみて頂きたい。
下の隙間を私はずっと見ていた。
人が近付けば影が出来るか、この距離ならば足が見えるはずだ。
以前弟にいたずらをした時には、足と影で事前にバレていた。
顔を上げて窓を開けると誰もいない。
トイレを出て敷地内を見ても誰もいなかった。
その日は私一人での留守番。
人間だったのか、それとも。
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