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【プレサスインタビュー Vol.7】鹿嶋市・髙野優也さん

茨城県鹿嶋市で新拓農園を営む髙野優也(たかの ゆうや)さん。2023年1月に地元・鹿嶋市内で新規就農し、かぼちゃやかぶ、にんじん、小松菜などの野菜を中心に育て、地域の飲食店や道の駅などに出荷をしています。

髙野優也さんと奥様の幸奈さん

髙野さんは鹿嶋市出身。地元の高校を卒業後、神栖市にあるDIC株式会社鹿島工場に就職。4年間のサラリーマン生活を経て、農家へ転身し、現在は同じく鹿嶋市出身の奥様・幸奈さんと二人三脚で野菜を育てています。


自身の変化ときっかけ

高校を卒業後、そのまま故郷の隣町・神栖市内の大手印刷会社の工場へ就職した髙野さん。当時は憧れていた職業や就きたい職業も特になく、地元ということ、知り合いがいたこと、給料が良かったこと、安定して働けることなどが工場へ就職した理由でした。

「元々は表に出ないし、発言とかもしないタイプで自分から手を挙げることなんてほとんどなかったし、臆病な性格で常にリスクを考えて行動してしまっていました。」と入社当時を振り返る髙野さん。しかし、入社後、プレゼンテーションなどを行ううちに自分の意見がちゃんと相手に伝わった時の喜びを感じるようになります。「人と話したり、他人に意見を伝えたりすることが面白いと思うようになったんです。会社で先輩たちにも可愛がってもらえて人脈にも恵まれていたと思います。」と語る髙野さん。会社に入社したことで内向的な性格から積極的な性格へ、自身の変化を感じたようです。

そんな順風満帆なサラリーマンをしていた髙野さんにもコロナが襲います。自宅から外に出ることがほぼなくなった髙野さんはおじいさんがやっていた家庭菜園の手伝いを始めました。「最初は暇つぶし感覚でやっていた家庭菜園も、野菜を育ててみたら成長しているのが嬉しくて、キャベツを作ってみたいなとか、自分で作った野菜を食べてみたいなと思うようになりました。」と、どんどん農業の魅力にハマっていきました。

サラリーマンから農家へ

サラリーマンをしながらも2020年の夏には自身で色々な野菜を作り始め、2021年4月にはアグリイノベーション大学校へ入学、本格的に農業の勉強をし始めました。

新拓農園の畑を紹介する髙野さん

「前の職場は3交代制の工場勤務で定年の60歳まで続けても普通すぎておもしろくないな…って思っちゃって。お父さんが空調関係の会社をやっていることもあって社長になりたいという願望が強くなりました。それで、自分に合う職探しをするのに興味があることを3ヶ月継続してみたんです。農業の他にもプログラミングを3ヶ月間オンラインで習ったりもしてみたけど、自分に合っているとは思えなくて。一人での作業が得意だし、なにかを作ることが好きだからシーグラスの写真立てをオンラインで販売したりもしてみました。シーグラスって波によって形が変わるから鹿嶋のシーグラスはこの辺でしか採れないし、オリジナリティある作品が作れるとは思ったけど、全然お金にならなくて…。それでやっぱり、農業だなって。」と語る髙野さん。

2022年1月から本格的に畑をいじり始め、10月に開業届を出し、2023年1月には新規就農の農家として新拓農園をスタートしました。

新拓農園と髙野さんの想い

新拓農園ではかぼちゃ、にんじん、かぶを主力の野菜として育てています。その中でもにんじんは無化学肥料・無農薬の有機農法で育てています。

「にんじんは有機で作りやすい野菜のひとつで、かぶは研修していた時の師匠がかぶを育てていて作るようになりました。かぼちゃはブランド化をしたいと思っていて、オリジナルが作れないかと試行錯誤しているところです。かぼちゃを収穫した後の11月〜3月頃にかけてほうれん草や小松菜の葉物を育てている感じですね。」と髙野さん。いくつかの野菜を育てている傍ら、オリジナルブランドの少ないかぼちゃで新拓農園オリジナルのブランドかぼちゃを作ろうと努力をされています。

新拓農園で採れた野菜

「農業って野菜が成長しているところを見られて嬉しかったり、自分が作りたいと思ったものを作りあげることができます。でも、どうしても天候に左右されてしまうし、努力が報われないこともたくさんあります。僕は臆病だからハウスの湿度がすぐ気になってしまったり、病気になっていないかとかすごい気になってしまって、温度とか湿度も肌感覚で調整したり換気したりしていますが、この努力も野菜を売り物にできなければ水の泡。正直、農家の努力は金額に応じていないと思っていて…。結局、仕方なくたくさん作ってたくさん売る、薄利多売でしか生き残れない業界になってしまっているのが現状で、これは30年前から変わっていない農業の課題なんですよね。これでは農家は増えないと思っていて。」と語る髙野さん。

「今の農業は大多数が稼いでもコスト面で取られてしまってあまり儲からない農業になってしまっていて、これからは農家を助けていく流れを作らないといけないし、色々なチャレンジをしていかないといけないと思っています。今後、農家が減ってしまって日本が輸入した安い野菜ばかりになってしまったら、輸入だよりになってしまって結果的に苦しむのは消費者だし、安い物にはそれなりの理由があるということを消費者にも理解してもらう必要があると思っていて…。」と現状の農家が直面している課題は近い将来、日本全体に影響してくる可能性があると髙野さんは考えています。

農家の現状について語る髙野さん

「現時点でタネはチリやアメリカ、デンマークなどの海外のものがほとんどです。『タネを制する国は世界を制する』という東大の鈴木教授の言葉があって、1回しか使えないタネがほとんどなので、タネを持っている国は世界中にタネを売ることが出来て、将来的にも困らなくなります。日本もこれからはオーガニックや有機野菜だけでなく、農家を守るためにも国産の野菜を使用した加工食品を作らないといけないと思っていて、今後は加工品にもチャレンジしようと思っています。現在、販売されている多くのジャムやジュースなどの加工品業者も仕入れ値を下げようと国内の農家から買わずに輸入してしまっていて、それでは日本の農家のためにならないので…。」と髙野さん。

サラリーマンから農家に転身したからこそ、野菜や食品について深く考えるようになり、ご自身も含めた農家を助けたい、農家がしっかりと儲かる仕組みを考えて農業を始める人を増やしたいと思うようになったそうです。

農家への覚悟と家族の理解

農家に転身する際、高校から一緒だった当時の彼女にプロポーズをして、一緒に農家をやってほしいとお願いした髙野さん。当時の彼女は奥様となり、野菜の収穫や収穫した野菜の袋詰めをするなど農家の仕事を二人三脚で行っています。

にんじんの収穫をする髙野さんご夫婦

奥様以外のご家族も髙野さんの農家へのチャレンジを応援してくれているようです。「家族もすごく応援してくれています。ただ、応援はするけど農業は難しいよ、生半可な気持ちではできないよと最初に言われたし、嫁の家族からも付き合いが長くて信頼しているから嫁に出すけど、普通だったら農家の駆け出しで1年、2年のところに嫁にはやらないよって言われました。それでも覚悟を決めて農家をやろうと思っていたし、もし3年経ってサラリーマンの時の給料よりも売り上げが出なかったらやめますって話をして納得してもらいました。」と髙野さん。ご家族の理解や協力もあって始められている農家の仕事ですが、ご自身の農家に対する覚悟も相当のものがあったようです。

新拓農園のかぶのハウス

そんな髙野さんが育てた新拓農園のお野菜は現在、潮来市の道の駅いたこを始め、生協の宅配パルシステムなどで購入が可能、地元の複数の飲食店にも継続的にお野菜を卸しており、鹿嶋市内ではトラットリア・チンクエチェントウツギ酔賓店などで味わうことが出来ます。

新たなチャレンジ

これからは加工品も作っていかないといけないと感じた髙野さんは今年新たなチャレンジを始めることにしました。「鹿嶋と言ったら鹿島アントラーズ。それならば赤い野菜を作ろうということになって、今年唐辛子の栽培を始めました。4月に日光唐辛子の苗を200苗注文して、4月下旬に植え付けをして7月下旬に収穫する予定です。日光唐辛子はそんなに辛くないのが特徴で、青唐辛子としても赤唐辛子としても使うことが出来る唐辛子。乾燥させれば保存も効くので、収穫したら乾燥させて一味や七味唐辛子の加工品として少しずつ販売が出来ればと思っています。」と語る髙野さん。

日光唐辛子の植え付けを行った髙野さん

先日、新拓農園の広い畑の一部で日光唐辛子の植え付けを行い、7月下旬の収穫に向けて初めての唐辛子栽培を始めました。この唐辛子を加工品としてまずは小ロットで販売を行い、鹿嶋市内の飲食店などで使用してもらえることを望んでいる髙野さん。加工品事業を始めるための新たな一歩を踏み出しました。

また、インスタグラムでの発信にも力をいれていこうとしています。「インスタは料理系のアカウントとして頑張っていきたいと思っています。農業の発信をしていく中で誰に向けて発信しているのかわからなくなってきてしまって、家族と話して野菜を使った料理の発信をしていこうということになりました。収益には繋がりにくいことではあるけど、届けたい人に届くインスタでの発信を出来たらと思っています。」と語る髙野さん。野菜を購入してくれた人が料理をする際の参考にしてくれたり、インスタグラムをきっかけに新拓農園の野菜を購入してくれるような発信を心がけていきたいと話します。

Playfulな瞬間

若くして新規就農という大きなチャレンジをして、日々チャレンジと試行錯誤をし続けている髙野さんにもPlayfulな瞬間を聞いてみました。

「もちろん、自分の作った野菜を美味しいと言ってもらえたりするのもとても嬉しいことだけど、自分が思った栽培方法で思った通りに野菜ができた時、手間暇かけてやっていることが報われた時はとても嬉しいし、自分自身のPlayfulな瞬間だと感じますね。でも、一番はかぼちゃを一発目に収穫した時。その時が一番テンションがあがるかな!」と髙野さん。

新拓農園で採れたかぼちゃ

元々の性格は完璧主義で失敗をしないように慎重に物事に取り組んでいた髙野さんですが、農業にそれは向いていないと感じ、リスク管理をしながらもトライアンドエラーの繰り返しをしている中でかぼちゃの収穫をする時が一番テンションのあがるPlayfulな瞬間のようです。

髙野さんの新たな挑戦である、日光唐辛子の栽培。私たちも収穫できる時を今か今かと楽しみにしています。

髙野優也(たかの ゆうや)さんのプロフィール
茨城県鹿嶋市出身。地元の高校を卒業後、神栖市にあるDIC株式会社鹿島工場に就職。コロナ禍に祖父の畑の手伝いをしたことがきっかけとなり、4年間のサラリーマン生活を経て、2021年4月にはアグリイノベーション大学校へ入学、本格的に農業を勉強し、23年1月より新規就農として農家へ転身。現在は奥様の幸奈さんと二人三脚で新拓農園で野菜を育てている。新拓農園の野菜は潮来市の道の駅いたこを始め、生協の宅配パルシステムなどで購入が可能、地元の複数の飲食店でも味わうことが出来る。

⦅新拓農園⦆
 Instagram:https://www.instagram.com/yuya.potosu/
⦅その他⦆
 広報かしま 2023年10月号:https://city.kashima.ibaraki.jp/uploaded/attachment/58804.pdf

★ プレサスインタビューとは

私たちが大切にしている「Playful Sustainable」という言葉。
この言葉には「Playful」答えのない好きの追求、「Sustainable」自然や文化など長く続くものの力を借り、守り続けるという意味が込められています。

私たちがこの地域で活動していく中でカシマにも本業・趣味関係なく、好きなことをとことん追求し、継続的に活動をされている方々にお会いする機会が多く、そんな好きを追求するプレイフルな方々のプレイフルな瞬間にフォーカスし、深堀りしてみることにしました。

どんな活動をどんな想いでされているのか、今後どうなっていきたいのかを実際にインタビューをしてお話しをお伺いし、掲載をしています!

下記、まとめ記事より是非ご覧ください!!

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