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◆#横紋筋融解症 本当は怖いスタチン系のコレステロールを下げる薬、抗生物質、睡眠剤

患者もしくは家族等が早期に認識しうる症状 「手足・肩・腰・全身の筋肉が痛む」、「手足がしびれる」、「手足に力がは いらない」、「こわばる」、「全身がだるい」、「尿の色が赤褐色になる」などの 症状に気づいた場合には、直ちに医師・薬剤師に相談するように指導する。 横紋筋融解症は、骨格筋の融解、壊死により、筋成分が血中へ流出した病態である。その際、流出した大量のミオグロビンにより尿細管に負荷がかか る結果、急性腎不全を併発することが多い。また、まれではあるが呼吸筋が障害され、呼吸困難になる場合もある。したがって血液透析などの適切な処 置が必要となる。症状に気がついた場合には、直ちに受診するよう指導する。
2.副作用の概要

 一般に薬剤性筋障害は発見が早期であるほど予後が良いと言われている。筋障害が強いと、骨格筋より流出したミオグロビンによる腎障害が生じる。不可逆的な腎障害に進展した場合には永続的な血液透析が必要となるばかりでは なく、播種性血管内凝固(DIC)、多臓器不全の合併から生命に関わる重篤な事態に至ることがある。 まず横紋筋融解症を起こしやすい医薬品に関して十分な知識を持つことが 肝要である。経口の抗生物質によるものなどは、投与初期の急性発症の場合もあり、このような事態を完全に予防することはできない。緩徐発症のものにつ いては、定期的に血清 CK 値や電解質濃度を測定することや問診により筋痛・ 筋力低下の有無を確認することが早期発見につながり、重症度の軽減に役立つことがある。本症の性質を考慮すると受診時ごとの医師による経過観察のみで は十分対応できない場合も考えられる。服薬する患者には、まれであっても起こりうる副作用に対して十分な情報を医師・薬剤師などさまざまなレベルで提 供し、患者本人が自ら副作用予防に対処する自覚を促す努力が必要である。
 発症時の自覚症状としては、筋痛・しびれ・腫脹が生じ、筋壊死の結果とし て脱力・赤褐色尿(ミオグロビン尿)が生じ、腎不全症状が加わると無尿・乏 尿・浮腫が生じる。発症は急性・亜急性・緩徐発症とその速度には症例差が大 きい。筋痛・筋力低下の分布は下肢とくに大腿部などの近位筋が主体である。 ときには全身性の場合もあり、呼吸筋・嚥下筋が障害される場合もある。多く の場合、筋痛が先行する時期があるので、軽症のうちに対応することが重要で ある。

(1)自覚症状 筋力低下・疲労感・筋痛が主症状である。
(2)他覚的所見 筋力低下・筋肉の圧痛・把握痛・ミオグロビン尿などがある。
(3)臨床検査所見 検査所見でもっと重要なものは血中 CK 上昇である。腎障害をきたす程度 については、もともとの腎機能障害がある場合には比較的軽度の上昇でも 腎障害が強くなる場合があるので念頭に置く必要がある。CK 上昇とともに LDH、AST(GOT)、ALT(GPT)も上昇する。筋症状がある場合には、CK 上昇 の有無を必ず確認することが重要である。腎機能は必ず検査する必要があ 10 る。
 急性発症の場合には、ミオグロビン尿が CK 上昇に先立つ場合があるの で問診には注意が必要である。 ミオグロビン尿・ミオグロビン血症の診断は免疫抗体法が確実であるが、 迅速診断は難しい。ミオグロビン尿の場合は、試験紙法において血尿・ヘ モグロビン尿と同様の陽性を示し、尿沈渣にて赤血球を認めないことから ヘモグロビン尿と区別は付かない。色調も鮮紅色から時間をおくと暗褐色 になる。迅速な両者の鑑別が必要な場合にはこの色調が塩析により消失す るかどうかをみる(Blondheim 硫安塩析法)。
 しかし、多くの場合は血液検査所見との組み合わせることにより鑑別が可能である。 腎障害の評価が重要であり、急性腎不全に至っていない場合には輸液に より腎保護を図る。
(4)画像所見 CT スキャンで骨格筋が浮腫により低吸収化、または MRI にて T2WI 高信 号となる。所見は非特異的であり診断的価値は少ないが、異常所見が認め られるときには経過観察に有用である。
(5)病理所見 筋生検を行うと急性筋融解による筋線維の壊死・再生所見が認められる。 他の疾患との鑑別診断が必要な場合には行うことがある。 (6)発症機序 横紋筋融解症は比較的まれな合併症として知られてきた。ところが近年 HMG-CoA 還元酵素阻害薬いわゆるスタチン系高脂血症薬が数多くの患者に 使用されるようになってきてから注目されてきている。HMG-CoA 還元酵素阻 害薬の効果については十分なエビデンスのあるものであり、従来の医薬品 に比較して服用者の数が圧倒的に多いことからその副作用に関しても十分 な注意が必要である。 筋肉は代謝が活発な組織であり、多くの医薬品の影響を受けやすい臓器である。筋障害は筋線維壊死として現れることが多い。筋線維形質膜は興 奮膜であり、膜電位の維持にはエネルギーが消費され、さらに筋収縮にお いてもエネルギー消費量が多い。筋線維が障害されると形質膜が破綻し、 細胞外よりカルシウムが流入する。過度のカルシウムの存在は局所的に筋 線維の過収縮を生じさせて、筋線維自体を物理的に破綻させる現象が知られている。破綻した筋線維は、全長ではなく局所的に壊死し、状況が良け 11 れば部分的に再生する。

ごく一部分の筋線維壊死は、日常的にも生じているが、広範囲に筋壊死が生じた場合には大量のミオグロビンなど筋細胞内 成分が血中に流出して全身に影響が及ぶ。ミオグロビンは、尿細管内に沈着し、またミオグロビンから遊離したヘム構造体も直接作用して、腎尿細 管障害を生じさせる。その結果、可逆性あるいは不可逆性の腎不全、DIC や 多臓器不全などの重篤な全身症状も来しうることから横紋筋融解と呼び区 別する。(図参照)


電解質異常 原因薬剤 直接作用 血中へのミオグロビンなどの流出。
腎障害 DIC・多臓器不全 12 (
7)医薬品ごとの特徴 横紋筋壊死を生じる医薬品の種類は多岐にわたる。横紋筋融解症と関連 が否定できない医薬品として添付文書にすでに記載され、症例報告のある ものの中で、比較的頻度の多い医薬品を中心に各医薬品についてその副作 用の概略を述べていく。

① HMG-CoA 還元酵素阻害薬 現在、最も副作用報告の多い医薬品である。服用開始後数ヶ月を経過し て徐々に発症することが多い。筋痛が先行することが多く、また末梢神経 障害の合併もしばしば認められることが知られている。 発症機序として詳細は明らかではないが、HMG-CoA 還元酵素阻害薬の作 用として

①形質膜内のコレステロール成分の減少による直接作用による、

②HMG-CoA からメバロン酸を経てゲラニルゲラニオール誘導体の減少を生 じ、タンパク質の prenylation(脂肪酸を介したタンパク修飾の一種)の 障害をきたす。このタンパク修飾は細胞内シグナル伝達・細胞周期・ミエ リン化・細胞骨格蛋白動態など基本的な細胞機能に関係している、

③ゲラ ニルゲラニオール誘導体の減少から生じるコエンザイム Q10の減少により エネルギー代謝の障害が生じる、などの説があるが定説には至っていない。 HMG-CoA 還元酵素阻害薬には多くの種類があり、アトルバスタチンカル シウム、プラバスタチンナトリウム、シンバスタチン、フルバスタチンナ トリウム、ピタバスタチンカルシウム、ロスバスタチンカルシウムがある。 横紋筋融解などの筋毒性は、すべてのスタチンで生じる。米国における調 査ではスタチン服用者において筋肉痛は、2~7%で生じ、CK 上昇や筋力低 下は 0.1%~1.0%で認められる。重篤な筋障害は 0.08%程度で生じ、100 万人のスタチン服用者がいた場合には、0.15 名の横紋筋融解による死亡が 出ていることになるという。 他の医薬品との併用、たとえばフィブラート系高脂血症薬、ニコチン酸 製剤、エリスロマイシン、シクロスポリンなどの併用で頻度は上昇すると 言われている。CYP3A4 で代謝されるアトルバスタチンやシンバスタチンで は、CYP3A4 を阻害するマクロライド系抗生物質との併用は注意を要する。

フィブラート系高脂血症薬やシクロスポリンとの併用も薬物動態を変化 させて血中濃度を上昇させ、横紋筋融解の危険を増加させるので特に注意 が必要である。 本剤の筋痛は用量依存性の要素が認められる場合もあり、減量あるいは 中止が必要か慎重に判断する必要がある。筋毒性の程度にはかなりの個人 13 差があり、筋痛、筋けいれん、筋力低下の組み合わせのほか、横紋筋融解 症にいたるもの、CK 上昇のみで症状のないものなど程度は様々である。ま た CK 上昇がなくとも筋生検上、異常筋組織が証明される場合や筋萎縮、 筋力低下を生じる場合があり注意が必要である。 また、四肢末梢の違和感をともなう場合、または CK 上昇がない筋力低 下の中には、HMG-CoA 還元酵素阻害薬による末梢神経障害によるものがあ ることには、十分な注意が必要である。 さらに、本剤は横紋筋融解以外の筋疾患が発症するきっかけになる場合 が知られており、多発筋炎、皮膚筋炎、封入体筋炎、MELAS などのミトコ ンドリアミオパチー、McArdle 病、CPT 欠損症、悪性高熱などがあげられ ている。本剤を中止しても症状が軽快しない場合には、もう一度診断につ いて検討する必要がある。 治療に関しては、軽症といえども筋症状が出た段階で、HMG-CoA 還元酵 素阻害薬を中止あるいは減量することがまず必要である。その後の用量に ついては、症例ごとに適応を考えて判断する必要がある。横紋筋融解症が 疑われた場合には、できるだけ早く中止する。

腎機能障害がある場合には、 初期においては輸液により腎保護を図ることなど、一般の横紋筋融解症の 治療に準ずる。骨格筋症状の軽減・予防にコエンザイム Q10 の補充が有効 であったとする報告もあるが、まだ一般的ではない。血中のユビキノンは 低値であることが多いので今後の検討が必要なものと考える。

② フィブラート系高脂血症薬 高脂血症薬として用いられ、HMG-CoA 還元酵素阻害薬ほどではないとして も、横紋筋壊死の原因医薬品として重要なものである。使用開始より数ヶ 月から2年程度までの期間に発症することが多い。HMG-CoA 還元酵素阻害薬 との併用は発症頻度を上げる。全身の筋脱力低下、筋痛、筋けいれん、と きにミオグロビン尿症を生じる。服薬中止後数日あるいは数ヶ月で回復す る。非可逆的な腎障害を生じうることは他の原因と同様である。発症機序 の詳細は明らかではないが、筋形質膜の不安定化を機序として考える説が ある。

③ ニューキノロン系を主体とする抗生物質 抗生物質は、投与初期数日以内に急性に発症することから特に注意を要 する医薬品である。ニューキノロン系抗生物質は、横紋筋融解をきたした とする症例報告があり、直接的な筋毒性が示唆されている。 14 感冒様症状がある場合などウイルス感染に伴う横紋筋融解も知られてお り、注意が必要である。(「4.判別が必要な疾患と判別方法」の項参照) 他の抗生物質において、添付文書中に横紋筋融解症が記載されているも のは後述のリスト(「8.主な原因医薬品一覧」)を参照して頂きたい。マ クロライド系抗生物質のクラリスロマイシンではスタチン系高脂血症薬や テオフィリンなどの医薬品との併用例での症例報告がある。

④ 抗精神病薬、抗パーキンソン病薬 抗精神病薬による最も重篤な副作用は、悪性症候群に伴うものが知られ ている。その詳細は、「悪性症候群」のマニュアルを参照して頂きたい※。 ここでは、その概略を簡潔に述べる。 ※ 2008 年 4 月修正箇所 悪性症候群においては、しばしば横紋筋融解症を伴うが、軽症では CK 上 昇、発熱などを示すのみで治療により軽快する。そのまま放置した場合、 筋強剛・振戦、頻脈・発汗・血圧変動などの自律神経症状、意識障害、呼 吸促迫あるいは低酸素血症、白血球増多、代謝性アシドーシス、ミオグロ ビン尿などの全身症状を伴い、悪性症候群としてまとめられている。 ハロペリドールなどのドーパミン D2 受容体遮断作用の強い抗精神病薬に おいて頻度が高い。近年導入された非定型抗精神病薬は、ドーパミン D2 受 容体遮断作用が弱く、セロトニン(5-HT)2A 受容体遮断作用が比較的強い 特徴があり、従来からの抗精神病薬に比較して、錐体外路症状が少ない利 点がある。しかしこれらの医薬品においても、悪性症候群は報告されてい る。制吐薬であるメトクロプラミドやドンペリドンにおいても、悪性症候 群の報告例がある。悪性症候群は抗精神病薬の投与のみならずより広範囲 な抗精神病薬や抗パーキンソン病薬投与中に生じることがある。特に抗パ ーキンソン病薬は、中枢神経系に対する作用について抗精神病薬と逆の作 用を持っていることから、急激な減量・中止で悪性症候群を生じやすいこ とに注意が必要である。骨格筋リアノジン受容体蛋白に作用してカルシウ ム放出を抑制するダントロレンナトリウムが悪性症候群においても有効で ある。 関連するものとして、抗うつ薬の服用などで生じるセロトニン症候群は 不穏などの精神症状、腱反射亢進などの錐体路徴候、振戦、発汗過多、呼 吸促迫などを生じ、症状に類似点があることから、悪性症候群との関連も 議論されている。共通点も多い症候群であるが、相違点を挙げてみると、 悪性症候群では発熱が通常 38℃以上であり、筋強剛などの錐体外路症状が 著明である。一方、セロトニン症候群では発熱が軽度であり、消化器症状 15 やミオクローヌスと言われる不随意運動が著明である。これらの点が症候 から見た相違点と言われている。 悪性症候群は、抗精神病薬の開始当初あるいは増量時に多く生じるが、 このような医薬品の変更のない状態でも生じうる。とくに感染、脱水症な ど全身状態の悪化している場合には、悪性症候群を生じやすい。悪性症候 群の初期は CK 上昇のみであり、この時点で適切な輸液、ダントロレンナト リウムの投与、ブロモクリプチンなどの投与を考慮して観察する。悪性症 候群を生じるときは、もともとの病状も増悪期である場合が多く、全身状 態の悪化も加味して発症すると考えられている。発症中は精神運動興奮も 合併し、治療に困難が多いことが知られている。米国では電気けいれん療 法(electroconvulsive therapy: ECT)の適応症に悪性症候群が挙げられ ているのはこのようなことが背景としてある。 悪性症候群からの回復後、再度抗精神病薬投与が必要な場合も多く、こ のような場合には約2週間の休薬期間が推奨されている。

⑤ 麻酔薬・筋弛緩剤 全身麻酔中に横紋筋融解症を生じるものは、高熱・自律神経症状を伴い、 悪性高熱として知られている。悪性高熱は、もともと何らかの筋疾患を持 っている者、発症に至らずとも遺伝性筋疾患の保因者と考えられる者、高 CK 血症などの素因がある場合に生じやすい。熱中症や運動時筋壊死の症状 が認められた者も、リスクの高い者である。 特発性高 CK 血症患者の約半数には、リアノジン受容体蛋白にアミノ酸 変異を持つことが知られている。横紋筋が収縮するときに筋線維表面の形 質膜の電位変化が、筋線維細胞内カルシウム濃度の上昇をきたし、筋原線 維が収縮する過程の中で、リアノジン受容体蛋白は細胞内カルシウム濃度 を上昇させるのに重要な役割を持つ蛋白である。多くの遺伝子変異が報告 されているが、その他の遺伝子異常でも生じることが知られている。家系 に悪性高熱をきたした者のいる場合には特に注意を要する。 本症は発症に気づかず無治療の場合には致死率 70%に及ぶ病態である。 古典的には呼気における二酸化炭素濃度の上昇、骨格筋の筋強剛、頻脈、 高体温、アシドーシスなどが生じるとされている。

原因となる全身麻酔薬としては
①サクシニルコリン(スキサメトニウ ム)などの脱分極型筋弛緩剤、
②揮発性の吸入麻酔薬、例えばハロタン、 イソフルラン、エンフルラン、セボフルランなどのハロゲン炭化水素やハ ロゲン化エーテル系麻酔薬が知られている。一方、比較的安全とされていやミオクローヌスと言われる不随意運動が著明である。これらの点が症候 から見た相違点と言われている。 悪性症候群は、抗精神病薬の開始当初あるいは増量時に多く生じるが、 このような医薬品の変更のない状態でも生じうる。とくに感染、脱水症な ど全身状態の悪化している場合には、悪性症候群を生じやすい。悪性症候 群の初期は CK 上昇のみであり、この時点で適切な輸液、ダントロレンナト リウムの投与、ブロモクリプチンなどの投与を考慮して観察する。悪性症 候群を生じるときは、もともとの病状も増悪期である場合が多く、全身状 態の悪化も加味して発症すると考えられている。発症中は精神運動興奮も 合併し、治療に困難が多いことが知られている。米国では電気けいれん療 法(electroconvulsive therapy: ECT)の適応症に悪性症候群が挙げられ ているのはこのようなことが背景としてある。 悪性症候群からの回復後、再度抗精神病薬投与が必要な場合も多く、こ のような場合には約2週間の休薬期間が推奨されている。

⑤ 麻酔薬・筋弛緩剤 全身麻酔中に横紋筋融解症を生じるものは、高熱・自律神経症状を伴い、 悪性高熱として知られている。悪性高熱は、もともと何らかの筋疾患を持 っている者、発症に至らずとも遺伝性筋疾患の保因者と考えられる者、高 CK 血症などの素因がある場合に生じやすい。熱中症や運動時筋壊死の症状 が認められた者も、リスクの高い者である。 特発性高 CK 血症患者の約半数には、リアノジン受容体蛋白にアミノ酸 変異を持つことが知られている。横紋筋が収縮するときに筋線維表面の形 質膜の電位変化が、筋線維細胞内カルシウム濃度の上昇をきたし、筋原線 維が収縮する過程の中で、リアノジン受容体蛋白は細胞内カルシウム濃度 を上昇させるのに重要な役割を持つ蛋白である。多くの遺伝子変異が報告 されているが、その他の遺伝子異常でも生じることが知られている。家系 に悪性高熱をきたした者のいる場合には特に注意を要する。 本症は発症に気づかず無治療の場合には致死率 70%に及ぶ病態である。 古典的には呼気における二酸化炭素濃度の上昇、骨格筋の筋強剛、頻脈、 高体温、アシドーシスなどが生じるとされている。

原因となる全身麻酔薬としては①サクシニルコリン(スキサメトニウ ム)などの脱分極型筋弛緩剤、②揮発性の吸入麻酔薬、例えばハロタン、 イソフルラン、エンフルラン、セボフルランなどのハロゲン炭化水素やハ ロゲン化エーテル系麻酔薬が知られている。一方、比較的安全とされてい 16 るのは、非脱分極型筋弛緩剤、一酸化窒素、静脈麻酔薬、局所麻酔薬、オ ピオイド系鎮痛薬、ベンゾジアゼピン系麻酔薬、バルビツール酸系麻酔薬 などである。後者の中には症例報告レベルではあるが発症例も報告されて おり、絶対的なものではないことに注意が必要である。 発症時には速やかに麻酔薬を変更し、人工呼吸は過呼吸とし、アシドー シスを補正し、リアノジン受容体蛋白による細胞内カルシウム放出を阻害 するダントロレンナトリウムを投与する。これらの処置により致死率は 5%以下まで低下してきている。 いずれにせよ予防的対応が必要であり、全身麻酔前の CK 測定によるス クリーニングが通常行われてきている。本症の発症を確実に避ける方法が ないことから、少しでも疑わしい場合は代替的な方法で麻酔を行うことを 検討する必要がある。 悪性高熱とは別の機序による筋障害として、非脱分極型筋弛緩剤を長期 使用した場合に生じる重篤な筋障害には注意を要する。特に重症気管支喘 息発作の場合に大量の副腎皮質ホルモンと併用した場合に頻回に生じう ることが、よく知られている。重症型では横紋筋融解に至った症例も知ら れている。人工呼吸器による管理が必要な場合に、安易に非脱分極性筋弛 緩剤を長期使用することは承認時には想定されておらず、さまざまな危険 性が生じうることを確認すべきである。 また、麻酔薬による骨格筋障害として静脈麻酔薬であるプロポフォール をあげなければならない。呼吸器装着時の鎮静や痙攣重積状態での使用な ど、次第に汎用されてきている医薬品である。特に小児において本剤使用 時に横紋筋融解症、代謝性アシドーシス、低酸素血症、心停止などの症状 をきたし、プロポフォール症候群と呼ばれている。筋強剛や発熱を欠き、 悪性症候群とは病状が異なる。血清 CK 値は著明に上昇し、二次性の高カ リウム血症も生じうる。骨格筋のみならず心筋の壊死も報告されている。 本症の発症頻度はそれ程高くはないが、高濃度・長期に本剤を使用せざる をえない時には血清 CK 値を頻回に測定し、血清 CK 上昇時には本剤の使用 を中止し保存的に治療する必要がある。

⑥ 低カリウム血症などの電解質異常をきたす医薬品 低カリウム血症の症状として、不整脈とともに重視しなくてはいけない ものが横紋筋融解症である。低カリウム血症では、形質膜の興奮性が変化 することより周期性四肢麻痺を生じることが知られているが、低カリウム 17 血症が遷延化すると形質膜の破綻を生じて、筋線維の壊死が広範囲に生じ、 横紋筋融解症をきたす。 低カリウム血症をきたす医薬品としては、利尿剤、緩下剤、グリチルリ チン製剤(甘草を含む漢方薬)、抗真菌剤であるアムホテリシン B、酢酸フ ルドロコルチゾンなどの副腎皮質ホルモンなどが知られている。医薬品で はないが、アルコール多飲のみで横紋筋融解が生じる機序も低カリウム血 症を介している。 一方低ナトリウム血症は、多くの場合骨格筋症状をともなわないが、ま れに横紋筋融解をきたした症例が報告されている。チアジド系利尿剤を漫 然と使用していた高齢者で脱水、低浸透圧、アルカローシスを生じて横紋 筋融解に至っている。 治療に関しては、服用の中止と輸液、電解質の補正が重要である。二次 的な腎障害の予防も重要である。 ⑦ その他 多くの医薬品が、横紋筋融解の発症時に内服されているが、詳細が不明 なものが多い。頻度が高く添付文書にも記載されているものとしては、降 圧剤のうちアンジオテンシン II 受容体拮抗剤、H2 受容体拮抗剤、プロト ンポンプ阻害剤、各種の消炎鎮痛剤がある。それらの多くは、確かに服用 中に横紋筋融解症を生じており、症例報告にもあげられている。しかし、 頻度が少ないことと併用薬が多い場合もあり、どこまでが単独に筋障害を きたしたかについては十分な再評価が必要である。 一方、症例報告などで現在まで十分に記載され、その筋毒性がかなり疑 わしい医薬品をあげてみると意外と少ない。①~⑥にあげられていない医 薬品で添付文書に記載があるものをあげると、シクロスポリン、タクロリ ムス、コルヒチン(痛風発作予防薬)、ジドブジン(抗 HIV 薬・ヌクレオ シド系逆転写酵素阻害薬:ミトコンドリアミオパチーを生じる)、オメプ ラゾール(プロトンポンプ阻害剤:筋痛・筋力低下であり横紋筋融解との 関連は不明)などがある。 今後の検索で、併用薬の中から関連が確認されるものが発見される可能 性がある一方、筋障害の機序や頻度が明らかでない医薬品も多く残ってい くものと考える。相互作用も、各々の医薬品の代謝過程に関与している場 合や単一では生じない程度の弱い筋毒性であっても多剤が同時に投与さ れた場合に生じることがあり、一義的にこれらの医薬品に対する対応を決 めることは困難である。今後の検討が必要と考える。

tp1122-1c09.pdf (mhlw.go.jp)

横紋筋融解症とは、筋肉(特に骨格筋と呼ばれる、自分の意志で動かすことができる筋肉)が壊され壊死えしを起こすことから発症する病気です。筋肉が壊れるきっかけとしては数多くの原因が知られており、代表的なものにけがや熱中症、薬などが挙げられます。
けがや長時間のてんかん発作などは筋肉に強い負荷をかけ、結果として筋肉の細胞が物理的に壊れてしまうことになります。たとえば、けがをすると筋肉の一部の圧力が高くなることによってその部分の筋肉の細胞が死んでしまうコンパートメント症候群になってしまうことがあります。そして、横紋筋融解症になってしまうことがあります。また、熱中症では体の中心部の温度が40℃を超えると筋細胞が壊れてしまい、横紋筋融解症を発症することがあります。
薬では、スタチンやフィブラート系といったコレステロールや脂肪が高いときに処方されるものが横紋筋融解症を引き起こすことが知られています。
そのほか、抗菌薬(ニューキノロン系)、抗精神病薬・抗パーキンソン病薬(ハロペリドールなど)、抗てんかん薬(バルプロ酸など)、麻酔薬(スキサメトニウムなどの筋弛緩剤や揮発性の吸入薬)など数多くの薬が横紋筋融解症の原因となります。

横紋筋融解症について | メディカルノート (medicalnote.jp)


#アンネの法則の山下安音です。私のライフワークは、平和学研究とピースメディア。VISGOのプロデューサーに就任により、完全成果報酬型の教育コンテンツと電子出版に、専念することになりました。udmyとVISGOへ動画教育コンテンで、世界を変える。SDGs3,4の実現に向けて一歩一歩