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マネー・MMT

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MMTのルーツは新左翼思想
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2020年11月の記事一覧

財政均衡論者は間違っていた

日本の財政政策にプライマリーバランスという考え方を持ち込んだ張本人が、財政均衡論者が間違っていたと認めた。 竹中 じつはプライマリーバランスという考え方は、2001年に「骨太の方針」で私が持ち込むまで、政府内にはありませんでした。だから当初、私が議論を始めても、誰も意味を理解できませんでした。 銀行業が発達する以前の国家が通貨発行していた時代のように、政府が実物資産に裏付けられていないfiat moneyを発行する場合には、悪性インフレになる手前が限度になる。 ゲーテの

割引債で判断する国債発行の限度

銀行業が発達する以前の、政府が通貨を発行している経済を考える。 通貨が実物資産の裏付けのないfiat moneyだといくらでも発行できてしまうので、過剰発行→インフレ昂進によって「価値の保存」の機能が損なわれ、民間の経済主体が通貨の受け取りを拒むようになる恐れがある。 民間部門が将来の通貨価値をどのように予測しているかは、政府が割引債を発行することで知ることができる(政府は通貨発行できるので債務不履行のリスクは無い)。割引債は現在のキャッシュフローと償還時のキャッシュフロ

永久債で考える国債発行の限度

国債発行が限界に近づいているとの懸念が一部で高まっているが、そうではないことは永久債(変動金利)で借りるとすれば理解しやすくなる。 財政危機が発生した場合は、外国為替市場で円の急落を招く懸念があると指摘。 中央銀行による国債の買い支えなど、主要先進国の常識から外れる政策を採用すれば「円の信認が問題になりかねない」と説明。 全ては為替市場次第と言って良いでしょう。どんなに無茶苦茶な財政支出をしてもたいして円安が進行しなければ、いつまでも財政支出をし続けることができます。し

MMTは軍票理論

11月13日の日本経済新聞のコラム「大機小機」に、財政学者らしき人物(唯識)による「コロナ対策とMMT理論」が掲載されていた。タイトルや一部に?な点はあるものの、概ね同意できる内容である。 当noteではMMTが記述する財政・通貨制度システムにおける貨幣が軍票のようなものと論じてきたが、唯識も同じ認識である。 なんともわかりにくい答えだが、要は中央銀行が関与しない通貨発行という意味で、戦争中の軍票と同じと考えれば分かりやすい。 MMTの信者は同意しないかもしれないが、教

『奇跡の経済教室』が拡散するデマを検証する

またまた反緊縮派に流布する誤りを検証するマニアックなネタの繰り返しであることをお断りする。興味が無い人はスルーしてもらいたい。 昨日の記事(⇩)より先に書いていたものなので、重複する内容が多いことも承知されたい。 反緊縮派がオウムのように唱える「民間貯蓄は政府支出の原資ではない」「その逆に、政府支出が民間貯蓄を増やす」というデマの発生源の一つが中野剛志の『奇跡の経済教室』のようなので、【戦略編】の48~51ページの「⑵政府支出の実際」の記述を検証する。 ①政府は赤字財政

銀行が現金を貸す場合/銀行が国債を買う場合

まず、銀行が現金を貸す場合について考える。 ワイス たくさんありますよ。たとえば、2005年8月、ハリケーン・カトリーナがミシシッピ州を襲ったとき、ハンコック銀行(ミシシッピ州を代表する金融機関の1つ)が示したリーダーシップはとてもよい事例でしょう。 ハンコック銀行は、ハリケーンの被害を受けた地元住民のために、すぐに仮設の店舗を開き、手書きの借用書と引き換えに現金を貸し出しました。生活を立て直すにも、現金は手元にないし、銀行カードがどこにあるかもわからない。そういう人々のた

MMTの正と誤と論点先取

「根強いMMT支持者がいる」理由の一つは、この元日銀マンのように批判が的外れなので、それが信者の「MMT批判は正しくない→MMTは正しい」という信念を強化してしまうことである。 それにもかかわらず、なぜ根強いMMT支持者がいるのか。元日銀マンで現在はソニーフィナンシャルホールディングスでチーフエコノミストを務める菅野雅明さんに聞くと、「MMTは間違い。でも、そう説得し切れないのが悩ましいんです」とぼやいた。どういうことか。 よくある財政破綻論(⇩)だが、金融政策の独立性が

日本版MMT学者の誤り

日本でMMTに詳しい学者ということになっているらしい井上が このようなツイートをしているが、これは正しくない。 現代では財政資金の受け払いはペーパーレス化されて中央銀行の帳簿上で処理されるが、ここではイメージしやすくするために、政府は民間と直接に現金で受け払いしているとする。 日本も採用している世界標準の制度では、中央銀行が政府に直に信用供与する(現金を供給する)ことは禁じられているので、政府の現金調達は「中央銀行→銀行→民間非銀行部門→政府」か「中央銀行→銀行→政府」

「国債発行→政府支出は通貨発行」という反緊縮派の誤解

しばらく前にも書いたマニアックな内容なので、興味がない人はスルーしてもらいたい。 通貨システムを分かり易くデフォルメタイトルのような誤解が生まれる一因には、現代では国庫金の支払と受取がペーパーレス化されて中央銀行の帳簿上で処理されているため、具体的にイメージしにくいことがある。 今や中央銀行が国庫に代わって通貨の支払いと受取りを行っているので、分かりにくくなってしまった。 しかし、非常に複雑にはなったものの、MMTが示してきたように本質は何も変わっていない。 そこで、本