割引債で判断する国債発行の限度

銀行業が発達する以前の、政府が通貨を発行している経済を考える。

通貨が実物資産の裏付けのないfiat moneyだといくらでも発行できてしまうので、過剰発行→インフレ昂進によって「価値の保存」の機能が損なわれ、民間の経済主体が通貨の受け取りを拒むようになる恐れがある。

民間部門が将来の通貨価値をどのように予測しているかは、政府が割引債を発行することで知ることができる(政府は通貨発行できるので債務不履行のリスクは無い)。割引債は現在のキャッシュフローと償還時のキャッシュフローを交換するものなので、現在価値と将来価値の比率(ディスカウントファクター)から割引率(スポットレート)を算出できる。

国際会計基準では3年間で累積100%超のインフレをハイパーインフレーションと定義しているが、これは3年後に100で償還される割引債の価格が50以下ということなので、割引率は26%以上になる。同じく、10年後に償還の価格が82なら割引率は2%になる。

割引率が低い⇒市場は通貨価値の安定を予想⇒通貨の増発余地あり
割引率が高い⇒市場は通貨価値の低下を予想⇒通貨の増発余地なし

現実の債券市場では、割引債よりも利付債が多く取引されているが、金利が通貨の増加余地(国債発行→銀行が購入して政府に信用供与→マネーストック増加)についての市場の判断を示していることは同じである。

現在の国債金利は日本銀行の「異次元緩和」によって民間部門の将来見通しを反映しなくなっているが、それ以前から低下基調にあったことと、実際のインフレ率も低迷していることから、財政を引き締めなければならない状況ではないと判断できる。

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"Skin in the game"していない経済学者や格付け会社よりも、真剣勝負している市場参加者の声(総意)の方が信用できる。

13:58~のパートの17:20~。

今回のコロナが我々に教えてくれたのは、国債残高が多いとか少ない、この多寡によって通貨の信認が疑われるようなことはない。事実、自国建ての国債でデフォルトすることはないわけですからね。

この発言(⇧)はその通りだが、予算編成は官邸主導になっているのだから、万死に値するのは財務省ではなく安倍前首相と言わなければならない。

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