マガジンのカバー画像

マネー・MMT

235
MMTのルーツは新左翼思想
運営しているクリエイター

2020年10月の記事一覧

変な反緊縮批判

反緊縮を批判する記事の内容が変なので何点か指摘する。 短期金利は大きく変動するので日銀当座預金の金利(今はマイナス0.1%)も変動し、要求されたらすぐ払い戻さないといけない。 短期金利を決めるのは日本銀行で、マイナス金利が適用されているのも当座預金のごく一部に過ぎない。 日本の政府債務は約1100兆円だから、長期金利が1%上がると金利負担が毎年11兆円増えます。 財務省によると、2020年3月末の普通国債の残高は約886兆円、平均残存期間は9年2か月、利率加重平均は0

信用貨幣・通貨発行権・中央銀行の役割

"Everyone can create money; the problem is to get it accepted" - Hyman Minsky ミンスキーの言葉の意味は、貨幣が流通するためには発行体の信用が必要ということである。 経済的な意味での信用とは「借りを返す確実性」だが、これを裏返すと、信用を与える側、つまり貨幣の発行体には「貸しを確実に回収する能力」が必要ということになる。 貸しを確実に回収する方策には、 ①信用のある相手を選んで貸す ②強制的に

MMT信者の「超大きな政府」幻想

昨日のステファニー・ケルトンについての記事と大筋では同内容だが、書いたのはこちらが先である。先の記事はショート・バージョン、こちらはロング・バージョンになる。 MMTは現実ではなく虚構の制度の理論「私の肩書はSF作家であり、経済学に関しては門外漢だが」と書いている通りで、MMTの誘導にまんまと引っ掛かっている。 冤罪を防ぐためには検察側の言い分だけを聞いてはいけないように、MMTerの言い分だけを聞いて経済の仕組みが分かった気になるのは危険である。現行制度のメカニズムを正

MMTのケルトンのプロパガンダを検証する

MMTのイデオローグのステファニー・ケルトンのプロパガンダを批判的に検証する。 これがMMTの大嘘の始まりである。MMTは現行制度と架空の制度を混同させる論法を巧みに用いるので、知識が無い人は簡単に誘導に引っかかってしまう。なお、MMTでは中央銀行は政府の一部として扱われるので、政府が中央銀行から直接に信用供与されることは「借入」ではなく、政府による通貨発行とみなされる。 日本政府の銀行、つまり日銀が貨幣を創造するというのがその答えだ。 日本政府は主権通貨(円)の「発行

財政政策の転換と経済学者

財政健全化の重要性を唱え続けていた"prominent economists"とIMFが方向転換したことをFTが報じているが、この件についてはMMTerの批判が大筋では当たっている。 国家には通貨発行権があるので、財政支出に必要な通貨は原理的にはファウストとメフィストフェレスがやったように「刷る」だけでいくらでも発行できる。インフレが激化して通貨の「価値の保存」の機能が保てなくなるまでは発行可能なので、近年のような低インフレの状況では増発→財政支出拡大が望ましい政策になる。

税金を納めてもお金は消えない

反緊縮派の代表的なデマがこれ。 言うまでもないことだが、誰かが納税して国が受け取ったお金は「国の金庫」の国庫にある。日本では、国庫金は日本銀行にある政府預金口座に預けられる。10月10日現在の残高は約58兆円あるので煙のように消えていない。 2015年末から残高が急増した理由は以下の通り(財務省から引用)。 流通市場において国庫短期証券が恒常的にマイナス利回りで取引されていたため、国債整理基金において予定していた運用を行うことができなかったことによる。 言うまでもない

銀行のヴァーチャルなmoney creation

先日の記事の補足説明。要点は以下の通り。 新発国債を⑴銀行以外の民間経済主体が引き受ける場合は民間部門の銀行預金が取引銀行の中銀預金と両建てで減少するが、⑵銀行が引き受ける場合は減少しない。このことは、⑵では銀行の対政府与信によって取引には表れないヴァーチャルな預金のcreationが生じていることを意味する(故に±0)。財政支出後の民間部門の預金量が⑵と⑴で異なるのは、国債消化時の預金のcreationの有無のため。 図の✚の左右は資産と負債、上下は増加と減少を示す。

自国通貨建てでも「国が支払えなくなる」の意味

この番組で、森永卓郎の「国が自国通貨で支払不能になることはない」との趣旨の発言に小林慶一郎が不明瞭な反論をしていたが、本題ではなかったために議論が打ち切られたので、小林に代わって「国が支払えなくなる」ことを説明してみる。 例えば、日本政府が「国民1人当たり月30万円(2020年価格)を定額給付するために全額を国債発行→日本銀行の直接引き受けで賄う」政策を恒久的に続けると宣言して開始したとする。 GDPの約80%に相当する通貨供給の継続は必然的に激しいインフレを引き起こすの

BI財源論争:小林慶一郎×森永卓郎は小林の勝ち

この番組で、森永卓郎の「国債を70兆円発行→全額日本銀行が買い取り→国民に定額給付」を半永久的に続ける案を、小林慶一郎が「かなり同意できない」としたことから、財政破綻するか否かのミニ論争が起こった。 議論が噛み合わなかったのは、両者の破綻の定義が異なるためである。 森永の定義は債務不履行(デフォルト)なので、国債は自国通貨建て→中央銀行に買い取らせる→破綻はあり得ないことになる。 一方、小林の定義は「価格が上がって本来人々が求めていた消費財の価値を政府が保証できなくなる

ステファニー・ケルトンのミスリード

MMTの教祖の一人のステファニー・ケルトンが信用できない人物であることを示すツイートを繰り返している。 インタビュアーの「世界金融危機においてFedが支出したマネーはtax moneyだったのか(税金が財源だったのか)?」との質問にバーナンキが「コンピュータを操作して金融機関の口座の残高を増やした」と答えている。 ケルトンはこれを、政府は財源調達せずに何兆ドルでも支出が可能であるかのように印象操作しているが、現行制度では中央銀行の支出と政府の支出は全く別物である。 バー

国債発行とmoney creation

何度か書いている内容なので、既読で飽きている人はスルーしてもらいたい。要点は以下の通り。 新発国債を⑴銀行以外の民間経済主体が引き受ける場合は民間部門の銀行預金が取引銀行の中銀預金と両建てで減少するが、⑵銀行が引き受ける場合は減少しない。このことは、⑵では銀行の対政府与信によって取引には表れないヴァーチャルな預金のcreationが生じていることを意味する(故に±0)。財政支出後の民間部門の預金量が⑵と⑴で異なるのは、国債消化時の預金のcreationの有無のため。 ネッ