変な反緊縮批判

反緊縮を批判する記事の内容が変なので何点か指摘する。

短期金利は大きく変動するので日銀当座預金の金利(今はマイナス0.1%)も変動し、要求されたらすぐ払い戻さないといけない。

短期金利を決めるのは日本銀行で、マイナス金利が適用されているのも当座預金のごく一部に過ぎない。

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日本の政府債務は約1100兆円だから、長期金利が1%上がると金利負担が毎年11兆円増えます。

財務省によると、2020年3月末の普通国債の残高は約886兆円、平均残存期間は9年2か月、利率加重平均は0.87%となっている。その大部分は固定利付なので、現時点で長期金利が1%上がっても、既発債の利払費には影響しない。

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日銀の保有している国債には25兆円ぐらい評価損が出て、日銀は債務超過になります。

中央銀行は法貨を発行する主体なので、債務超過になっても支払不能になることはない。イングランド銀行のStaff Working Paper No. 604 "Accounting in central banks"で指摘されている通りである。

In theory, central banks can operate with zero or negative capital. For example, the central banks of Chile, the Czech Republic, Israel and Mexico have all pursued their policy objectives despite at times operating with negative equity.
国債を保有している銀行も債務超過になって取り付けが起こり、1998年のような金融危機になる可能性があります。

金融危機(1997年11月~)の際の金融機関の債務超過は、回復が見込めない地価や株価の下落によるものだったが、国債は額面での償還が保証されている無リスク資産なので全く事情が異なる。

金融危機を防ぐには日銀が緊急融資で救済しないといけませんが、日銀が債務超過になっている状態では、一般会計からの支出がないと救済できないでしょう。1998年の経験から考えると、このとき必要な財源は100兆円を超えるでしょう。

債務超過になっても日銀のオペレーションは制限されない。国債は適格担保であり続けるので、一時的に流動性が不足する銀行には日銀が国債と引き換えに資金供給すれば事足りる。

その理論であるMMTには金利がないからです。MMTは短期の不完全雇用の理論なので、金利はつねにゼロと仮定し、その理由は何も語らない。

MMTには金利がないのではなく、

◆金利によるマクロ経済コントロールは有効ではない
◆国債金利は政府・中央銀行が決められる

ことから、ソブリン金利をゼロで固定するとしている。

マクロ経済の調整は主として就業保証プログラム(JGP)で行われる。JGPで働く労働者のプールが景気過熱→インフレを防ぐバッファになる。

3次補正でさらに大型の給付金などを出すと、金利が大幅に上がるおそれがあります。
反緊縮派は完全雇用になったらインフレになると信じていますが、現実には完全雇用を超えて人手不足の日本でもインフレは起こらない。

中央銀行がコントロールしていなければ、長期国債の金利は予想インフレ率を反映するので、インフレが起こらなければ金利は上がらない。金利が大幅に上がるのであればインフレになるはずである。

この記事の筆者が金融・財政の仕組みを理解していないことは伝わってきた。

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