Vol.57 セネガルの鮮やかさに魅了されて。アフリカ布ブランド Bissap de Senegalを取材してみた。
アフリカ大陸の最先端にある国、セネガル。
海に面したこの国は、多くのリゾート地を有していることからヨーロッパからの観光客も多く、首都ダカールでは毎年ファッションウィークが開かれるなど、ファッションに敏感な国でもあります。
セネガルファッションの鮮やかさに魅了され、現地で制作したアフリカ布雑貨や買い付けたアフリカ布などを販売するBissap de Senegalの斎藤直樹さんに、ブランドのことやアフリカ布のことはもちろん、セネガルの魅力について聞いてみました。
セネガルで感動したものを形に
Qアフリカとの出会いについて教えてください。
A新婚旅行がきっかけですね。
妻と僕も1人旅が好きで、新婚旅行では世界一周旅行をしようと決めました。
僕はそれまでも1人旅でいろいろな国に行っていたのですが、アフリカ大陸には足を踏み入れたことがなかったんです。
最終的にアフリカ15カ国をまわりました。
Q15カ国!すごいですね。そこで最も心を惹きつけられたのがセネガルだったのですか?
Aそうですね。約80か国を周ったのですが、日本に帰国してから「海外で感動したものを形にしたい」気持ちがすごく出てきたんです。
そのときに、最初はほんの興味本位だったんですけど、1番にセネガルを思い出しました。
Qどうセネガルの光景が心に残っていたのでしょうか?
Aセネガルは道路などのインフラ設備があまり整っていなかったんですね。でも、そんな中で現地の人が色とりどりのアフリカ布を全身に纏っていて、それによって街全体がすごくキラキラして見えたことがすごく心に残っていたんです。
Qファッションという面で、セネガルは他のアフリカの国と違ったということでしょうか?
A西アフリカ・東アフリカと旅をしたのですが、自分にとってはセネガルのファッションが1番鮮やかで心に残るものがありました。
セネガルではテーラーさんに頼んでアフリカ布の服をオーダーメイドする文化が廃れておらず、みんな自分で選んだ布で思い思いのファッションを楽しんでいると感じました。
Q「海外で感動したものを形にしたい」と思ってから、実際にブランドを立ち上げるまでどんなステップを踏まれたのでしょうか?
Aとりあえず1回セネガルに行こうと思い、帰国してから半年ほどでお金を貯めて実際にセネガルに渡航しました。
渡航してからは、アフリカ布で縫製してくれるテーラーさんを見つけるため、テーラーさんが集まるビルに足を運び、片っ端から声をかけていきましたね。
お互いの文化とペースを尊重する。仕事で大切にする想い
Qテーラーさん探しで1番大変だったことは何ですか?
Aセネガルは公用語がフランス語なので、英語を使ってコミュニケーションが取れる人を探すのが難しかったのですが、何よりも大変だったのは同じ商品を量産してくれる人を見つけることですね。
セネガルの仕立て屋さんではオーダーメイドが一般的で、その人に合わせて洋服を作り、試着とお直しを重ねて完成させることが多いです。
そのため、既定のサイズのものを販売用に複数作るということに慣れていないようでした。
Q外国ということで、仕事のパートナー探しはより一層大変ですよね。そんな中でどうやってテーラーさんを見つけたのでしょうか?
A5数日間テーラーさんを探して回っていたら、本当に奇跡的に「この人に仕事を頼みたい!」と強く思う人に出会えたんです。
そのテーラーさんは英語でコミュニケーションが取れる方でした。
Q現在売られている商品は全てそのテーラーさんが作られたものということですか?
Aそうです。スカートなどのアパレルアイテムや市場で買い付けたものなど、一部例外もありますが、ほとんどのアイテムを作ってもらっています。日本にいる時はワッツアップでやり取りをしています。
Qアフリカ布は全てセネガルの工場で作られた布を使用しているのですか?
Aセネガル現地の布屋で買い付けることにこだわってはいますが、中国やガーナ・オランダなどさまざまな国の工場で作られたアフリカ布が出回っています。
Qそんな中で布を仕入れる時に気を付けていることはありますか?
A万人受けしそうな柄だけでなく、アフリカらしい、どちらかというとコアな人に刺さりそうな柄のアフリカ布も仕入れるようにしています。
アフリカ布を初めて買うお客様は、最初は身に着けやすい柄を選ぶことが多いのですが、「なんだこれ?!」「うわこの柄面白い!」と思うような奇抜なモチーフ柄などを段々求めるようになる人が多いためです。
Qモチーフ柄は素敵ですよね。斎藤さんはアフリカ布の魅力はどこに一番あると思いますか?
Aやっぱり、一つ身に付けているだけで気持ちが明るくなるところですかね。あとは、布自体にも意味や歴史が詰まっているところも素敵だなと思います。
Qちなみに、斎藤さん一押しのアフリカ布は何ですか?
A「婚礼の花」という柄がおすすめです。
身に着ける人や合わせるアイテムを選ばず、当ブランドで一番人気の柄でもありますね。
Qセネガルの方と一緒に仕事をする上で大切にしていることを教えてください。
A実際にブランドを運営して思ったのは、その人の価値観や文化を大事にしないといけないということです。
というのも、テーラーさんや、やり取りをしているアフリカ布屋さんも全員イスラム教徒の方なんですよ。
イスラム教では、断食の月や、1日5回の礼拝で、仕事が中断したり遅延することもあり、日本と同じペースでは物事が進まないこともあります。ただ、そこは理解して一緒に仕事を進めています。
セネガルのみんなも、日本人は時間にも品質にも細かいことを理解して、通常とは異なるモノづくりや販売をしてくれているのだと思います。
このようにお互いを理解し、寄り添っていければいいなと思っています。
Qブランド名の「Bissap de Senegal」ですが、ビサップが好きでこの名前にしたのでしょうか?
Aそうですね。それもあります。
ただ、セネガルでのビサップって日本でいう麦茶のような国民的ドリンクなんですよ。
ブランドもそんな愛される存在になってほしいという願いを込めてこの名前にしました。
※ビサップ:西アフリカで親しまれるハイビスカスジュース。甘酸っぱくてとても美味しい。
セネガルの魅力は人にあり
Q最後にセネガル全体についてお伺いします。
実際に深く関わってみて、セネガルへのイメージが変わったと思うのですが、斎藤さんにとってセネガルはどんな国でしょうか?
A優しい人が多い国だと思います。
僕が道に迷っているような素振りを見せなくても、「道に迷っているの?何か手伝おうか?」と声をかけてくれる人が多かったです。
Qセネガルでお気に入りの場所はありますか?
A2つあって、1つ目は、ンゴール島というところです。ダカールから渡し舟で5分ほどで着く小さい島なのですが、ダカール市内は人と建物でごみごみしているんですよ。
一方、ンゴール島は青い海と、色とりどりのタイルアートやお花が美しく、静かですごくのんびりできる島なので好きですね。
2つ目は「貝殻島」と呼ばれる、ファディユという島です。
セネガルは約95%の国民がイスラム教徒なのですが、ファディユでは島民の9割がキリスト教徒の珍しい島なんですよ。
島の見所が墓地なのですが、キリスト教徒の墓地とイスラム教徒の墓地が一緒にあるんです。
2つの宗教が重なり合うような場所は揉めやすいと思うんですけど、ファディユではキリスト教とイスラム教が上手く共存していて面白い場所ですよね。
これもセネガルの寛容さからなのかもしれません。
以上、Bissap de Senegalのオーナー、斎藤直樹さんへのインタビューでした。
旅先で心を動かされることは誰にでもありますよね。
そんな経験を実際に形にし、日本で多くの人に伝える斎藤さんの貴重なお話が聞けました。
2019年活動開始。「日常にもっと彩りを、毎日をよりハッピーに」をコンセプトに、セネガルのテーラーによって手作りされたアフリカ布製品を中心にオンラインショップやイベントにて販売。