コロナ禍のデジタル化によって自動車セールスに、真の競合が現れる。

現在、各自動車会社のデジタルを介したコミュニケーションが活性化してきている。
各社とも、Push系の広告・プロモーション活動がやりづらい中で、ソーシャルメディアを介したプロモーションに注力しているようだ。現時点で販売店への来店や購買が遠のいている状況において、将来(e.g. 緊急事態宣言終了後)の販売を考慮した、文字通り、エンゲージメント施策を強化していることがわかる。

私としては、デジタルトランスフォーメーション(DX)の本丸である、オンライン商談やオンライン販売が進んできていることが最大の関心事項である。今までデジタル販売に対して否定的だった方々も、今はそれをやらないと事業が成立しないリスクを考えて、デジタル化を推し進めようとしている。私としても、これを千載一遇のチャンスととらえ、DX推進に向けて鼻息荒く、スタートダッシュを切っているところである。

そんな中、一度、頭をリフレッシュして、冷静に現在の各プレイヤーの状況を俯瞰し、次の問いについて考えてみたい。

「このデジタル化によって、最も喜ぶのは誰だろうか?」

私のような、デジタル化を推進し続けてきた、事業会社のデジタル野郎はこのゲームの勝者たりえるのだろうか。それとも意外と、回りまわって既存の販売手法を堅持してきた販売のの事業責任者が結果的が喜ぶのだろうか。答えは、いずれもNOかもしれない。

結論を言ってしまうと、最も喜ぶのは、Amazonを中心としていわゆるデジタルプラットフォーマーになるのではないか、ということは改めて理解しておきたい。その理解があるのとないのとでは、同じDX推進でも、ゴール設定が変わってくる、と私は考えている。

自動車に限らず、リテールの最大効率化かつ合理化の行きつく先はE-commerce、というかAmazonだと思う。そこでは、最も需要に近しい形で、ユーザーの欲しい車種のカラーが手に入るし、オプションや特別仕様の設定も迅速に行える。さらに、複数販売店と値引きの交渉をする必要もなく、最も安い価格で購入することができる。販売店のセールスコンサルタントから受ける顧客(接客)体験についても、均質化し、平均点があがることで、嫌な思いをする方は減るはずだ。そして、雇用は10分の1くらいになって、CX(顧客体験)に特化したスペシャリストだけがリアル店舗に残り、それ以外はデジタル対応となる。

これはリテールだけではなく、外資系メーカー(インポーター)も同様である。
車両のプライシングや、販売シミュレーション、仕入れ等、人間が行っているものをAIがするようになるので、本社に残る人はこれまた5分の1くらいで事足りてしまう。需要を生み出すことのできるマーケターやクリエーター、そして、機械とコミュニケーションして指示ができる人材がいれば多くの主要業務はできてしまうと思う。

DXの推進は急務であり、このコロナ禍の環境において一気に進めるべきことであることは間違いないと思いつつ、同時にデジタル化(=合理化)したときに、本当の意味で競合になってくるデジタルプラットフォーマーの存在は常に認識した上で動いていきたいと思う。

ブランド力の高い日本車や欧州プレミアムブランドでは、それができるはずだと信じている。

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