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保護猫を迎え入れるまで④完結編

①~③はこちら。

愛護センターからの帰り道、この施設で出会う子をうちに迎えようと決めた。まだ目星もついてないけど。他にいろいろ探すのも疲れていたし、ここでなら、待ってればきっといい出会いがある気がした。いっしょに暮らす猫を探し出してから、はじめて前向きな気持ちになれた日だった。


2度目の訪問

最初の訪問から1か月くらい経ったころ、愛護センターの方から電話がかかってきた。
「子猫はまだなんですが、大人の猫で新しい子も入ってきたので、よかったら見に来られませんか」
譲渡の申し込みをした人には型通りの対応なのかもしれないけれど、この電話が本当に嬉しかった。ここまでなんとなく、自分の「猫とまた暮らしたい」という気持ちを、どこからも歓迎されていないような気がして負い目ばかり感じていたから。

7月某日。最寄駅から15分ほど歩くので、とても暑かったのを覚えてる(夏が苦手)。

りくとの出会い

施設の中に入ると、前回入った猫のいる部屋(ガラス張りなので中が見える)に、以前はなかった大きなケージ。中に小さな猫が1匹いて、遠くからずっとこっちを見てる。しかも、ガラスを隔ててるのにみゃぁ、みやぁ、と猫の声がする。どうやらあのケージの中の猫が鳴いてるみたい。

近くで見ると、明らかに小さい。
「この子は子猫じゃ?」
「うちの子猫の定義が生後3か月以内で、4か月以降は大人猫でこっちの部屋になるんです。この子はちょうど4か月です。」
多頭飼育の飼い主さんから引き取られた子で、他にもいっしょに引き取られた子がいたけれど、その子たちはまだ譲渡できる状態じゃないそう(人馴れするまで別の部屋でお世話している)。この子もこの部屋にきてまだ数日しか経っていないとのこと。

小さな体からは想像できないくらい大きな声で鳴いてるし、近くにいくとシャーもする。顔見ると怯えてる感じではなさそうなんだけど……。「抱いてみます?」スタッフの方に言われて「大丈夫ですか?」と思わず。「全然大丈夫ですよ」とケージから出してもらって抱かせてもらうと、たしかに全然嫌がらず、おとなしく体を委ねてくれる。
前の子(そら)は最初からまったく鳴かないし、シャーもしない子で、11年で鳴き声を1回か2回聞いたかな? ってくらい。こんなに鳴く猫はじめてみたな……。いろんな意味で気になる子だった。

このあと他の子も見せてもらったけれど、やっぱり最初の子が気になった。よく鳴くことも、シャーすることも、大変な境遇だったからということもあるかもしれない。でもまだ4か月。これからまた変わっていくだろうし、それを見られるのも楽しそう。
「この子、トライアルお願いできますか?」
こんなに簡単に決めていいのかな、と思いながらも自然と発していた。このまま連れて帰りたい気持ちの方が勝っていた。

トライアル→正式譲渡へ

とはいえ、本当にこのまますぐに連れて帰れるわけではなく。今日決めるつもりで来たわけではなかったので、猫を迎える準備がまだできていなかった。幸い、引き取りに来る日をこちらで指定することができたので、仕事の予定なども考慮して決めさせてもらった。

最初の写真は、引き取るときに持って行ったラタンのキャリー。ずっと前に購入して使うのを楽しみにしてた。大きさは十分だし、けっこう丈夫なので大丈夫だと思ったけど……連れて帰るのは、小さいくせに一筋縄ではいかない子。普通のプラスチックのキャリーにすればよかったとあとで後悔することになった。

1週間ぶりに会うと相変わらずよく鳴く子で、しかもキャリーに入れた途端すごい力で暴れ出した。こ、壊れそう……。取っ手を布で固定して安定させ、タクシーで30分。すごい音量で鳴きつづけ、喉を潰すんじゃないかと心配になるくらいだった。

トライアルは2週間。まずは名前を考えた。呼びやすい名前で、、、以前からなんとなく頭にあった、前の子が「そら」だったので「りく」。安直だけど、そらのことも忘れたくなかったし、きょうだいみたいに関連ある名前にしたかった。

暮らしはじめてのことは、またおいおい。

2週間後、再度愛護センターに行って、正式譲渡の手続きを。費用は、マイクロチップ装着料の3400円のみ。去勢手術、ワクチンは済ませてくれていて、1年後に受けるワクチンの補助券まで用意してくれた。

***

これが、今うちで暮らす猫、りくとの出会いです。

保護猫を迎える、といっても、猫と飼い主の数だけ出会いがある。
最初に断念した、里親募集のサイトで出会った子と幸せに暮らしてる人を何人も知ってるし、個人で保護活動しててインスタ等で発信してる人にも素敵な方が沢山いる。
わたしは今回の経験で、どんな出会いでも、そのあと幸せに暮らしていければそれでいいんだと実感してる。

猫との暮らしを希望するすべての人に、素敵な出会いがありますように。

はじめてケージから出た日

ちなみに、りくは今もおしゃべり猫だけど、シャーはすぐに言わなくなりましたよ。


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