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間違い探し 超短編

 最近のニュースをもっぱら賑わしているのは「黒く染まる人」だった。

 それは人が外を歩いていると何者かによって黒く染められるというものだ。

 その黒とは頭からペンキを被せられた様な物らしく、ドリフのコントなどをイメージするとわかりやすい。

 だが、被害にあった人は何も無い場所で急に全身が黒く染まったと証言する。

 その黒は洗っても落ちる事は無かった。服は着替えれば大丈夫だったが、体の黒を洗い流す事は出来なかった。

 仕方無く黒に染められた人はその黒のまま生活する事を余儀無くされた。

 テレビでは専門家やコメンテーターが好き勝手に意見を述べる。

 こんな事項に専門家など存在するのかと思われるだろうが、適当な肩書きの人間が専門家を名乗るのが世の常なのだ。


「精神的なストレスが具現化した物だ。」

「非科学的すぎます。それに服まで染まるのはおかしくないですか?」

「温暖化でオゾンが壊され紫外線が暴走している。」

「馬鹿馬鹿しい。それなら人類全員が黒く染まるはずじゃないですか?」

「犯罪予備軍を国家機密の組織が炙り出している。」

「都市伝説お好きですね。それ差別的な発言になりますよ。」


 などと、好き勝手な事を昼夜問わず並べ立て討論している。

 討論と言えば聞こえは良いがやっている事は居酒屋の酔っ払い親父と大差は無かった。

 タカシはくだらないとテレビを消した。


 現に人が黒く染まり始めてからは、黒く染まった人達は差別的な扱いを受けていた。

 原因こそ分からないが「黒く染まる人」と聞くと確かにイメージが悪い。    

 マスコミの報道の仕方に原因の一つがある事は疑いようが無かった。

 タカシの通う高校でも3人が黒く染まり2人が不登校になった。

 残った1人の生徒もあからさまに皆から避けられている。

 別に伝染する訳でも無いだろうにと、タカシは逆にその生徒と仲良くしていた。

「黒く染まる人」現象は世界各地で起きているらしく、その人数は日に日に更新されていった。

 ある日タカシは登校中に遂に目撃してしまった。

 前を歩いているスーツ姿の女性が黒く染められたのだ。

 
 タカシの目の前で、何も無い空中から大きな手と大きなペンが現れ女性を黒く塗り潰したのだ。


 余りにも現実離れした陳腐な種明かしにタカシは唖然とした。


 女性を黒く染めるとその手とペンは消えタカシは、また何も無くなった空中をぼんやりと眺めていた。



「そうか、間違い探しか。」

 タカシは、そう呟き学校へと向かった。


 人智を超越した存在による間違い探し。

 そいつは子供がやる様に間違いの個所を見つけては黒く塗りつぶしていってる。

 間違いとは一体何を指しているのだろう?


 少し歩いてから、タカシは立ち止まり

「そうか、逆のパターンもあるか、どちらにしても、もうすぐだな。」

 タカシは学校に向かう道を少し変え、ホームセンターで黒のペンキの缶を3つ買った。


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