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#高安動脈炎闘病記 8

8.ハクイノセンシ

僕がいる病棟では、数多くの人が働いている。
その中でも一番関わる職種は、看護師さん。
もちろん、それぞれがそれぞれの持ち場でプロフェッショナルを果たし、協働をもって毎日多くの患者たちを救っている。
その最前線にいるのが、看護師たちだ。

そんなこと、当たり前じゃないか
カレーライスは美味しい、ということくらい
そのことは誰だって知っている。

ただ、実際に身をもって体感するとその当たり前の概念が分からなくなる。

入院したその日も、異変に最初気付いたのは看護師さんだった。病室に入り、今度は病棟の看護師さんが動けなくなった僕の世話をしてくれる。担当は、もうすぐ2年目になるであろう可愛らしい女の子だった。

入院患者はそれぞれ重篤者から順にナースステーションの近くに配置され、24時間体制でモニタリングされている。心電図モニターとひたすらにらめっこする担当もいるようだ。
ナースコールはいつどこで鳴るかわからないので、常に院内PHSを下げ急な呼び出しに対応している。
排泄が困難であれば支援し、お風呂の支援、時には患者のシャンプーなども。食事も持ってくる。時にはリハビリの対応をしつつ、採血検温、点滴とあらゆる医療行為を行う。

時には色んな話し相手になってくれたり、退院したらどうしたいですか?何したいですか?と明るい光の通り道を指さしてくれる。
美味しいカレー屋さんの情報もゲットした。
(めっちゃおいしかった)

師長さんがはじめて部屋に来た時、パソコンのステッカーををみて表情を変え
「行ったの!?」と指差した。
オードリーのオールナイトニッポンin東京ドームいきます!ステッカーだ。
「行きました!」と答えると、「実はウチにもリトルトゥースがいて、行った子がいるのよ!」と、この日は勤務でなかったため、後日わざわざ移動後の病室まで連れてきてくださった。
まさかこんなところで、あの空間を共にした同志が居たとはと本当に嬉しかった。同性の看護師さんということもあり、なんでも頼ってください!と心強かった。


僕のいる病院には違うフロアにコンビニがあり、患者がコンビニに行きたいと言えば、看護師さんは車椅子を押して付き添って行くこともある。(慣れてくると1人でいかせてくれる)
コンビニがネット通販の受け取りスポットになることに気づいた僕は、すぐに通販で身の回りのものを揃えることができた。
黄色いド派手なエアジョーダン1まで購入していたため、さすがに師長さんに笑われた。

そんな付き添いだが、検査や手術室までも同行して行く。
手術室は手術室で、オペ看の方々が現場を守っている。集中治療室なども同様だ。
院内には至る所で看護師さんたちが活躍している。


人の命を預かる仕事であるため、つらい思いや悲しい思いに触れることも少なくはないはずだ。
入院中一度だけ、明らかにナースステーションの雰囲気が暗く涙を流す看護師の姿を目にした。
残念ながら、その献身の甲斐なく結果が実らなかったのだろう。

それでも彼らは人知れず涙を拭い、
また笑顔で患者たちの命を一番前で守るのだ。
職業に貴賤はない。が、
とても僕には真似ができない。

大谷翔平や久保建英だってめちゃくちゃすごいけど、
世の中にはたくさん凄い人たちがいる。
地球上全ての人に話を聞いてみたら、その数だけ物語はあるだろう。
いつか、そんな話を聞いてみたい。
看護師さんもそのひとり。
自分にできないことをやってのけることが出来る人をヒーローと定義するのならば、
彼らは間違い無くヒーローだ。

今日も人知れず戦っている戦士たちに、
心からの敬意と感謝を。

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