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いきたしるし

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最近の記事

#高安動脈炎闘病記 13

13.ピンボケの世界 4月21日。 観たことのない景色。 なんにもわからない。 唯一わかったのが、何も自由が効かないということだけ。 手術は無事に終わっていた。 少し遡り、4月19日。 早朝からシャワーを浴び、病室に溢れ返った荷物をロッカーに預ける。 貴重品をリストに書き、預ける前最後に銀杏BOYZの、夢で逢えたらを聴いた。 「君の胸にキスをしたら 君はどんな声だすだろう」 これから胸にメスを入れるヤツが聴く曲ではない。多分。 それでも、この曲は特別で思い入れ

    • #高安動脈炎闘病記 12

      12.それでも明日はやってくる そうこうしていると、手術の前日になっていた。 よくわかっていなかった手術のことも、発生する確率のあるリスクの問題も、とりあえず3択なら当てられるくらいの知識は入れたはずだ。 手術を終えると、集中治療室に移ることとなる。開胸手術となるため、術中は多くの出血を伴い、輸血をし、人工心肺で生命を維持させる。なんのことはない、大手術だ。流石に僕でもわかる。その後の回復は常にチェックをされるのだ。 リハビリ担当の理学療法士さんがやってきた。 いよいよ

      • #高安動脈炎闘病記 11

        11.生きた花 こんな自分の元にも、いろんな人がお見舞いに来てくれた。 職場からは上司がやってきて、寄せ書きとお守り、そして納豆を。 定期的に家族も来てくれた。 4月の頭に無事長女が産まれた弟も、大変な中納豆を持ってきてくれた。こっそり馬刺しも。 納豆が食べれなくなる、と言うことは桜納豆も当然NGだ。 個人的には、馬刺しの一番美味しい食べ方だと思う。異論は受け付けます。好みなので。 まあ、もう退院した後なので、時効ということにして欲しい。どうせもう食べれないから。 継続

        • #高安動脈炎闘病記 10

          10.Never Give Up!! 4月10日。 主治医より手術についての説明があった。 両親も病院に揃い、話を聞いた。 まず、どのような手術になるのか。 一つは、当初の通り大動脈基部置換術。大動脈の弁置換を行い、逆流を無くし心臓を正常に駆動させる。 イメージで言われるのが、心臓の弁はベンツのマークのような形をしていて、全身に血液を送った後しっかり閉じることで正常に循環を行う。 しかし、自分の弁は隙間があり、全身に行き渡る血液が心臓に逆流を起こし、大きな負荷が掛かってい

        #高安動脈炎闘病記 13

          #高安動脈炎闘病記 9

          9.マイナスへの挑戦 ある程度目安の状態まで進んだら手術、という旅が始まった。 今集中してやることは、とにかく身体のむくみをとることだ。 入院時の体重は91kg。よくもまあここまで太ったなと日頃の不摂生をカタチだけ後悔しつつ、薬と減塩食で水を抜くこととなった。 1.利尿剤の投与 1日2回の点滴でマンニットール、1日3回の注射でフロセミド、さらに朝食後の錠剤で利尿剤を服用。 この点滴と注射がすごい。とにかくすごい。 特に注射は打った5分後にはトイレに行きたくなる。そこから2

          #高安動脈炎闘病記 9

          #高安動脈炎闘病記 8

          8.ハクイノセンシ 僕がいる病棟では、数多くの人が働いている。 その中でも一番関わる職種は、看護師さん。 もちろん、それぞれがそれぞれの持ち場でプロフェッショナルを果たし、協働をもって毎日多くの患者たちを救っている。 その最前線にいるのが、看護師たちだ。 そんなこと、当たり前じゃないか カレーライスは美味しい、ということくらい そのことは誰だって知っている。 ただ、実際に身をもって体感するとその当たり前の概念が分からなくなる。 入院したその日も、異変に最初気付いたのは

          #高安動脈炎闘病記 8

          落書きのテンカウント

          今日は肝臓の検査。 正直、思いあたる節がないこともない。 不摂生に起因するものであれば、いくらでも心当たりがあるからだ。 細かい食事制限が必要になるならば、いっそのこと料理の勉強がしたいと思った。自分の身体にあった、美味しいご飯を作れるようになりたい。同時にまだ、学びたい意欲が自分にあることに少し驚いた。 いつものように6時に目を覚ました。 結局今日もそこそこな睡眠時間。いや、昨日よりは寝てる。今日は朝欠食だから、体重測って顔を洗ったら薬を先に飲まないと...と考えていると

          落書きのテンカウント

          芯のないペンシル

          気付けば34歳になった。 思い描いていた姿はそこには無く、ただ惰性で日々を過ごしている。 それなりに言われたまま生きてきた。 よくわからない理由で、小学生の時に習っていた剣道では主将。中学では生徒会副会長。 高校に入り、クラス委員長に販売実習の店長。水泳部の部長も務め3冠王になった事もある。 大学に進んでもゼミの幹事を務め、そのまま会社員に。 辞めたかった会社をうまく辞めきれず、言われたままの配置転換を経てだらだらと6年続けた。 無論、それなりに一生懸命やってきた。 一生懸

          芯のないペンシル

          #高安動脈炎闘病記 7

          7.初耳学 「高安動脈炎?」 初めて聞く病気の名前だ。病気の名前ってことだけはすぐにわかった。 ただ残念ながら高安と言われると茨城県出身田子の浦部屋所属の高安関しか浮かばない。 失礼だが、毛むくじゃらで愛らしい見た目から高安関のことを本当は熊だと思っている。 そんなことを考えていると、先生がなにかの書類を手渡してきた。 「国指定難病、珍しい病気です。」 ほーん、難病ね。 既にクローン病の診断を受けていたこともあり、しかも今のところこっちは薬を飲むことでほぼ影響は出ていない

          #高安動脈炎闘病記 7

          #高安動脈炎闘病記 6

          6.「今日、このまま帰せないです」 3月18日。 検査の予約を入れていた事もあり、入院手術に向けての検査へ向かった。家族は仕事なので、自分の車で向かった。 受診するのは大きな病院で、広い広い駐車場に車を停め、数分歩いて漸く病院内に辿り着く。具合が悪い人が来る場所なのに、なんでこんなスパルタなんだ。 息を荒らしながら、僕は院内へ辿り着いた。 無論、院内も広い。受付を済ませ、 一つ一つの検査へと院内を右往左往する。 CTスキャンの機械へ入る時に、 息ができなくなった。 そこ

          #高安動脈炎闘病記 6

          #高安動脈炎闘病記 5

          5.Death March 3月は僕の誕生月だ。 段々と歳を重ねることに喜びを覚える年齢どころか、寂しさを感じるようになっては来たが、 それでも産まれたこの月は好きだ。 この一年の生き甲斐になっていた オードリーの東京ドームライブも終わり、 さあという中、僕の身体は日に日におかしくなっていった。 息が続かない。眠れない。 横になれない。階段がいよいよ上れない。 見たことないくらい脚が太い。 酸素ボンベが手元にないと不安になっていた。 会社の代表と相談し、暫く休みを頂き

          #高安動脈炎闘病記 5

          #高安動脈炎闘病記 4

          4.Still Alive 東京でやりたいことがいくつかあった。 まずは、東京ドームシティで開かれるオードリーのオールナイトニッポン15周年展に行くこと。 ドームライブの前日である17日がプレオープンの日だった。 特に、僕のように地方からこのイベントに合わせて上京してくる人からすれば17日に行くのがベストだ。 お土産も買わないといけない。好きなキャラクターのチップとデールがデザインされた、限定のお菓子が東京駅にある。 ディズニーのキャラクターの中では人気の割にグッズが少な

          #高安動脈炎闘病記 4

          #高安動脈炎闘病記 3

          3.耳ヲ貸スベキ 職場に行き、パートさんに留守を頼む。 心配されながらも、僕がこの日をどれだけ楽しみにしていたかは1番近くで観ていたパートさんたちもよく知っていた。あたたかく送り出してくれた。 さあ、久々の一人旅だ。出張でもない自分で決めたプライベート旅。随分と久しぶりだ。 一旦全てを忘れて楽しもう、と福岡空港から飛行機で東京へ向かった。 飛行機は予定時間より30分ほど遅れて羽田空港に到着。急ごうとする心と裏腹にパンパンに詰まったキャリーバッグとパソコンの入ったリュック、

          #高安動脈炎闘病記 3

          #高安動脈炎闘病記2

          2.実感 東京では親友と合流予定だ。 高校時代からの親友。特に用はなくても夜な夜な電話を交わす仲。そんな親友の影響で日本語ラップを聴くようになった。 「今行かないともう一生行けないと思って」 親友は16日にRHYMESTERの日本武道館ライブがあることを言った。2月15日の話だった。 東京で長く勤める親友も、この3月から熊本に帰り新たな生活を送ることにしていた。僕とは違い結婚もしているが、奥さんも娘たちも東京の人。 熊本での新たな生活を始める前に、その目でどうしても焼き

          #高安動脈炎闘病記2

          #高安動脈炎闘病記 1

          心臓、逆流の音がします 2月の頭の、いかにも2月っぽい天気の日だった。 年末から喉の調子が悪く、近所の耳鼻咽喉科に通っていた。とても親切で喋り口のの柔らかく、紳士なおじさん先生だった。 僕は冬になるとよく風邪をひく。何ヶ月も長引いて激痩せしたこともある。 なんでそういう痩せ方したのにまた太ってしまうのか不思議に思ったこともある。 今回もひと月ちょっと喉の痛みがおさまらない。咳も出る。 おじさん先生は内科で肺のレントゲンを撮ってもらいましょう、耳鼻科ではみれませんからと。 数

          #高安動脈炎闘病記 1