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【ライターの仕事】何が大変だったかをフィードバックしなければ永遠に伝わらない。


私は取材のアポ入れが好きじゃない

取材は好きだけど、アポ電話はずっと苦手。テレアポや突撃アポを繰り返すことができる営業マンを尊敬するし、フリーマガジンの営業をやってクライアントから罵声を浴び、心が折れた話を聞けば「そりゃ壊れる」とそっと慰めたい気持ちになったりする。

ずーっと昔に地方出版社で編集をやっていた時。取材先にアポ入れ電話をするのがいつも急で、何なら「明日行ってもいいですか」「今日の夕方どうでしょう」みたいな、今思えば非常識極まりないことをやっていた。

飲食店にアポを入れるならランチとディナーの間と言う鉄則だけは今も脳に染み込んでいる


地方の月刊誌は企画出しから入稿まで自分でやるから、時間がとにかく足りなくて、寝袋が会社の片隅に積み上がっていて。志の厚い女子が「どうしても大ボリュームのグルメ特集をやりたい」とチーフを頑張り、会社のフロアが寝袋の川になった夜もあった。のちに大反省会が行われた。※わたしは隣のチームにいたが、時々ヘルプに入ってやばいと感じていた。

その頃同僚と、こんな話をしていた。

「私たちさー、お店の人が一生懸命通常営業を回しているのに、突然電話してその平和を壊すじゃない。明日行っていいですか、タダで料理作って写真撮らしてくれませんか、あなたの休憩時間を取材時間に差し出しくださいって。そう言うのをいきなり頼むんだよね。ちょっとひどくない? 私たちの仕事って何なの???」

みたいな。

本当にそうだよ。今もそう思っちゃうところがあるから気が引ける。

でも当時の価値観て、まだまだ「ちゃんと電話する」を重んじるところもあって。いきなりメールとかファックスとかで連絡をよこす人はダメだ、きちんと電話してくるなら「それなら取材受けてもいいけど」みたいな、人と人の繋がりを重視する人だっていたし(今もいるでしょう)。

何が大切で何が悪いのか、価値観は人それぞれ。その不安で広大で曖昧模糊な大海原に、電話一本で勝負を挑むのがとてもとても怖くて心細いといつも思っている。

取材してあげる、なんて精神は心の片隅みにもなかった。常に。

地方誌は予算がなく、「無料で掲載するから料理は提供してほしい」が暗黙のルールで、それはとても良くないなと今は思う

だから5日前にギリギリ、リストが決まるのはよしてくれ

今も苦手なアポ入れ、どうしてもやらなきゃいけない時がある。

しかし、取材先リストがなかなか決まらない。アイデア出しは随分前にしたのに、もうカメラマンも押さえてあるし、取材日程も決まってるのに。

やっと編集部からリストが出てきたのは5日前! 

そこから超特急で電話がけして、定休日を避けながらなんとかしてスケジュールを組む時に、やっぱり壁にぶち当たる。

まず個人店は大体すぐアポが入る。電話口の人が責任者だから、決めるのもその人。でも企業はそうはいかず、広報担当者がいたとしても「代表に確認します」の猶予期間がどうしても必要。

その重要性を、心の中で思いつつもずっと「そんなこと、編集の人もその向こうの営業マンも知ってるだろう」くらいの思いでいたのだが。

先日、取材中に営業マンと一緒に食事する機会があった。私はずっと思っていたことを話した。

私「個人店じゃなくて大きな企業だと、一週間前のアポ入れでは急ですねって言われちゃうんですよ。それがいつも困ってて」

営業「えっそうですか?」

怪訝な顔をされて、なんとなく会話は終わったのだが。

でもローカル度が上がるほど取材チームを歓迎してくれるのも世の常。色々な料理をご馳走になってきました

なんとその後、早くリストが下りてくるようになった

その後。なんとリストだしがめちゃくちゃ早くなった。

何なら取材日時の3週間前に「もうアポ入れていいですよ」という環境が整ったり。早すぎてびっくりする。でも3週間もあれば、取材NGショップの差し替えも余裕だし、スケジュールだってよく考えて組み立てられる。

もしかして「フィードバックのおかげなのか?」と思ったのだが、それが正しいかどうかは定かじゃない。あまりのギリギリ進行をクライアントが嫌ったからかもしれないし、クライアントが取材に同行したいから「早く取材日の内容を決めてくれ」と言うことなのかもしれない。

ただ、言わないままでいるよりは、伝えられる方が数倍いい。私がこう思っていることを伝えなければ始まらない。

そして「伝えられるタイミング」は意外と少なく、機会を逃してはならない。


だいたい取材の合間のご飯スポット探し、休憩先カフェ探しの方が命懸け

過去、「この仕事だどれだけ大変で私が薄給だったか」を伝えるために、一ヶ月以上にわたるスケジュールと全工程でかけた時間をエクセルで表にして、ギャラを時間で割ると「時給が1000円を切ります」と訴えてみたこともある。

「大変だった」とポソっと言っても案外日常業務の忙しさに紛れ、なかったことになっていくので。

大袈裟なほど、「大変だった」ことを伝え続ける方が後々自分のためになる。

ずっとずっとそれができていなかったのだけれど、ここ数年はちょっとそれができるようになってきた。多分私自身がおばさんになって、言えることの範囲が増えてきたからかもしれない。

本当のことはわからないが、フィードバックの重要性だけは常々感じている。

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地方の出版社を経てフリーの編集ライターとして活動しています。
○地方でライターの仕事を続けるには
○単価アップを叶えるには
○そもそもライターってどんな仕事?
○編集の視点とライターの視点の違い
などについて、自分なりの解釈をしていきたいと思っています。


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