見出し画像

2006年映画『好きだ、』感想

2006年の映画「好きだ、」(石川寛監督)観賞。

あらすじ
17歳のユウとヨースケ。互いが相手に対して好意を持っているにもかかわらず、「好きだ、」の一言を言えない。二人の感情は、近づき、もつれ、すれちがい、また惹かれる。そして、ある哀しい出来事に行き着き、断ち切れる。それから17年。34歳のヨースケとユウは東京で偶然に再会する。

参照:Wikipedia

Wikipediaのあらすじがとても詩的だったので参照しました。
学生時代のユウとヨースケを宮崎あおいさんと瑛太さん。大人になってからを永作博美さんと西島秀俊さんがそれぞれ演じている。
カメラが揺らぐような不安定な映し方は、癖があって、もどかしくて、それはそのまま主人公ふたりの心の揺れや距離そのもののようだった。とても静かな映像でバックに流れる音楽はなく、学生時代、ヨースケがギターで鳴らす自作のワンコーラスが何度も映像をよぎって行く。ユウの姉に好意を抱くユースケだが悲しい事故があり、ワンコーラスのまま、完成した曲は聞けないまま、ふたりは学生時代を終える。

ふたりは大人になり、偶然から再会する。
しかし年を重ね、ビジネストークはできても思春期のまま想いをとどめ、昔と変わらず不器用な会話しか交わせないユウとヨースケ。本音を言いたいのに言えない。とてももどかしい。

しかし、ぎこちなく過去の話からぽつぽつと話すふたりの背中を結果的に押したものは、どうしようもないふたつの悲劇だった。作中起こる事件は非常にショッキングだ。特にヨースケの身に起きることは。
それなのに静かで、言葉でのうるさい罵り合いなどもない。悲しさは滲むのに手触りは柔らかく、ふたりの心が通い始めるほんの少し手前を見守っているような作品でした。

ユウとヨースケが互いに「好きだ、」と言えて良かった。伝え合ったのだから句読点のそこから先へと、きっと進んで行ける。エンディングでは学生時代のヨースケが作曲途中だったあの曲が完成されて流れる。とても良かったです。

PS / ヨースケに危害を加える男が加瀬亮さんだと後で知り、驚き。すごく怖かったです……。

『好きだ、』ポスター

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?