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透明人間まではまだ遠い

以前、会社入口で検温すると32度になる話を書いた。
相変わらず、奴は32度を表示しながら「正常範囲内です」と仰せである。
正常範囲とは?

そしてあろうことか、ついに僕の存在を認識しなくなった
センサー前に立っても、一切反応しない。
沈黙。
ぴょんぴょんと飛び跳ねて、自分の存在を主張する。
5回ほど跳んでやっと、34度を表示しつつ「正常範囲内です」と仰せになった。

もしかして、自分という存在は既に存在しないのか。
手のひらを空に翳すと、すうっと透けて見えた。
そうか、僕は透明人間になったのか。

スーパーで特売の卵1パック99円を買ったところで、誰の目にも留まらない。
怪しげな路地裏を千鳥足で歩いても、誰にも顧みられない。
大通りの真ん中でピルエットしたって自由だ。

……なんてことはなく、あっさり不審者扱いされる。
これはまた別の話。

そして僕は今日もセンサーに認識されず、自動ドアの前で手を振り、体温計の前で飛び跳ねる。

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