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38度で涼を撮る

撮れるわけがない!と思いつつもカメラ片手に奮闘した記録。


かれこれ長いこと福岡に住んでいる。…とはいっても、真夏に「明日は30度越えるんだって!」と驚きの気温を口々に言い合っていたことが記憶に新しい。つまり、たった数年で30度はおろか、35度越えが当たり前になる夏が来ようとはあのころ思ってもいなかった。


特にやることのない週末。天気予報によると予想最高気温は38度。油断すると若者でも倒れるような暑さだ。
「夏らしいことができて、かつ涼しいところ」をあれこれ考えるが、先日出かけた水族館は思っていた以上に「密」だったし、とはいえ動植物園に出かけるにはさすがに気温が高すぎる。


そうだ 自宅の庭でプールなら、と立ち上がった。夫はやんわり反対していたが、涼しい屋内に出入りができて、時間に縛られることなく気ままに水遊びができる。私が思い当たる中では最善のエンタメだった。

先日トイザらスで購入した、売り場で一番大きなプールを広げる。本来なら主役であるはずの娘はやはり今回も水を怖がり、足のくるぶしが浸かっただけで大声で泣いてしまったが、私としてはプールが大きければ大きいほど色んな角度で写真が撮れるからいいやと思うことにする。

6,000円(+水道代)でちょっとしたロケーションが出来上がるなら、市内の水撮ができるスタジオのレンタル料と比べるとむしろ安いかもしれない。(今回がプール使用2回目だと思うとなおさら)


太陽に照らされて、水がまぶしさを増す。身体中、髪にさえも余すことなくスプレー式の日焼け止めを噴射したが、できることなら眼球もUVカットで覆いたいほど瞳の表面がじりじりと焼け付くのを感じた。色がついていると撮影に差し障るから、無色透明のサングラスの購入を検討してもいいかもしれない。

娘がたった3分ほどでリタイアしたので、仕方なく自分の手で水をかきたてつつ、もう片方の手でシャッターを切る。手が滑りそうになるが、防水でもないカメラのボディが浸かればイチコロだと思うと自然と手に力がこもった。


ISO値を最小の100に、シャッタースピードを1/500まであげてもまだ画面が白く飛んでしまう。太陽光とはこんなにも明るい。F値を10まで大解放してようやく、私好みの青色が全面に出てきた。

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好きな色味にたどり着いたと同時に、ふらりと視界がゆがむのを感じる。慌てて屋内に戻り、冷たい水を飲み、クーラーの風にあたった。「もうおしまい?」と笑った実母も、開けた窓から入り込む熱風に、すぐさま冷房の温度をさげていた。

少し休んで再び外に出ると、プールに張った水が温まってぬるめのお湯になっている。視界に入る景色は涼だが、14時地点で気温は38度。

カメラのバッテリーがオーバーヒートしそうなほど熱を持ち、ここは本当に日本なのかと自問自答しながらシャッターを切り続ける。余談だが、かつて筑後船小屋にある福岡ソフトバンクホークスのファームで試合をとっていたときに、一度バッテリーがオーバーヒートしたことがあった。あの時も、気温は35度を超えていた記憶が。そして、あの日こそが初めて熱中症にかかった日だったので、撮影に夢中になりすぎないように気をつけた。

一通り撮りたいものは撮って、プールを片付ける。実父が手伝ってくれたが、夕方になってもなお 2人して汗だくになるほどの暑さだった。


クーラーの前で涼みながら写真のデータを取り込む。写真だけだと最高に涼しげだが、私はこの日の写真を見返すたびにプールの水が煮え立つほど暑かった38度の夏を思い出すだろう。

8月も明日で最終日。
娘と過ごした初めての夏、悔いなく走りきりたい。


2020/08/30 こさい たろ


**プール関連note


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