名探偵の業と奇跡の確率(訳:「池袋シャーロック」を見届けた)
「推理のできない名探偵」が主人公の朗読劇「池袋シャーロック」。
全6話構成の5話、6話が本日生配信とのことで視聴。
↓前の記事はこちら。(note複数引用貼り付けはできないのね)
↓1話と2話はこちら。
https://note.com/pr0menade/n/ne2fc46bc3aa3
File.05「四つの推理の回想」
雪島と住吉という、2人の会話でほぼ成り立つ話。
曰く、「北崎教授のファンミ」。
ビラがHG創英角ポップ体というが、それ「書体カエ」で即戻しやぞ。
どうやらFile05は、伊波が狩山教授を殺害した世界線。
02から続く世界線だろうか。
そして北崎教授は失踪して3年経過しているらしい。
3年前に突如として休講、それから姿を現さないとのこと。
ライヘンバッハの滝ー! モリアーティー!
……と住吉と同様にテンションが上がりかけたが、推理ともいえぬ憶測ばかり。
「なぜシャーロックは池袋なのにモリアーティーは五反田なのか」と思ったら、北崎教授と共に消えた絵里坂准教授のお住まいらしい。
「狩山教授は普通に悪人」と語る雪島は、04とまた違う人物像。
その彼について雪島が問うたとき、「申し訳ないが、覚えてないんだ」と返した北崎教授の優しさ。
学生たちの様子をあれだけ事細かに覚えている人が、何も覚えていないわけないのに。悪く言いたくないんだな。
……と思ったが、ラストまで見終えると「もしやこの時点で既に……!?」と頭を抱える羽目になる。
北崎教授と同時期に辞めた食堂のおばちゃんは窃盗の常習犯。
北崎教授も万年筆を盗まれているようだが、決定的な現場を見ても指摘しない。
この件につき、雪島は北崎教授が「大勢の前で糾弾することをよしとしない」と語る。なんだかんだで信頼してるやん。
……と思ったが、ラストまで見終えると「もしやこの時点で既に……!?」以下略(本日2度目)。
「一度探偵を名乗って生きてしまったら、人間には戻れない」
雪島の推理、真相はまさかの『博士の愛した数式』パターン。
でも雪島の推理材料になっている服の袖の裏のメモや部屋の数式は、名探偵っぽく見せるための小細工……。
01-04まで見た視聴者は、笑いを堪えるの必死。
なぜ北崎教授は、真実を明かせず姿を消したのか。
その問いに対する雪島の答えが、タイトルだ。
探偵が抱える業(カルマ)。
私自身も、「こうだったらいいな」と無邪気に語れる自由を持った人間でありたいと心から思う。
「私はもう準備ができているぞ!」
最後に北崎教授のご登場、真相の独白。
ヴァイオリンの音色と相まって、切なさ倍増。
「自分が何者かわからなくなったら、この手帳を読め」
おお、これはまさに『博士の愛した数式』……としんみりしていたのに、内容に爆笑した。
ピタゴラスの定理を見つけて、ゾディアック事件に切り裂きジャックと3億円事件も解決したって、いくらなんでも盛り過ぎである。
そして「ことりっぷは買うな」、自分で何度も買っておいて「ことりっぷ」に対する熱い風評被害である。
共に旅に出るため、迎えに来た絵里坂に対する言葉。
率直に言って、決して幸せな結末ではない。
でも最後の「私は準備ができているぞ!」は、浪川さんの演技もあり光が見えるラストだとも思えた。
05の小ネタ備忘録
・雪島は目黒、絵里坂は五反田に住んでいる。北崎はたぶん池袋。
(余談だが絵里坂、五反田から池袋まで通勤するのけっこう大変では?)
(雪島も目黒住みだが、彼は親戚の家から通っているのだろう。)
・乗ってる車が「エクセルシオールのディオール」こういう遊び方好き。
・樹海はことりっぷにもるるぶにもまっぷるにもないと思うよ
File.06「北崎教授の最後の挨拶」
「もうタイトルからして、元ネタ的に死ぬやつやん〜」と震えながら待機。
冒頭、北崎と絵里坂の会話が微妙に噛み合わない……と思ったら!
絵里坂が「一週間前から来てる」と言った時点で気づくべきだった。
たしかに絵里坂を演じる前野さんが、北崎を演じる浪川さんのほうを頑なに見ようとしていなかった。
いわば舞台という装置を活かした叙述トリックのようなものだろう。
見せ方が鮮やかで唸った。
ライヘンバッハ=西池袋
そういうわけで、北崎教授、まさかの幽霊。
……気持ちがどんよりしたところで、「ミステリーナイト」とやたら楽しいBGM、情緒が忙しくてならん。
西池袋の4階ビルの屋上から落下した北崎教授。
そばにはヴァイオリンと楽譜。楽譜はエルガー「愛の挨拶」。
高所から落下でライヘンバッハを連想したら、やはりその意図があった模様。
西池袋というのが、ライヘンバッハにしてはスケール小さいけど。
「私、ものすごくシャーロックホームズっぽいよね☆」
(↑浪川さんの演技、絶対語尾に☆がついていた)
「不謹慎!」と怒る絵里坂に謝るテンションの落差、「北崎なら喜ぶかも」と言われて唇を突き出す浪川さんの演技にご注目いただきたい。
推理を展開する絵里坂と北崎の背後で、おろおろする北崎。
「何で自分が殺されたかを、私は全部知っている!」、そらそやろ。
そう、今までの推理力皆無な北崎と違い、今回は自分が被害者なので真相を全て知っているのだ!
でも「ビルから突き落とされて、それから……」と記憶が曖昧な北崎教授。
記憶が曖昧であることについて「脳細胞どころか全細胞死んでいるんだが」、そらそやろ。
……と思ったが、これがラストに向けての伏線とは!
倒叙ミステリーの辿る道
そして新キャラきたー! 桐野准教授がモリアーティーならぬ犯人。
File06にして、今回は倒叙ミステリーだ。
刑事コロンボ、古畑任三郎など名高い映像作品が多々ある。
「事件解決に必要なのは、探偵ではなく霊媒師」
いや倒叙ミステリーあるあるだけど、探偵がそれ言っちゃおしまいだー!
雪島が「桐野准教授は愛の挨拶が好きだって言ってた」と言った時点で、視聴者の心境、「しむらー、後ろ後ろー!!」である。
奇跡の確率は
ヴァイオリンを一緒に落とした理由、「愛の挨拶」の違和感などから無事に犯人に辿り着いた後日談。
それでも絵里坂に、北崎教授の声は届かない。
「何か喋ってくれー!」という叫び、「死んじゃってごめんな……」と涙混じりに語りかけるところ、視聴者が泣きたくなった。
目の前にいるのに言葉が届かないなんて、切なすぎる。
最後の最後で、北崎教授は意識を取り戻した。
生死の境はさまよっていたけど、まだ死んでないやん。
おのれ信頼できない語り手。
でも生きていて、絵里坂とまた意思疎通できて、最高の裏切りだ。
ちなみに意識を取り戻す確率は3%を切るくらいだったとのこと。
1/2^15で2択の推理クイズを連続不正解する確率に比べれば、余裕。
あの推理クイズのくだりが、ここで回収されるとは。
お見事な脚本である。
最後の小ネタ備忘録
・絵里坂、もしかして複数の世界線を知っているのでは? と途中で思ったのだが、どうやら違ったっぽい。意外と現実的な台本だった。
・北崎教授の愛車はフィガロ。かわいい。
・今回のアフタートークで、浪川さんが「『人を信じる』のが北崎のぶれないところ」と仰せだった。これがどうして、なかなかいちばん難しい。
・「購入かにょう」。
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