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bud in autumn
「ヤると脚細くなるんだって」
「え、何?」
「あー、」桃子は目線を横に動かしながら
「松田さんよぉ、最近分かりやすく細くなった、あの子」と言った。
松田さんは去年同じクラスで前に一度だけ話しかけたことがある。
「その髪ゴムめっちゃ可愛いねどこの?」
「ありがとう笑これ駅前のblossomってとこだよ」
「へぇ〜!行ってみるね!ありがとう」
会話はそれだけだ。
松田さんは目立つと言うよりも教室の端で本を読んだり、授業中は、携帯をいじったりする人だった。目立たなくておとなしいイメージの子。
次の授業では移動教室があったので、3組の前を通ると松田さんが教室から出て行くのが見えた。
思わず振り返ると、確かに脚が根本からさらっと細いのでした。
もともと細い子だったから気にしたことなかったけど、よく見てみたら、まっすぐできれいな脚をしていた。
「(そういうことをするとキレイになるんだ……)」
いいな……と心の中で思ってしまった。なんか、あたしよりも何倍も何倍も大人になっているみたいで羨ましい。
その日から私は松田さんとすれ違うたびに、妙に意識するようになった。気がつけば挨拶程度を交わす仲になっていた。
夏休みもすぎて秋学期が始まると、3組と合同での体育の授業があった。3組とウチのクラスとで女子の更衣室が同じになる。
授業終わり、私は着替え終えて更衣室を出ようとすると、後ろから「あの……」と声をかけられた。
松田さんだ。
たまたま隣のロッカーを使っていたのが松田さんだったらしい。
「あっ、」
「これ……忘れてたよ!」
手渡されたのはロッカーの隅に置き忘れていた 私の腕時計だった。
「ああ!ありがとう!笑
完全に忘れてた笑」
「まにあってよかった笑」
時計を受け取る時、
松田さんの袖口からは何本もの赤い線が降りていた。
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あ……
覗き見しそうになった自分を見ないふりして目線を落とした。
腕時計を受け取ると、下ろされた手の先からその脚が。
細く、白い脚が。
私はありがとう!と言い、足早に更衣室を出た。
何か秘密なものを見てしまった気がした。
それからしばらくして、松田さんを学校で見なくなった。
「援助交際してるんだって。知ってる?パパ活てやつ」
桃子から噂を聞いて初めて知った。
あたしは松田さんのこと、全然知ることが出来なかったな。
でもあの、秘密のことは、
一応誰にも話せない。
みんな、知ってて、、、?
もう廊下で声を交わすこともないのかもしれない。細いけど芯のある声だった。松田さん、
「おはよう」
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