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中編小説『二人』

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2021年11月の記事一覧

中編小説『二人』(1-2)

中編小説『二人』(1-2)

 日没の光線が差し込み、交差点を渡る人々の半身を紅色に染める。人々は地から湧いた幽鬼の群れのように、交差点に三々五々と集まり、躁の一団となって歓楽街へ続くアーチを目指す。アーチのこちら側では、昼間から点灯する電飾の光に晒されて、雑居ビルの作る陰影が膨らみ、輪郭を露わにしていく。アーチを潜った一団は、光と影のハレーションに面食らい俯きかけるが、じきに晴れやかな表情に変わる。
 私は、手をだらりと垂ら

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中編小説『二人』(1-1)

中編小説『二人』(1-1)

 自宅から駅までの途中、住宅街の四辻を過ぎたあたりで、杖をついた老人とすれ違う。
 老人は真剣な面持ちで、膝が曲がらないのか、猿股に包まれた脚を垂直に立てたまま一歩一歩小刻みに歩みを進めている。寝間着の上にどてらのようなものを羽織って、腰の曲がった姿は網戸にへばりつく甲虫を思わせる。耄碌しているのか、自己に耽っているのか、こちらに気を向ける様子はなく、眼差しは正面に固定されている。
 通りに面して

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