【名古屋グランパス】風間イズムとマッシモイズム【vs川崎フロンターレ】
破竹の10連勝をしていた川崎フロンターレを止めるのはどこか? 先週一週間のJリーグ界隈は、その話題で持ちきりだった。前節も堅守を誇るC大阪が、まさかの5失点で大敗するというショッキングな出来事を全Jリーグサポは見せられていた。それでも名古屋グランパスサポは、ほんの少しの希望とほんの少しの自信もあった。
名古屋は前節、苦手にしていたアウェイ湘南ベルマーレ戦をATの相手オウンゴールで勝利した。苦しみに苦しんだ。湘南に出向いて勝利したのは、優勝した2010年以来だったらしい。そんなに勝ってなかったんだと、その事実も凄かったんだが、今の名古屋は厳しい試合を勝ち切るメンタリティーが備わってきていると実感できた勝利だった。
そしてまた、川崎とは直近のルヴァンカップで戦っており、しかもその試合では前半で2点先制するという成功体験もしていた。選手もサポも、良いイメージトレーニングをルヴァンで出来ていた。
自分たちの戦い方ができれば勝てる。
そんな、ほんの少しの自信をいつの間にか僕ら名古屋グランパスサポは持てるようになっていた。思えばこの2年は、辛酸をなめ続けて下唇を噛みしめて耐え忍んで我慢の2年だった。去年、風間体制から180度路線変更したようなマッシモ体制になり、とうとうフロントも混乱したかと思ったのだが、それこそが「サッカーの奥深さ」だった。
よくクラブや代表チームの作り方で「攻撃が先か守備が先か」という論争がある。どれだけ攻撃力があっても、守備がスカスカでは勝てないし、どんなに守り切ろうと攻撃できなければ勝てない。ただ、だからといってバランスを取っていこうとするのも圧倒的な強さを手に入れることは難しい。
川崎フロンターレも風間体制の時は苦しんでいた。圧倒的な攻撃力を持ちながら、時に安定を欠いているのを敵ながら感じていた。風間監督の後任に鬼木監督が就任し、元鹿島アントラーズの選手として「堅守」が刻み込まれていた彼が川崎に植え付けたのが「堅守」だった。金棒を持った鬼が、とうとう鎧を着こんだ瞬間だった。
そこからの川崎フロンターレの強さは誰もが知るところだ。そして名古屋もまた、同じ道を辿っていた。僕らサポは目先の勝利に飢えすぎて見えていなかったが、名古屋のフロント陣は冷静だった。マッシモ・フィッカデンティのような堅守を誇る「イタリア人らしいイタリア人」な監督は、風間監督が蒔いた種を花開かせるにはうってつけだった。
元々が名古屋DF陣にはトップレベルのポテンシャルを持った人材が揃っていた。マッシモとしても、彼らの持っているモノを100%発揮させるための決め事、ルールを植え付けるだけだったのだから、意外と楽(というと語弊があるか)だったのかもしれない。
そして更にマッシモと名古屋フロントがリアリスト集団だと思うのが、補強選手の候補として「マッシモ体制で戦った経験がある」という選手を連れてきたこともある。特にDF陣にとってはマッシモイズムの浸透は効果抜群だった。
今年の名古屋は見違えるような「堅守」が身に付いた。
ここまでリーグ最少の8失点。そして、特に自陣ペナルティエリアでの粘りは目を見張るものがある。去年まではGKランゲラックが痛々しいくらいの、またサポーターとしても「申し訳ない」気持ちを感じる孤軍奮闘の日々だった。それが今年は強固な壁、キングダムで言えば函谷関の前に万里の長城がそびえ立って二重の壁をゴール前に築くことができるようになった。
それを物語る一枚の写真がある。
昨日の川崎戦でのゴール前のDF陣の迫力が、この一枚に凝縮しているとは思わないだろうか。僕は昨日の金崎夢生の完璧なヘッドによる先制点でも泣きそうになったが、それ以上にこの写真を見た時に感動で奮えた。
「気持ちの勝利」とよく言うが、まさに昨日は、まるで高校サッカーの決勝戦のような気持ちがこもった死闘だった。コロナ禍でなければ4万人が大歓声を送る熱狂の渦が豊田スタジアムを包んでいただろう。そこだけが、とても残念でならないが、それでも昨日スタジアムに駆け付けた5千人弱のサポーターは、最後まで選手たちを後押しする拍手を力強く送ってくれていた。拍手だけでもあれだけ力になるんだと、僕はそこにも感動していた。
「川崎と名古屋の試合は面白い」
当該サポだけじゃなく、全Jリーグサポにも思われるようになったのは、やはり風間監督のぶっ壊れているレベルで振り切った攻撃への執着が両チームに植えついているからに他ならない。バランスを取るのは、まず尖ってから。それを実践している両チームだからこそ、まず尖ったのが攻撃面だったからこそ、毎試合スペクタクルに溢れた試合になっているんだと思う。
今だから言える。「ありがとう風間監督。僕らは元気です」と。
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