11歳の彼

確かに彼のことが好きだった。

その事実だけが残っている。

人生で初めて掃除の時間をサボって、
ホウキでホッケーをしたこと。

漢字テストの点数を競い合ったこと。

校内放送の
マル・マル・モリ・モリ!に合わせて、
彼がヘンテコなダンスを踊って、
大笑いしたこと。

偶然、同じ日に
赤いチェックのシャツで登校したら、
からかわれて、嫌で嫌で
二度とその服を着て行かなくなったこと。

親に許可をもらわないで、
こっそりメアド交換して
2往復だけやりとりしたメール。

YUIのCHE.R.RYを聴きながら、
ああ、恋しちゃったんだなぁ
と思った夜の9時。

気づくと、
彼は別の中学校に通うことに決まっていた。

一緒にいると楽しい友達

それぞれの新しい生活の中で、
お互いに薄くなっていって、
ただの小学校の同級生になった。


大人になった私たちは、偶然、同じ電車に乗って、地元の駅に向かっていた。

「彼氏とはまだ続いてるの?」
と聞かれたから、

いきなりそんなことを尋ねるなんて、
失礼な奴だなぁ
と思いつつ、

「彼女と花火に行ったみたいだね、SNSでみたよ」
と返した。

11歳の私は、
確かに11歳の彼が好きだった。

その事実だけが、残っている。

#あの恋 #大学生 #女子大生 #エッセイ #ぽてとさらだ #恋愛 #恋 #同級生

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?