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知識ゼロから Zoomオンライン演劇を 生配信で上演した話③ 稽古編


オンライン演劇 リーディング『音の世界』の裏側。

読んでくださってありがとうございます。Celebration of Possibilities西村壮悟です。

前回は、『音の世界』という戯曲とキャスティングについて、書きました。


今回は、Zoomで稽古をして分かったことを書きます。



ノートは基本的に録画映像をチェックして

自分が出ているとき「演出脳」を働かせることもできなくはないけれど、
そうすると俳優として渦中にいる度合いが薄くなってしまいます。
俳優の仕事は渦中にいることで、外から見るのは演出の仕事だと、僕は考えています。
僕は、自分の出番では俳優としての仕事を優先させることにしました。

さいわい、Zoomには録画機能があるので、映像を見て演出からのノートを送っていました。

「ノート」というのは、演出が俳優に出すオーダーや、サジェッション、アドバイスの総称です。カタカナばっかですね。

たとえば、

オーダー:「このセリフで右を見てください」「ここではまだどちらに決心したか分からないように見えたいです」「ここで入ってきてください」

サジェッション:「今やってくれたのが良いので、さらにこうしてみてはどうですか?」

アドバイス:「その側面はここではまだ出さずに、次のシーンで見せるほうが効果的ではないですか?」

みたいな違いですかね。


映像を見てのノートは、メリットとデメリット両方あると感じました。

・リアルタイムで見ていたら見逃していたかもしれないことにも気づきやすい

・映像を見て、メールでノートを送るので、言葉を整理して伝えることができる(しかし、その言葉で伝わったかどうかは返信がないかぎり、次の稽古で俳優がどう演技をするかを見るまで分からない。まぁ、これは稽古場でも同じなんですが)

・(上のと似ているが)メールなので、稽古場で話をするような双方向のコミュニケーションにはならず、一方的になってしまう

・つい細かく見すぎてノートも細かくなりがち、時間がかかってしまう

演出の立場で気になっていたのは、3番目です。


いろんな意味で時間が足りない

オンラインで稽古するのは、稽古場で稽古するのと違う疲れ方をします。
身体的には疲れないけど、いつもと違う感じで消耗する。
なので基本的に毎回2時間くらい(延長したときもありました)、稽古回数も少なめに設定していました。

2時間の稽古だと、30分の作品を通してやっても、1時間半しか残りません。時間を有効に使おうとすると、無駄に喋る時間がなくなります。
効率的に時間を使わなければ、という僕の気負いも皆に伝わります。


稽古場での休憩中やちょっとした時間にタバコ吸ったりコーヒー飲んだりしながら喋るのって大事だったんだと、今回あらためて感じました。
少し弛緩した時間に、作品と関係あることや、ないことを話して、
コミュニケーションをとってお互いを知ったり、芝居に使える何かを見つけたりしていたのです。

演出としても、出演者が作品や役についてどんなことを考えているのか、自分のノートがどのように受け取られたのか、気になるところです。
オンライン稽古や演出ノートでのやり取りが一方的になっている感がしているので、ざっくばらんに話したかったのです。

それに今回のメンバーは、ほとんどが初対面同士。
顔合わせからオンラインで、実際に会ったことがない人たち同士です。

一旦稽古のことは置いといて、
今必要なのは、コミュニケーションをとる時間と場だ。

ということでオンライン飲み会を開くことにしました。

今回のメンバーはよく喋る人もいれば、どちらかというと人見知りするタイプもいましたが、みんな他の人に興味を持てる人ばかりだったので、主催者としてはとても助かりました。


ちょっとした落とし穴

と言うと大袈裟かもしれませんが、オンライン作品だからこそだと思ったのが、小道具のことです。

『音の世界』では電話を使います。
空間は3つに分けられていて、それぞれに電話が一台ずつあります。ト書きを除く5人の登場人物全員が電話機を使います。つまり電話が3台。
ですが、僕たちはオンラインでリモートのまま稽古も本番もやるので、5人の俳優全員が自分の電話機を持っていなくてはならないのです。

これには実際に稽古を初めてから気づきました。

90年近く前の話なので、スマホでも子機でもなく、黒電話の、本体は姿を見せなくとも、受話器が必要です。

このとき小川さんがすぐに小道具を作ってくれました。
壁掛け式電話の受話器のイメージを伝えると早速でした。

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身近にある物を加工して作れたので、芝居のなかで同じ電話を使うもう一人にも伝えてもらいました。

さて、その身近にある物とは何でしょう?(正解は文末に)

拳銃についても同様でした。本来、舞台で上演する場合は一丁で済みますが、今回は使用する二人の俳優に同じ物を用意しました。


もうひとつ、オンライン演劇ならではの問題


それは、タイミングを合わせるのが難しいことです。

それぞれの通信環境の違いもあり、どうしてもタイムラグが生じます。
そして、Zoomでは一度に拾える音がシステム上、一人に限られています。
音声を拾う権利が移行するのに時間がかかるので、同じタイミングで音を鳴らしていてもズレて聞こえてしまうのです。

『音の世界』では少なくとも、電話の呼鈴、銃声、ドアのノックの効果音が戯曲に書かれています。
セリフの後に効果音を鳴らしても、最初は聞こえなかったり音量が小さかったりして上手くいきません。他にある音声権が移行するまでのギャップです。

効果音を担当してくれたのも、小川さんです。
効果音の最初の方は捨てて早めに入れるなど、稽古で色々と試しましたが納得できる聞こえ方にはなりませんでした。
結局、効果音を入れるのは止めて、ト書きを読むことだけで表現することにしました。

『音の世界』という題名なので、その音をどう観客に提示するか、演出として考えどころでしたが、リーディング作品だったのでシンプルに言葉で勝負するのがベストと判断したのです。
この作品はラジオドラマにしても面白そうです。


さてさて、それでは問題の答えを・・・・・・。

壁掛け式電話機の受話器を作るのに使った物とは、






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でした!

百均でも売っている小さなサイズです。

全く同じじゃないけど、受話器の形と似ていますよね?
すぐに似た形の物を見つけてくれた小川さん、さすが演出部です。


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オンライン演劇 リーディング『音の世界』アーカイブ映像(6月30日までの限定公開)は ↓



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