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Amazon「Buy with Prime」~サービス開始から2年たった現在の状況~

2022年4月から始まった米Amazonのサービス「Buy with Prime」。

Buy with Primeとは、米国を拠点とするAmazon Prime会員が、迅速な無料配送、シームレスなチェックアウト体験、簡単な返品など、Primeショッピング特典を利用して、参加オンラインストアから直接買い物をすることができるサービスです。
参加オンラインストアで買い物をする際、各商品ページにある本来の購入ボタンの他に「Buy with Prime」ボタンが表示されます。

「Buy with Prime」ボタンが表示される例/出典:How to get fast Prime delivery even when you shop beyond Amazon(Amazon.com)

「参加オンラインストア」とは、Amazonのサイト画面ではなく自社ECサイトのこと。
AmazonのBuy with Primeに参加している企業は、自社のECサイトに決済ボタンを2つ(自社ECサイト本来の購入ボタンとBuy with Primeボタン)表示させることができます。

そして、そのECサイトでショッピングしようとしている購入者が米Amazonのプライム会員だった場合、購入者は米Amazon Primeの会員特典を利用して商品を購入することができる選択肢が増えるというわけです。

2022年当初、Buy with Primeは米Amazonとそのプライム会員限定のサービスでした。

その後、昨年、ライバルのプラットフォームであるShopifyと提携し、ShopifyからもBuy with Primeにコネクトすることができるようになりましたが、今現在、日本語版のShopifyのヘルプセンターでは、

あなたのストア
ストアはアメリカに拠点があり、米ドルで販売している。
ストアはアメリカ国内に配送している。

ShopifyでBuy with Primeを有効にする(Shopifyヘルプセンター)

…と、条件設定されているので、このサービスを利用できるのは未だに米Amazon Primeユーザーと、それをターゲットにするBuy with Prime参加販売者のみのようです。

さて、そんなBuy with Prime、サービス開始からちょうど2年がたちました。
現状を分析するレポートが公開されましたので、今回はそれを紹介します。



Buy with Primeはユビキタスではないが拡大中

Amazonが2022年4月にフルフィルメントとワンクリックチェックアウトのサービスを開始してから2年後、数千のブランドがBuy with Primeを採用した。

Buy with Primeは、プライム会員の買い物客がAmazon以外のEコマースサイトで買い物をし、Amazonアカウントを使ってチェックアウトすることを可能にする。つまり、Buy with PrimeはPayPalやShop Pay、Apple Payに代わるものではなく、チェックアウトボタンの中にある完全なEコマース体験なのだ。

2022年4月のサービス開始後、Amazonは最大のEコマースブランドのホスティングプラットフォームであるShopifyと統合していなかったため、サービスはゆっくりと成長した。2023年8月、アマゾンとShopifyは提携を発表し、数か月後の2023年11月にすべてのShopify加盟店向けのプラグインを開始した。それまでShopifyが加盟店に対して思いとどまらせることさえあった分かりにくい統合が、手間がかからず迅速に行えるようになったのだ。

Buy with Primeを利用する何千もの加盟店は、ほとんどがShopify加盟店である。ほとんどが既にAmazonで販売しており、DTCチャネルを立ち上げたり、既存のウェブサイトで決済の代替手段を提供するためにこのサービスを利用している。Buy with PrimeはAmazonの倉庫に在庫を置く必要があるため、Amazonに出店していないブランドが導入することはあまりない。

聞いた話によると、Buy with Primeはコンバージョンを増加させるらしい。大手小売店以外では、配送の見積もりは稀であり、Buy with Primeはそれを前面に押し出している。米国では数千万人がPrime会員であり、彼らにとって「Primeで購入すること」はごく当たり前のことなのだ。しかし、Amazon Payも同様だった。Buy with Primeは代替の支払い方法ではなく、フルフィルメント・サービスに結びついた決済方法なので、商品をより早く発送することは明らかではない。それは、最初の購入が翌日にAmazonの梱包で届けば明らかになる。しかし、この目に見えない利点が、より多くのブランドが試さない理由である。Amazonに在庫を送らなければ、フライホイールは回らないのだ。

出典:Marketplace Pulse

Buy with Primeの決済額はまだ明らかになっていない。数千のブランドは、Shopifyの数百万ものEコマースサイトの中のほんの一滴に過ぎない。導入から2年が経過したが、コンバージョン率の向上はまだ多くのブランドを納得させるまでには至っていない。導入は拡大しているが、このサービスは業界を席巻するまでにはなっていない。

Source:Buy With Prime Is Not Ubiquitous but Growing(Marketplace Pulse)

おわりに

なかなか手厳しいレポートでしたね。

Buy with Primeを利用することで、販売業者はコンバージョンを促進する特典を得ながら、顧客との関係やブランド・ロイヤルティを構築することができます。

昨年11月、AmazonはPrime会員向けの新たな特典として、無料配送追跡と無料返品を発表しました。Buy with Primeを提供するブランドも対象です。この中でAmazonは、「Buy with Primeは販売者の新規顧客獲得に貢献している」と述べるとともに、「最初の結果では、平均してBuy with Primeの4件の注文のうち3件が新規購入者からのものである」と強調しています。

しかし、昨年1月、AmazonはPrime Video、MGM Studios、Twitch、Audible部門におけるレイオフの発表に続き、Buy with Prime部門においてもレイオフを実施しました。Buy with Primeの従業員の5%未満に影響を与えたとCNBCは報じています。

Amazonの広報担当者は、「当社は定期的にチームの構成を見直し、ビジネスニーズに基づいて調整を行なっており、先日の見直しの結果、Buy with Primeチームにおいて少数の職務を廃止するという難しい決断を下した」と述べ、また、「Buy with Primeは依然としてAmazonの優先事項である」と述べ、同社はその開発に「多大なリソース」を投資し続ける予定であるとコメントしています。

個人的な意見として、Buy with Primeは決して悪いサービスではないと思うのです。
ただ、Amazonは「素晴らしいサービス!」と主張するばかりで、それに伴うきちんとした数字を出してこないこと、今年1月のBuy with Prime部門を含むレイオフ騒動があったことが、販売者側にとってはイマイチ信用に至らない点だと思います。
販売者にとっては、Prime会員購入者のためにAmazonへ在庫を保管しなければならないこともネックになっていることのひとつでしょう。

それに、自社のECサイトからAmazonやeBay、その他のビッグECモールへも出店したい場合は、CodistoやLitCommerceといったマルチチャネル販売用の出品ツールも今やあります。
Buy with Primeのような、ECモールからの手厚いスペシャルサポートはありませんが、Amazon Prime会員限定などといった購入者の制限もありません。

Amazon Prime会員は、世界で2億3千万人以上。そのうち米国を拠点とするAmazon Prime会員は推定1億6720万人で、会員の4人に3人は米国人と言われています。

米国をメインにサービスを展開するのは実に的を得ていますが、残り1億人弱の他国のAmazon Prime会員にもこのサービスの恩恵を受けられる日が来ることを期待して、今後も動向を見守っていきましょう。


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