見出し画像

「ぽっぺのひとりごと」(10) リハビリを終えて

右腕の付け根を痛めて、リハビリに通っていた。昨年の11月12日から今年の4月6日まで週1回、バスで10数分の所にあるクリニックに通った。
医師から、「痛み止めの注射と理学療法とありますが、どちらがいいですか。」と訊かれ、注射が怖い私は後者を選んだのだった。

割と小さな部屋にベッドが3台あり、そのうちの一つに横たわり、マッサージを受ける。担当のKさんは30歳くらいの男性。物腰が柔らかで明るい人。右腕を痛めた原因ーー4日間、朝から晩まで折紙を折り続けたことを話しながら、治療を受ける。

40分間のうち半分はマッサージで、残りの半分は教えてもらった動きを自分でやる。肩甲骨をぐっと寄せる運動を主に行う。Wの形とYの形。「家でもやってくださいよ。」と言われた。

「早めに来られて良かったですよ。」と、Kさん。「腕や肩が痛くなっても、四十肩だ、五十肩だとか言って、病院に行かない人が多いんです。いよいよになってやって来た時には、腱板断裂になっていて、手術が必要になるんですよ。」 ふーん、そうなんだ。

「お仕事上で嫌なことって何ですか。」と尋ねてみた。「僕の場合、患者さんに怒られたり怒鳴られたりすることですね。こちらに非がある時はもちろん謝りますけど、理由もなく、理不尽に怒り出す人がいるんですよ。」
へえー、大変だなあ。

患者さんへの注文は?「『この動き、お家でやってくださいね。』とお願いしても、やる人は1~2割です。直したいなら、ちゃんとやってほしい。」
はあー、なるほど。

ありがたいことに、右腕の痛みは徐々に薄れていった。8週間を過ぎた頃、治療は「痛みの軽減」から、筋肉を鍛え「機能回復」を積極的に目指すものへと変わった。

理学療法士さんはすごい。歯磨きをするのも苦痛だったのに、右腕を使いすぎなければ、日常生活に支障はなくなった。

ただ、私の趣味は右手を使うことばかりなのだ。文章を書く、手紙を書く、手製封筒を作る、人形の服を作る、折り紙をする、絵を描くなど、など。
「2、30分続けたら止めて、必ず休んで、また始めるようにしてください。」と言われているが、難しい。30分が、気が付くと2時間になっている。映画を観たり、音楽を聴いたりの時間を増やそうと思う。

最後の日、17回目のマッサージを受け、幅広のゴムを左右に引っ張ったり、右手で壁やテーブルを押したり、といった運動をし、いつものように終わった。

そこで私がジャジャーンと取り出した物は、Kさんへの感謝状と折紙のランドセル。彼は大変喜んでくれた。「気を使わないでください。」と言う彼に対して、「もう使いました。」と私が言い、二人で笑った。

Kさんは私に釘を刺すのも忘れなかった。「くれぐれも右腕を使い過ぎないように。折紙は1日2個までですよ。」





この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?