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トルコにとってどっちの人生が幸せだったんだろう。  山本さほさんと飼い猫トルコの「人生のifについて」

猫って、不思議な生き物です。言葉は通じないけど、感情が伝わってくる。でも、何年一緒にいても、わからない部分がある。あの絶妙な距離感が、わたしたちを惹きつけます。
「猫の日」に向けて、その魅力を味わい尽くしたい。この特集では、そんなあなたのために、作家さんやポプラ社メンバーによる「ねこがたり」を一週間にわたってお届けします。

■連載第一回目は、漫画家・山本さほさん。

noteで読んでいた『岡崎に捧ぐ』をきっかけに、山本さほさんの大ファンに。
ポプラ社での著作はないのですが、Twitterで見かける山本さほさんが描かれる、猫とのやりとりやエピソードに同じ猫飼いとして、いつも共感していました。
ぜひぜひ今回の猫にまつわる企画に参加してほしい!と思い、お声がけをさせていただきました。

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我が家の猫、トルコは14年前に神奈川の山奥にある田舎町で台風の日に拾った。

その時に私が住んでいた六畳一間のボロアパートの隣には、野良猫が大量に住み着いたボロボロの猫屋敷があり、ベランダから下を覗くとたくさんの猫が日向ぼっこをしたり何匹かの子猫が楽しそうに追いかけっこをしたりして暮らしていた。
トルコがその野良猫達の間に産まれたであろう事はなんとなく想像がつく。
たまにトルコの寝顔を見ながら、彼女は今幸せなんだろうかと考える。

野良猫の寿命は5年程度と短い。
もしあの台風の日に私と出会っていなければ、兄弟猫と自由に野原を駆け回り、暖かい日は日向ぼっこをして、寒い日は仲間と寄り添って、短くても猫として楽しく人生をまっとう出来たのかもしれない。
今はご飯には困らないし、ずっと暖かい部屋にいられて車に轢かれる危険もないかもしれないけれど、狭い部屋で駆け回る事も出来ないし、仲間も私一人だ。
それを保護してあげた。助けてあげた。と言い切る事も出来るけれど、なんだか私はそこまで強く言い切れない。
もしかしたら、寂しい思いをしているのかもしれない。家族に会いたいかもしれない。トルコにとってどっちの人生が幸せだったんだろう。そんな事を考えてしまうのだ。

そういう人生のifについて、私はよく考える。
自分の人生でも、あの時ああしていたら、この時こうしていたら、漫画家になっていなかったら、そんな事をよく考えては、いつも「まあどんな人生だったとしてもそこそこ楽しみをみつけてそこそこ楽しんでいるだろうな」という結論になる。
トルコが窓から差し込む光に当たりながらスヤスヤ寝ているのを見て、とりあえずたくさん美味しい物を食べさせてあげて出来る限り幸せにしてあげなければと思う。

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■山本さんおすすめの「猫本」

今回、山本さんにお気に入りの猫本を教えていただきました。80年代の猫漫画の金字塔「What's Michael?」。世代を超えて、猫好きに愛され続ける作品です。

■プロフィール

漫画家 山本さほ
1985年生まれ。幼少時代からの親友「岡崎さん」との友情や子供時代の思い出を描いた自伝的作品『岡崎に捧ぐ』をウェブサイト「note」に掲載し、大きな話題になる。その後、2015年より『ビッグコミックスペリオール』で『岡崎に捧ぐ』の連載を開始。2018年、同作は単行本5巻で完結した。
現在、『きょうも厄日です』(文春オンライン)、『無慈悲な8bit』(週刊ファミ通)連載中。