柴田ゆうが描く『かたあしだちょうのエルフ』ーー大人の読書感想画展#7
今回ご登場いただくのは、柴田ゆうさん。
イラストレーターとして活躍され、大人気シリーズ「しゃばけ」(著・畠中恵/新潮社)、『花のお江戸で粗茶一服』(著・松村栄子/ポプラ社)をはじめ、多数の作品の装画・挿絵を担当されています。
そんな柴田ゆうさんが今回、選ばれた絵本は『かたあしだちょうのエルフ』(文・絵/小野木学)。1970年の刊行以来、課題図書にも選ばれ長く読み継がれているロングセラー絵本です。
(あらすじ)
アフリカの豊かな草原で暮らすだちょうの「エルフ」。わかくてつよくて、すばらしく大きなエルフは、こどもが大好きです。
けれどある日、なかまの鳥や獣たちを守るためにライオンと戦い、片足を失ってしまいます。
生活がままならないエルフは、次第に草原の仲間たちとも疎遠になり、体も徐々に弱っていきました。
そんなある日、こどもたちが今度は黒豹に襲われます。
こどもたちを守るため、最後の力を振りしぼって戦うエルフ。
黒豹があきらめて去ったとき、こどもたちがエルフのほうを振り返ると、そこにはエルフそっくりな、りっぱな木がはえていました。
エルフは木に生まれ変わり、その涼しい木陰で、動物たちは楽しく暮らしたのでした……。
己の危険をかえりみず、こどもたちを助けたい一心で立ち向かうエルフの姿は、世代を超えて読む人の心に深く訴えかけてきます。バオバブの大樹から着想を得たという、力強い木版画の表現も印象的な作品です。
今回柴田ゆうさんは、そんなエルフが守った世界、エルフが木になった後の世界を創造して描いてくださいました。
(絵をクリックすると大きく表示されます。スマホの方は画面を横にするのがオススメです)
ー柴田ゆうさんの作品とコメントー
『かたあしだちょうのエルフ』との出会いは小学校の図書室。動物が出て来る本を片っ端から読んでいて、たまたま手に取ったのがきっかけでした。
迫力のある版画で語られる強く優しいダチョウの物語。その衝撃的な展開に鼻をすすりながら本を閉じたのを覚えています。
ずいぶん歳を重ねた今あらためて読んでみると、あの頃思い描いた悲しく寂しい情景とは異なるものが見えてきました。
ラストシーンから何十年、もしかしたら何百年後かもしれません。名前も元の姿も忘れ去られ、ただそこに立つ木。渦巻文様で表現した大木の周囲には、絵本に登場した生き物の子孫が家族や仲間と平穏なひとときを過ごしています。
強い者弱い者の区別なく、見守り共にいるエルフの幸せそうな姿をいつまでも見られますように。そんな願いを込めて描いた絵です。
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学生時代から動物、とくに鳥がお好きで、動物園でスケッチをされていたという柴田さん。今回はそのご経験ももとに、それぞれの動物たちの姿を生き生きと、温かく描いてくださいました。
ふだんの江戸風のタッチではなく、アクリルガッシュを用いた「面」が印象的な今回の表現も、とっても新鮮で魅力的です!
ダチョウや草食動物だけでなく、肉食動物の親子も同じように木を囲んでいる点に、柴田さんの温かさも感じます。動物の親子がみんな、こんな柔らかく穏やかな表情をしていることを知ったら……きっとエルフも安心しますね。
柴田さん、素敵な作品をありがとうございました!
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『かたあしだちょうのエルフ』内容が気になった方は、こちらの記事でもご紹介しております! ぜひご覧ください。
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