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知っているようで知らない「関ケ原の合戦」を、3分で解説に挑戦

先日刊行になったポプラ社の人気シリーズ「コミック版日本の歴史」の79巻目『戦国人物伝 小早川秀秋』。旧暦の10月18日(新暦12/1)が小早川秀秋の命日といわれているそうです。この本の担当編集が新刊の紹介で何気なく社内のポータルサイトにあげていた内容が大変面白く、戦国時代にこんな人が!?と社内でも話題になったため、早速note記事にしてもらいました!

書き手:勝屋圭 主に学習実用関連の児童書籍を担当。過去にはnoteでサメ本について、こんな記事も書いています。

突然ですが、小早川秀秋(こばやかわ ひであき)という戦国大名をご存知の方って、どれくらいいらっしゃるでしょうか。戦国大名の中では、比較的メジャーなのですが、どちらかというと悪い意味で知名度が高い人物です。

なにしろ「戦国史上、最悪の裏切り者」なんて言われちゃっています。

理由は、大変有名な「関ケ原の合戦」で、彼の行動が日本の行く末を決定づけてしまったから。今回、悪名高い小早川秀秋の伝記漫画を担当した編集者が、そもそも関ケ原の合戦とはどんな戦(いくさ)だったのか?を、往年の名作ドラマ「半沢直樹」シリーズ風にざっくり解説してみます。

※あくまで担当編集の見方ですので、優しい心でご覧ください…。

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▲現代なら大学生くらいで、もう一国一城の主でした。小早川秀秋です。

さて、この関ケ原の合戦、現代で言えば「巨大企業の後継者争い」だったと考えると、ちょっと分かりやすくなるように思います。

裸一貫から巨大企業「トヨトミグループ」を立ち上げた伝説的な経営者・豊臣秀吉会長の死後、グループ企業の社長でトヨトミ本社の執行役員も兼務する徳川家康と、秀吉会長の秘書からトヨトミ本社の総務局長にまで昇りつめた石田三成は、それぞれ派閥をつくり、グループの経営方針を巡って激しく争うのであったーー

みたいな感じです。
(歴史に詳しい方から「たとえが雑!」と怒られないか心配ですが、話を進めます)

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▲左上にいるのが徳川家康、その下が石田三成です。家康は一筋縄ではいかぬ感じ、三成は冷徹な官僚タイプに描かれることが多いです。

で、三成派(西軍)が家康への問責決議案をぶち上げた役員会議(関ヶ原の合戦)で、三成支持を約束していたグループ企業の若社長にして秀吉会長の義理の甥・我らが小早川秀秋が、突然家康派(東軍)支持を表明。三成派だったはずの役員数名もこれに続き、三成は逆に解任・追放されてしまうのです。

家康は、三成の社内クーデター計画を事前に察知し、抜かりなく三成派閥の切り崩し工作をしていたんですね。
かくして家康はトヨトミグループを完全掌握。やがて組織を改革し、自らを会長とするトクガワグループに生まれ変わらせるのでした。
(江戸幕府を開いたあたりの話のつもりです)

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▲三成派でクーデターの首謀者の一人、大谷吉継役員。秀秋に対して「三年以内に必ず祟ってやるぞ!」と言ったという逸話があるくらい、怒っています。

と、こうして関ケ原の合戦の顛末を書いてみるとやっぱり「秀秋、ひどい…」と思われるかもしれません。ただ、

●秀秋は当初、「ゆくゆくは自分の後継者に」と言われて入社したのに、秀吉会長に息子が生まれると、用済みとばかり子会社に飛ばされていた

●子会社である小早川商事には家康を推す者が多く、下手をすれば会社分裂の危機だった

小早川商事の部下が水面下で家康とつながっていて、秀秋を差し置いて話が進んでいた

という、知られざる内幕がーー。

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▲何十歳も年上の役員たちに、決断を迫られる秀秋社長。なんとこの時、20歳そこそこ!

秀秋は自分の会社の従業員(家臣や領民)を守らなくてはならなかった。そして、どちらにつくにせよ、派閥争いに敗れれば、それはかなわない。義理を通して死ぬか?汚名を背負って生きるか?というギリギリの葛藤が、秀秋の中にあったのです。普通の人なら、プレッシャーに押しつぶされて出家しちゃうであろう究極の決断だったことでしょう。

などと、関ケ原の合戦の解説と言いながら、後半は小早川秀秋の話ばかりしていますが(そしてタイトルにあった3分はとうに過ぎたかも知れませんが)、伝記漫画を作るにあたって、知れば知るほど魅力ある人物だったのです。
そんな秀秋が病で亡くなったのが、関ケ原の合戦の2年後、10月18日(旧暦)。戦のあと、秀秋が何を思ったのか、うかがい知れる史料は多くありません。数え年で21歳という若さでした。

とかく戦国武将というと、野望や揺るがぬ信念をもったヒーローとして描かれがちです。一方、ポプラ社のコミック版日本の歴史『戦国人物伝 小早川秀秋』での秀秋は、どこまでも等身大で、落ち込んだり迷ったりしながら、それでも何とか前を向いて頑張ろうとするのです。これまでにない戦国武将像を見ていただける一冊になったかと思いますので、もし関ケ原の合戦と小早川秀秋の生涯に少しでも興味を持たれたなら、ぜひご一読いただければと思います。

↓のサイトの「新刊紹介」から、立ち読みもできますので、あわせてご覧くださいませ。