「どの資料の話をしているか」を画像やリンクで明確にしよう

リモートコミュニケーションにおいて散見されるのが、お互いの認識を擦り合わせないまま、話がだらだらと進んでいってしまうこと。
「画面やURLを貼る」「画面を共有する」。こうしたひと手間を惜しまないことが、誤解を生じさせず、時間を効率的に使うことにつながります。

お互いの認識を擦り合わせずに、議論しようとする場面が多い

少し前に、私が管轄するチームのメンバーがほかの部署のメンバーと話している中で、「セミナー後のアンケート回答に対して、どんな風にフォローアップしていくかを相談したい」といった話題になりました。チャットだったので2人とも文章でいろいろ言っているんですが、実際のところ、話があまり擦り合っていません。言っている側が「これこれ、こういう話です」と言っても、「なんの話ですか?」というように、回答がズレている…。その後、聞いている側が「アンケートって、このことですか?」と画面キャプチャーして送ると、その瞬間に「ああ、その話です!」と、話が伝わってすぐに解決にしました。

これは、ほかのメンバー間の話でも結構よくあること。例えば、「資料のこの部分が、ちょっとわからなくて」という場合も、言っている側は頭の中に資料があるから特に画面を出さずに話し出すわけですが、聞いている側からすると、「たぶんあれだろうけど、違うかもしれないな」となりがち。そもそも、作った本人でなければ、細かい資料のことなんて覚えていません。

また、「あのリストのこの部分に追記してもいいですか?」とチャットに文章で書いてくる人がいますが、「あなたは今作業していて、その場面を見ながら言っているからわかると思うけれど、聞く側からしたら、どこの話なのかわからないよね」となります。よほど記憶力がよかったり同じ時間を過ごしていたりしたら、言葉だけでもピンとくる時もあると思いますが、そうではない時もあることに気づかず、このように表現してしまう人も多いと思っています。

自分が思っているように相手に伝わる可能性は、すごく低い

私は新卒の段階からずっと、「ユーザー支援で物事を改善しよう」といったUXの領域に携わってきました。その重要なプロセスの一つが、プロトタイピング。プロトタイプとは、「試作品」や「作りかけのもの」というイメージです。
例えばウェブサイトだったら、最初からしっかりデザインするのは大変なので、まずはこういうコンテンツが入っているなど大体のイメージをパワーポイントで出して、それをユーザーに見せてみます。「こんなサイトがあったらどうですか?」と、実際に作る前に検証するという考え方・やり方のことをプロトタイピングと言いますが、これをよくやっていました。

このプロトタイピングが、なぜ重要か。それは、言葉だけだと、抱くイメージがみんな違うから。例えば、仮に「旅行サイトのような、子どもの習い事が探せるサイトがあったらどうですか」と聞かれたとします。インタビューでは「それいいですね、便利そうですね」といった反応をされるケースが多く、これで「旅行サイトみたいな習い事サイトは価値がある、やるべきだ」という論法で話が進むことが多いですが、実はここにすごい落とし穴があるんです。

それは、「旅行サイトのような習い事サイト」とはどういうサイトか、話している人と聞いている人の想像はおそらく違うという点。人によっては、日程調整ができたり最安値が探せたりすることを思っているかもしれませんし、地図や地域を選べること、プランがたくさん並ぶこと、などと思っている人もいるかもしれません。
このように、話した言葉が、自分が思っているように相手に伝わっている可能性は、すごく低いです。

ユーザ調査でプロトタイピングが重要な理由

ちょっと話は変わりますが、私が携わっているユーザ調査においてプロトタイピングが重視される理由について話していきます。

プロトタイプを作って「こういうサイトなんですけど」というのを可視化して出すと、「ああ、そういう検索画面ね」と、その瞬間に双方のイメージがバシンと揃います。話を聞いて全然わからないことでも、プロトタイプを使ってユーザーにぶつけてみると「これだと全然情報が足りないね」、「これだったら、クリックしないね」などという具体的な反応が返ってきます。

このように、自分が伝えたい物事や頭の中にあるイメージを相手にうまく伝えようとするときのツールとして、プロトタイプはすごく重要です。逆に、ツールを使わずに言葉で言っている以上は、いい反応が返ってきても、何がほしいのか実はわからないものです。想像でしかないものを聞いたとしても、想像しているもの自体がわからないと、あまり意味がありません。これはすごく重要な取り組みで、前職で学んだ最も重要なことの一つです。

手間を惜しまず、「画面やURLを貼る」「画面を共有する」

リモートワークでなくとも同じ課題はあると思いますが、チャットの場合は言葉だけでのやりとりだと余計わかりません。そんな時、「画面を見せてくれる?」と言われて画面を出すと、「あぁそこのことね。じゃあこうしたらいいんじゃん」などとすぐに話ができます。何の話をしているのかを具体的に画面に出すと、お互いの認識を明確に擦り合わせることができるのに、チャットでもオンライン会議でも、全然画面を出さないケースは本当に多いです。ここを強く意識して、画面キャプチャーをしたり、その場で画面共有したりするひと手間を惜しまないことが重要です。

また、特にリモートの場合は、ほとんどすべての資料にURLがついています。Googleドライブなど、クリックしたらその資料が開けるという感じで必ずアドレスがあります。このURLをチャットなどに貼ることも有用です。
質問する側は、質問される側も同じファイルが見られるという前提で話をしてきますが、質問された側がその資料を見にいこうとすると、Googleドライブをわざわざ検索するなど、何かをしなければいけない手間が生じます。質問する側はファイルを開いて聞くわけだから、チャットなどにURLを張ってくれればすぐに解決するのに、貼らない人がすごく多いです。URLがあるだけで何度もクリックする手間が省けますし、その場で回答できるなど問題をすぐに解決できる可能性が高まり、お互いにラクになるはずです。

ひと手間を意識するだけで、メリットたくさん!

メリット①自分も相手もラク
メリット②誤解されるリスクがない
メリット③質問される側の手間(作業負荷)が減る
メリット④回答の速度が上がる

言葉で説明しようと、文字でがんばろうとしてしまう人が多いですが、文字でがんばるより画像を効果的に使った方が圧倒的にラクです。例えば、「この場面のここなんですよ」とキャプチャーした画面に赤丸をつける、「このA列なんですよ」などと、画面があれば指示語が使えます。文章で「◯◯シートの◯◯の箇所」っていうよりも、はるかに表現がラクになります。

さらに、相手が見たときのことを想像してみてください。
質問される側は、いろいろなことをやっている中で特定のファイルの話をされても、ファイルを探しにいくのは手間ですし、そもそもどのファイルかわからないかもしれません。たとえファイルがわかっていても、どの箇所かパッと頭に浮かばないかもしれませんし、間違えるリスクもあります。そうした相手側の動きをイメージして、画面キャプチャーを撮って送ったりURLをコピーしたりするだけで、わかりやすく、さらに判断もしやすくなり、コミュニケーションの往復の回数が減ります。コピーするだけなら、5秒もかかりません。誤解なく伝わって相手もラク、正しい回答が得られて自分もラクで、いいことづくしです。「ごちゃごちゃとやりとりせずに、早くものを出す」というのが、すごく大事です。

「バグは起こるもの」という前提を意識する

すべての会議や議論、コミュニケーションの場においても、同じことが言えます。画面を出さないと、同じことを言っているのかわかりません。全然違う前提で話が進んでいて、結果的に「あぁ、間違えていました」、「違う資料を想像していました」となると、お互いに時間の無駄です。そうしたコミュニケーションバグ、あたかもあるトピックを話しているかのようで実はすれ違っているというのは、結構あるはず。

でも、画面キャプチャーやURLを貼ったり、画面共有を出したりすれば、同じものを見ているので、少なくともそんなことは起こりようがありません。そうしたひと手間を怠ると、絶対に議論が揃うわけがないです。「バグは起こるもの」という前提で、「どうしたら物事をスムーズに伝えて、なるべくラクにバグをなくするか」ということを意識して考えれば、当たり前のこと。「これですよ」というのを、言葉ではなくもので示していくのが重要です。この記事を読んで気づいた人は、積極的にどんどんデジタルの利点を使うべきです。それが自分のスタンスになると、自然と「仕事できる」ような印象になります。


「画面やURLを貼る」「画面を共有する」。残念ながら、できていない人が結構多いのが現実です。結果的にいいことづくしのひと手間、ぜひ意識してみてください。

→参考:オンライン会議では、積極的に「画面共有者」になろう

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