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春はイカナゴ(枕草子風)

2月下旬になると、神戸周辺の瀬戸内エリア民は、「今年はどうかな?」とソワソワする。

イカナゴ漁の解禁日と、今年は豊漁かどうか。

春はイカナゴ

くぎ煮の季節だねー🐟

実家では母が炊いていた。
お友だちが炊くようになって、自分も、と始めたようで、初めの頃は焦がしたり生臭かったりしたけど、何回か炊いて母は自信をつけた。くぎ煮どうしの物々交換もよくやってて、家には何種類もくぎ煮があり、「これは◯◯さん」「こっちは△△さんの」と食べ比べを楽しんでいた。
そしてある年、母は本格的に炊こうと思ったらしく、家族で明石の魚の棚まで生イカナゴ買いに行ってみた。
ところが、周りの人たちが、当たり前のように10キロ20キロと買っていくのを見てビビってしまった😅うちは買っても1キロ2キロくらいだったから…魚屋さんに言ったら「は??(何言ってんの??)せめて5キロからで」って言われた。
明石ってすごい街やなぁ、と子ども心に感心した。

そりゃそうだ。
板宿商店街なんか、この時期は街全体が醤油のにおいがする、といわれているくらいなんだから。ケタが違う。気合いが違う。

調子に乗った我が家だったが、まだまだ未熟者だと痛感し、反省して(?)それ以降はおとなしく、元通り近所のスーパーでささやかに買うことにした。

それでも毎年恒例行事で炊いていた母だったが、持病と加齢で体力が落ちてきた。
母自身は、弟と私の家にあげる分はずっと自分が炊きたいと思っていた。
気持ちはありがたいのだが、そのあとあそこが痛い、ここがしんどいという愚痴を聞く私の方が嫌になり、「そんなにしんどいなら、もう無理して炊かなくていいよ」と断った。
弟も私も、遠く離れた地に住むわけでもない。炊こうと思えば自分で炊けるし。
言われた母は不満そうだったが、それ以来くぎ煮を炊くのをやめた。悔しかったのか、実はホッとしてたのか、わからないけど。

でも食べられないと欲しくなるのが人間で、結局スーパーで生イカナゴが手に入るときは、自分でくぎ煮を炊くようになった。
子どもの頃手伝ってたから、炊き方のコツはなんとなく覚えている。

恐れずガンガン強火で
煮汁の温度が下がらないように、イカナゴを少しずつ入れる
アルミホイルで落とし蓋をする
箸で鍋の中を混ぜない
汁が少なくなってきたら、弱火にして蓋を使って3回くらい天地返しをする
勇気を持って煮汁なくなるギリギリまで炊く
ザルで濾したら、残りの煮汁は次回のタレに再利用
あれば、水飴や「黄金糖」を入れるとツヤテリが出る

それでも初めの頃は、火加減がわからず、母が作ったようなツンツンのくぎ煮にならなかった。
母も試食して「煮が足りない」と言っていたが、そのうちなんとかツンツンくぎ煮が炊けるようになってきた。
最後には母も「ふん、まあ、ええんちゃう」と言ってくれた(←あまり褒めない人なので、これでも褒めている笑)

慣れてしまえば炊くのはそれほど時間がかからないので、母が亡くなってからも、家族で食べる分はできるだけ毎年1回は炊くようにしていた。可能なら2回、運がよければ3回。くるみ入りとか山椒入りとかバリエーションも増やせるようになった。

なのにこのところ
生イカナゴが不漁で手に入りにくくなった。
あまりの高値で、漁の期間が短くて、諦めた年もあった。

今年のイカナゴ漁は3月1日解禁だった。
それほど豊漁ではなさそうだったので、きっと高値だろうなと思い、初日スーパーに偵察に行ってみたら、3,980円ナリ😳

…でしょうね…やっぱり高いなぁ…

それから数日リサーチを続け

…高いな😔

んー、まだまだ高いなぁ。
今年も無理かも…😢

と言いつつリサーチを続けて
ついにハンマープライス🔨💴🙌

あるスーパーで見つけて、速攻でカゴに入れた。
すぐ横で「あら、安くなったわね」とマダムも微笑んでおられた。
おっちゃんたちも何人かカゴに入れている。
みなさん、この値段を待ってましたね😌
ちょっと大きいかな?と思ったけど、とりあえずゲット。
よーし!今年も炊くぞ〜💪

うきうきワクワク帰宅すると、ご近所からも生姜醤油のにおいがする。
これこれ!このにおい!
きっとご近所でも少し安くなったイカナゴ買った人がいるんだわ(←勝手な思い込み🤣)
よーし、負けずにうちもバンバン周囲ににおいをふりまくわよー😆(←近所迷惑🤣🤣)

生イカナゴは水洗いしてザルで水を切り、その間に調味料を測って鍋に入れる。

我が家の分量は

イカナゴ1キロに対して
醤油250cc
料理酒100cc
みりん100cc
ザラメ250g
生姜せん切り50g

ブクブクと煮立ったら、パラパラとイカナゴを入れていく。
家中に生姜と醤油のにおいが立ち込めるので、換気扇は「強」。髪の毛もにおいがこもるから三角巾必須!
ご近所のみなさまー!我が家、ただいま絶賛くぎ煮制作中〜 !!!と看板出しているようだ。

30分ほど煮て煮汁が減ってきたら、弱火にして蓋をして天地返しを3回くらい。

ほとんど汁がなくなったら、ザルにあける。
本当は平ザルがいいんだけど、うちにはないので、普通のザルで😅

テリテリツンツンできあがり〜
思ったほど大きくない。
ちょうどいいサイズだ🙌
んー、春だねぇ🌸
ちょっと清少納言な気分で呟いてみる。

📝春はイカナゴ
ふつふつ白くなりゆく新子は
少しちぢみて
生姜と醤油のにおいが家中に広がりまくる〜

…おそまつさまでございました🙇‍♀️

さらに我が家は毎年これも欠かせない。

釜揚げ新子ちゃん❣️

イカナゴは期間限定だから、買うときはいつもサイズとお値段と睨めっこ。漁の解禁初日はお値段高いけど、魚は小さくて炊きやすくて食べやすい。日が経てばお値段は安くなるけど、魚は大きくなって、炊きにくくなるし五寸釘になる。でも釜揚げだとフワッと柔らかくて美味しい。

生イカナゴが高すぎて諦めた年も、これは毎年必ず買っている。娘たちも大好物。
釜揚げシラスとはまた違う食感なのよね。
ご飯にのせて食べるとこれも止まらない〜🍚
ほうれん草や小松菜と和え物にしたり、ちらし寿司のトッピングにしたりと大活躍‼️三つ葉と一緒に卵とじにしても美味しい✨✨

ということで♫
釜揚げ新子と、自家製くぎ煮と、お友だちからいただいたくぎ煮で
イカナゴ三種丼🐟

ご飯見えません🤣🤣🤣
でも美味しゅうございました🙏😋

あー、春だねぇ🌸

2月に梅が咲いて
3月初めにくぎ煮と釜揚げ新子
3月中旬過ぎたらホタルイカ
お彼岸の墓参りを済ませたら
桜の蕾もふくらんでくる。

我が家はいつもこうやって春を迎える。
人間界は今、いろんなことがあってあまりにも騒がしいけど
自然は、季節は、変わらず巡っていってほしい。

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