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短歌五十音

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「短歌五十音」は、中森温泉、初夏みどり、桜庭紀子、ぽっぷこーんじぇるが五十音順に歌人を紹介する記事です。毎月第一〜第四土曜日に更新予定。 画像は桜庭さんよりいただきました。
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2024年4月の記事一覧

短歌五十音(た)玉城徹『左岸だより』

短歌五十音(た)玉城徹『左岸だより』

このnoteは次の二部に分かれています。

1.玉城徹の歌集『左岸だより』の紹介(1400文字)
2.玉木徹の評論集概観(5300文字)

第2部はおまけです。気になるかたのみお読みください。

『左岸だより』玉城徹(1924-2010)は歌人・評論家。北原白秋に私淑。第四歌集『われら地上に』で迢空賞を受賞。現在はいりの舎が彼の歌集・訳詩集を販売しています。『左岸だより』はその一冊で、2020年に

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短歌五十音(そ)染野太朗『初恋』

短歌五十音(そ)染野太朗『初恋』

『初恋』は染野太朗の第三歌集。
恋人のいる「きみ」を思う、行き場のない主体の感情が繰り返し描かれる歌集である。

染野太朗は1977年、茨城県生まれ。高校在学中から作歌を始め、「まひる野」に入会。第一歌集『あの日の海』で日本歌人クラブ新人賞、第二歌集『人魚』で福岡市文学賞を受賞している。

恋の相手の言動によって一喜一憂してしまう心情が描かれる。
1首目、「きみ」のことをまた疑ってしまう。船は猜疑

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短歌五十音(せ)関谷啓子『関谷啓子歌集』

短歌五十音(せ)関谷啓子『関谷啓子歌集』

はじめに

今回紹介するのは砂子屋書房さんの現代短歌文庫164『関谷啓子歌集』です。
この短歌五十音を取り組むにあたって色々な歌人さんを探している時に関谷啓子さんのこの歌集と出会いました。
恥ずかしながらそれまでは存じ上げなかったのですが、歌集を読み終えたあと、心から出会えてよかったと思う歌集でした。

関谷啓子さんについて

関谷さんは新潟県出身の歌人さんで1996年に「短歌人」に入会されていま

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短歌五十音(す)鈴木晴香『心がめあて』

短歌五十音(す)鈴木晴香『心がめあて』

微妙な感情から逃げない短歌『心がめあて』は、2021年に出版された鈴木晴香さんの第2歌集。
鈴木晴香さんは、1982年生まれ。2016年に第1歌集『夜にあやまってくれ』(書肆侃侃房)、2023年に木下龍也さんとの共著『荻窪メリーゴーランド』(太田出版)。塔短歌会編集委員。『西瓜』所属。
本書は、2016年以降に詠まれた短歌のうち、297首を収録。

鈴木晴香さんの歌に使われている言葉は身近なものが

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