中森温泉

ex.中型犬。温泉になりました。

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  • 短歌五十音

    • 13本

    「短歌五十音」は、中森温泉、初夏みどり、桜庭紀子、ぽっぷこーんじぇるが五十音順に歌人を紹介する記事です。毎月第一〜第四土曜日に更新予定。 画像は桜庭さんよりいただきました。

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自己紹介

はじめまして、中森温泉と申します。 プロフィール1984年、新潟県生まれ。東京都在住。 2021年から短歌を作り始める。2022年から塔短歌会所属。 2022年、第2回あたらしい歌集選考会木下龍也さん10人10首選。 2023年11月、筆名を「中型犬」から「中森温泉」に変更して、人間になる。 インタビュー2023年6月公開。 ぽっぷこーんじぇるさんにしていただいたインタビューです。 これを読んでいただくと、中森温泉の考えていることがわかります。 主な作品インディーズ第二

    • 塔2024年2月号気になった歌10首⑩

      悪い遊びに悪い友だちはつきもので、休肝日の多さを不健康なものとして指摘する人は確かに悪友。しかし、悪友とする悪い遊びほど楽しいものがないのも事実である。 「きみ」は恋人だろうか。こどもがいないのに、その人のこどもの声が聞こえるのは、その人がこどもを持つ世界が主体の中で現実世界とは別にあるよう。「夜の霧」が象徴的で、夜というだけで十分闇深いイメージがあるが、そこにある霧となれば、よりもやがかかって、不確かになる。 秘められたイマジナリーブラザーの存在。日本は、内心の自由が憲

      • 塔2024年2月号気になった歌10首⑨

        「永遠に」という不可逆性のある強い言葉があり、命を食べているというあたり前のことにハッとさせられる。「ゆでたまご」「つばさ」が仮名でひらかれていることで、一首を見たときのバランスがきれい。 紫野春さんの連作から。「都市の底」と題された一連は、都会的な風景に垣間見える自然の姿や過去の記憶の風景が作者独自の視点・感覚でとらえられている。引用した歌は、遠くから草木に見えていたものに触ったときにフェイクグリーンであることに気づくという、人工的なものへのちょっとした違和感がある。最後

        • 短歌五十音(す)鈴木晴香『心がめあて』

          微妙な感情から逃げない短歌『心がめあて』は、2021年に出版された鈴木晴香さんの第2歌集。 鈴木晴香さんは、1982年生まれ。2016年に第1歌集『夜にあやまってくれ』(書肆侃侃房)、2023年に木下龍也さんとの共著『荻窪メリーゴーランド』(太田出版)。塔短歌会編集委員。『西瓜』所属。 本書は、2016年以降に詠まれた短歌のうち、297首を収録。 鈴木晴香さんの歌に使われている言葉は身近なものが多く、情景も多くの人の日常にありうるようなものが多い。 しかし、その言葉のスト

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        記事

          塔2024年2月号気になった歌10首⑧

          巨峰やシャインマスカットのような粒の大きい葡萄が浮かんだ。房になった葡萄から、粒の葡萄がもがれていく。葡萄は、食べられるために作られるものであり、粒ごとに分けられるのは運命でもある。はじめから決まっていた別離の場面であったとしても、別れの言葉をお互いに発することで、運命が少しだけ揺れる。 圧倒的な出来事は、言葉を尽くせば尽くすほど、その言葉は空虚に響く。下の句は、話者が、あるものを必死に「リアリティ」あるものとして語っているが、鏡がないことで、客観性を持っていないがために、

          塔2024年2月号気になった歌10首⑧

          塔2024年2月号気になった歌10首⑦

          シリウスは、冬の第三角形の1つであり、太陽を除いて地球上から見える最も明るい恒星。家族として迎えた大型犬がそれほどまでにまぶしくあかるく主体を照らす。比喩の常套句の「のような」ではなく、「よりも」が使われているところにパワーがある。 「狐狗狸さん」は、占いや心霊現象として知られているもので、筆者もこどものころに、五十音表に硬貨を乗せてクラスメイトが行っていた記憶がある。マウスから文字を入力しているのは、スクリーンキーボードを使ったものだろうが、ポインタが動いて一字一字選択す

          塔2024年2月号気になった歌10首⑦

          塔2024年2月号気になった歌10首⑥

          「検診」は、特定の病気を見つけるための検査。検診帰りに早速ハイボールを飲んでいる姿に、生きる力とちょっとした諦めを感じる。健康に気を付けたところで、病気になるときはなってしまう。ちょっとしたことに怒ったりするのはやめて、何もかも笑って済まそうという心持ちを見習いたい。 叶わないとわかっていても、心のどこかにこびりついてしまっている夢。主体は、そんな夢を晩夏に置き去って、身軽になって秋に向かおうとしている。「挑む」という言葉に妙がある。夢を真にあきらめるのはとても難しいのだ。

          塔2024年2月号気になった歌10首⑥

          塔2024年2月号気になった歌10首⑤

          はつらつとした印象で話をする中学生のボランティアとうつむきがちにその話を聞く主体の世代の人々の対比。「中学生ボランティア/歯切れよく話す/うつむきがちなりし/吾の世代」という独特なリズムもおもしろく感じた。 当たるも八卦当たらぬも八卦とはわかっていても、気になってしまう朝の情報番組の占いコーナー。「また」とあるところに、運勢の悪い日ばかり印象に残ってしまう主体の性を感じて共感。低いヒールで、災いの確立を下げようとする態度がいじらしい。 固定席のないフリーアドレスは、オフィ

          塔2024年2月号気になった歌10首⑤

          塔2024年2月号気になった歌10首④

          「たうぶ」は、古語で「食ふ」の謙譲語・丁寧語。姉の真似をして50回かき混ぜて、納豆をねばねばさせて食べている。「ねばねば」を「たうぶ(いただく)」という表現におもしろさがある。 アプリの地図が言うことを聞かない。下の句から、黄色に色づく樹々のあいまで巻き起こる風に翻弄されているような情景が浮かぶ。現在地を見失うほど、見渡す限りの黄葉に囲まれているような詩的な表現が魅力的。 ジンギスカンが手招きをしている。これは厳然たる事実であろう。肉厚だ。ほかほかだ。ジンギスカンを食べて

          塔2024年2月号気になった歌10首④

          塔2024年2月号気になった歌10首③

          「ブリブリと右手に響く」が独特ながら実感がある。太くしっかりした生地にあるジッパーが、重たい手触りとともに噛み合っていく感覚。「一つずつ」で読者の景の動きのスピードがコントロールされる。 いい。かに雑炊は、幸せの象徴だ。しかし、主体は、かに雑炊を買ったとしても救われない、またはかに雑炊が高くて買えないのかもしれない、それでも、自分以外の誰かがかに雑炊を買うことで救われることを祈っている。救済を叫ぶ主体の叫びは切実だが、「かに雑炊」によってその景により引き込まれる。 慎まし

          塔2024年2月号気になった歌10首③

          短歌五十音(け)建礼門院右京大夫『建礼門院右京大夫集』

          好きぴが、平家で、都落ち。「建礼門院右京大夫集」は、平安時代の末期から鎌倉時代初期にかけて生きた建礼門院右京大夫(けんれいもんいんうきょうのだいぶ)の歌集です。 歌集と言いつつ、めちゃくちゃ文章が添えてあり、日記文学とも言われており、建礼門院右京大夫の一代記でもあります。 この記事では、「建礼門院右京大夫集」を現代を生きる皆さまに親しみを持って読んでいただけるよう、超訳を添えるとともに、登場人物などについてもなるべく現代風にアレンジしていることをご容赦願います。 この歌

          短歌五十音(け)建礼門院右京大夫『建礼門院右京大夫集』

          塔2024年2月号気になった歌10首②

          「選ばれてない」ときに人は、自らの不遇を武器に、共感を呼び込み、反転攻勢をしかけがち。しかし、その羨望の対象となっている選ばれる側にも、内容は違えど懊悩がある。状況や時代によって、どちらにもなりうるフラットな世界で、不遇で頭がいっぱいなときほど、反対の立場にもあるものを冷静にとらえていたい。 いい。人望を手に入れたいというむき出しの欲望があふれる上の句。そして、人望の獲得に直接寄与することが考えづらいポールダンスの教室に出かけていく下の句。人はみな、複雑な欲望にあふれた生き

          塔2024年2月号気になった歌10首②

          日記(2024/2/24『キマイラ文語』を読む会に参加した)

          2024年2月24日(土) 6:30 起床。人がたくさんいるところに一定時間閉じ込められる予定があるので、せめてもの配慮として入浴。「私の体臭で人が死ぬことがありませんように」と祈りをささげる。 7:30 録画していたNHK短歌を見ながら、昨日書いた塔の気になった歌の評について、noteの編集画面で引用歌・作者名・評の文章のチェックする。 過去に引用歌や作者名を間違ってしまったことがあり、とても失礼をしてしまったので、時間をあけてチェックをすることにしているが、もし

          日記(2024/2/24『キマイラ文語』を読む会に参加した)

          塔2024年2月号気になった歌10首①

          たくあんをポリポリと噛む音が子供の話の合いの手になっているという楽しい景。主体がとりとめのない話に若干飽きてきていて、気を紛らわせているような感じがおもしろい。カ行・タ行の音が踊る上の句としっとりとした下の句の韻律もいい。 同じ会社内での異動は、本人にとっては大きな変化があっても、名刺上は肩書の一部がちょっと変わるだけでもらった人からはその違いがわかりにくい場合が多い。その微妙な感じを「味噌ラーメン」と「塩ラーメン」で例えているのが絶妙。私たちラーメン大好き一族にとって味噌

          塔2024年2月号気になった歌10首①

          【小説】カレーパンと獅子舞

          「自分、カレーパン、獅子舞で食べるタイプ?」 爆音でシューベルトが鳴り響くフロア。湯気の立っているシャンパングラスの玉露を揺らしながら、ランドセルを背負った女が身を寄せて話しかけてきた。俺は、咥えていたおしゃぶりをカウンターに置いた。 「そうだね。茄子はベンチに塗ってるかな」 「え、煮干し出身?」 「パッキン」 「千五百年前に聞いたんだけどさ」 「パッキン」 「ンジャスピ!」 「木星元気?俺、キャリーケースは液体でいきたんだけど」 「わかる。力づくでレモった

          【小説】カレーパンと獅子舞

          塔2023年12月号気になった歌10首⑩

          「腰」の漢字表記がいい。固さや歯ごたえという意味では「コシ」とカタカナ表記するのが一般的だが、人間の身体の一部を指す漢字が当てられることで、下の句の「溺れる」の描写のイメージがリアルになる。 ハローワークは、仕事を探している人が集まる場所。そこで大きな看板を掲げて求人をする介護士はよほど人が足りない、もしくはすぐに辞めてしまうので代替人員が必要になっているのだろう。描写は中立的であるにもかかわらず、現代の日本社会の構造的な課題をあぶり出している。 余裕こいてた叔父が窮地に

          塔2023年12月号気になった歌10首⑩