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短歌五十音

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「短歌五十音」は、中森温泉、初夏みどり、桜庭紀子、ぽっぷこーんじぇるが五十音順に歌人を紹介する記事です。毎月第一〜第四土曜日に更新予定。 画像は桜庭さんよりいただきました。
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2024年1月の記事一覧

短歌五十音(え)江田浩司『メランコリック・エンブリオ 憂鬱なる胎児』

短歌五十音(え)江田浩司『メランコリック・エンブリオ 憂鬱なる胎児』

※このnoteは次の三部に分かれています。

江田浩司の第一歌集『メランコリック・エンブリオ』の紹介。

タイトルの「憂鬱」から、憂鬱の近現代史を辿る。

タイトルの「胎児」から、江田浩司の現在を辿る。

第一部が独立しており、第二部、第三部は補論です。気になる方のみお読みください。

江田浩司『メランコリック・エンブリオ 憂鬱なる胎児』(2022, 初版1996)巻頭歌から見えてくるもの

たと

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短歌五十音(う)内山晶太『窓、その他』

短歌五十音(う)内山晶太『窓、その他』

一面に河原を覆うタンポポ。
主体はその景色を、眼を通して胸に写しとり、帰宅する。
静かで、おそらく電気のついていない自分の部屋のドアを開ける。
暗くさびしい部屋に一人で入る自分のために、主体は明るく長閑な景色を持って帰って来たのだろうか。

内山晶太『窓、その他』を読むと、生きることの寂しさが詠われつつも、人生に明るさを見出そうとする意思を感じる。
内山は1977年生まれ。
1992年より作歌を

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短歌五十音(い)石川啄木『啄木歌集』

短歌五十音(い)石川啄木『啄木歌集』


この記事について

石川啄木の歌集で印象に残った歌を挙げ、いくつかの歌をピックアップし、感想を交えながら紹介していく記事となっております。
今回は岩波文庫『新編 啄木歌集』久保田正文編
から引用した歌を紹介します。

石川啄木に対する個人的な印象

みなさん啄木にどのような印象をお持ちでしょうか?
私が生まれて初めて読んだ啄木の歌はこの歌でした。

そのあとも啄木の寂しくて悲しい歌とばかり出会い

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短歌五十音(あ)相原かろ『浜竹』

短歌五十音(あ)相原かろ『浜竹』

感情の動きを発見する。

『浜竹』は、2019年に出版された相原かろの第1歌集。
相原は、1976年生まれ。2005年から短歌の投稿をはじめ、2006年から短歌結社「塔」に入会している。
本書には、2006年から2017年までの401首が、Ⅰ(2006~2010)、Ⅱ(2011~2014)、Ⅲ(2015~2017)の3つの章に分けられて収録されている。

私がこの歌集を知ったのは、砂子屋書房の一首

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