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【詩集】サンデー・ピープル

「Dog」

おれは犬である
家でじとーっとしては
黄色くなった壁紙を眺めている
夢を見る
蝶々がおれに話しかける
人間になりたいか、と
否。と答える
おれは人間の苦悩を見過ぎたのだ


「神経症」

このところのおれは
沼に棲む生き物になっている
頭が常にうるさい感じなんだ
君はおれに話しかけてくれた
それでなんとか笑顔になれた
この亡霊がいなくなってくれたら
君と一緒に行けるのにな


「四月三十日」

四月のにわか雨はプールの消毒剤の匂いがする
そば屋でかかっている変な音楽
生まれたばかりの蜘蛛は
プチンと潰されてしまった
心地よさがなくなってしまった気怠さ
もうそろそろだよ
春はおれには来なかった
夏よ、早く来てくれ
おれが溶けていなくなる前に


「兎」

イラストから抜け出して
草を喰む
小屋はもううんざり
人間に耳を掴まれて
最低の気分
飼い犬が威嚇してくる
無視して
大好きな野原を探す旅に出る


「電車」

高架下を歩く
ガタンゴトンとうるさい音
昨日のおれが電車に乗っている
どうも今日は夜が暗い
トンネルの暗闇に自分が一体化するような
感覚に陥る

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