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【創作】 初デート

ニートの私は近所の古本屋に良く通っていた

気になるアイツがいた。

いつもレジにいるアイツ

背が高すぎて、天井に頭がついて首が少し曲がっている

前髪は長すぎてアイツの目は私も一度も見たことない

それにしてもアイツが気になったので、
私は前パチスロでたまたま勝ったお金があるから
官能小説を1256冊レジにズドーンと置いてみた

でも天井には届かなかった
文庫本サイズだからかな
それにしてもアイツ身長高いな

古本屋初となる無料のトラック運搬サービスで我が家に1256冊の官能小説が届いた。尚、1冊も読む気は無い

母親に、
「こんなにも官能小説を買う娘に育てた覚えはありません!!」
とわんわん泣かれ、
ついには追い出された

渡された千円で何をしろと言うんだ。こんな真夜中、いくらニートの私といえども危ないぞ。いや、ニートは関係ないか。私は画家になりたかったんだけど、うちの父親が自らの血をデカいキャンパスにぶっかけると言うアート作品を作ろうとして死んだ。血を出しすぎて。
アホだろ。アイツ普通に会社員だっただろ
急に尖り出して死ぬなよ
この話を思い出す度、いつも私は小学生の頃究極にナイフで削ってぴんぴんに芯を尖らせたあの鉛筆を思い出す
アレってすぐに、ポキって折れたんだ
尖ると、すぐ折れるんだ
人間と同じだ。
親父は、あの鉛筆だ

そんな訳で母はノイローゼとなり、進学が決まっていた美大にもやむを得ず辞退。国からのお金で暮らしている今。千円で人生を渡れないことくらい私も知っているよ

夜道を適当にフラフラと歩いていると、
レジのアイツが公園のブランコに座っていた。

こんな真夜中に?変な奴だ

ザッザッと足で砂をかき分け、無言で隣のブランコに座った

「よう」

声を掛けてみた

キィ…と軽くソイツがブランコを漕ぐ

「バイト、辞めました。」

「え?」

「バイト、辞めました」

「何で?」

「貴方が1257冊も官能小説を一気買いしたから、一気に客層が減り、店が潰れたんです。」

「いや、私が買ったのは1256冊だけど、
あの古本屋、官能小説で経営保ってたの?」

「…」

「つまんな」

「謝ってください」

「嫌だよ、客として店の商品を私は買っただけだから、
私はなんにも悪くない。」

ソイツは、青いクシャクシャのレジ袋から1冊の本を取り出した

「官能小説じゃん」

「はい。失業手当てだって店長がくださいました」

「…読むの?」

「読めません」

「ああ、色んな感情が絡まって?」

「いえ、まずタイトルが読めません」

「老眼?」

「いえ、漢字が読めないんです」

「女教師バトルロワイヤル2 だよ」

「あぁ…」

「店長もせめて1やれよ」

「貴方が、あの店にある官能小説を、全てお買い上げされたので…」

「ふーん。じゃあ、これだけ残ったんだ。
1はうちの家にあると思うけど、どうせ今頃母親が燃やしてるよ」

「はあ」

「貴方の家は何か今物燃やしてる?」

「いや、全然」

「じゃああんたの家行くわ」

近場の古びた小さなアパートで、私はこんなにも簡単に人の家に入れるのかと思った。知り合いでもないのに。

「ダンボールしかないじゃん」

「…まあ、金欠なので」

「バリカンある?」

「え?あ、ありますけど…」

「何であるんだよ。先に家具買えよ」

ソイツはゴソゴソと探し、
私の掌の上に黒いバリカンをポンと置いた

「…何で1番高いやつなんだよ」

「え?」

「いや、私の父親元々家電量販店で働いてたからさ、そこら辺は詳しいんだよ」

「そうなんですね…」

私は勢いよくそのバリカンで、前髪から後ろ髪まで一気に刈っていった。

「へ?!」

「この部屋に鏡ないから分かんないけどさ、
多分私今外歩けない髪型してるでしょ?
だから、責任取ってよ」

「え?!」

「バリカンを私に渡したのは貴方でしょ?
そんな事しなきゃこんな事にはならなかったんだから」

「でも…」

「でもじゃないよ。私が外に出かけれる髪型になるまでは、この部屋に私も住むから」

「え、ええ…」

私は慌てるソイツの姿を見るとどうも愛しくなって、
ソイツの前髪を自分の歯で噛みちぎってやった

へへっ

こんな私でも、
ついにはコイツのお陰で笑みまで零れちまった

「一重なんだね」

「うっ(><)」

「イメージ通り。つまんないの」

ぽろぽろとソイツは泣き出した。昔飼ってた黒いゴールデンレトリバーを思い出し、ソイツの頭をわしゃわしゃと撫でる

「私も貴方を守るから、
貴方も私を守って」

照れ屋の私は、
めちゃくちゃ頑張ってそう言った






不器用過ぎる女の子を描いてみました。笑
関係ないですが、私もめちゃくちゃ照れ屋です(シャイ)☽
今日(もう昨日か)じいちゃんが誕生日だったんですけど、その日の夢でじいちゃんが死ぬ夢見てて、その人が死ぬ夢ってその人に1番死んで欲しくないから。らしくて、誕生日だってこと忘れてたのに(人の誕生日覚えるのめっちゃ苦手💦)
そんな夢見て、なんか、うわあー😃ってなりました。なんとも不思議。電話して、婆ちゃんも爺ちゃんも優しすぎて電話切った後泣きました笑



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