見出し画像

【超短編小説】HERO

 あるところにとても強い無敵のヒーローがいました。どんな悪い怪人もけちょんけちょんにやっつけてしまうのです。無敵のヒーローは悪い怪人にひどいことをされたので、誰にも自分と同じ思いをしてほしくないと思って、ヒーローを始めたのです。人々は無敵のヒーローを讃えました。子供たちは握手を求めました。無敵のヒーローは大人気でした。みんな無敵のヒーローのことが好きでした。
 そんな無敵のヒーローは今、怪我をして道端に蹲っています。いつものように悪い怪人と戦ったとき、怪我をしてしまったのです。無敵のヒーローの胸元からは血が流れています。人々は無敵のヒーローを助けませんでした。

「あれは無敵のヒーローじゃない」
「無敵のヒーローはあんなことで怪我をしない」
「どうして無敵のヒーローはあの程度のことで怪我をしてしまったんだろう」
「なんか思っていたのと違う」

 怪我をしてしまった時点でヒーローは無敵ではなくなりました。無敵のヒーローは無敵ではなかったのです。幻滅した人々は蹲るヒーローを道端の石のように扱いました。
 そんなとき、悪い怪人がやってきました。人々に悪さをしています。傷ついた無敵のヒーローは最早以前のようには動けません。
 人々は口々に言いました。

「どうして無敵のヒーローはこんなことになってしまったんだろう?」

気の利いたことを書けるとよいのですが何も思いつきません!(頂いたサポートは創作関係のものに活用したいなと思っています)