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【短編小説】ロボくんとぬーくん
ロボくんは電池で動くオモチャです。スイッチを入れると、目が光って、じーじー、ががが、と音を立てて歩きます。
ですが、今のロボくんは目が光らなくなってしまったのです。
ロボくんの目が光らないことに気がついたたーくんは、一生懸命それを隠しました。しかしある日、お父さんにロボくんが壊れていることがバレてしまいます。
たーくんはロボくんを捨てられてしまうと思って泣きました。ロボくんも少し泣きました。
するとお母さんが、オモチャのお医者さんのことを教えてくれたのです。
ダンボール箱のベッドでロボくんはお医者さんのところへやってきました。
さっそく明日、治療を受けることになりました。ふかふかのベッドに寝て、記念撮影です。ベッドの傍には折り紙のお花が小瓶に生けられていました。撮影された写真は、看護婦さんがメールでたーくんのお母さんに送ってくれます。
ロボくんの隣には、ずいぶんと具合の悪そうなぬいぐるみがいました。ロボくんがこんにちは、と挨拶をすると、ぬいぐるみは泣き始めました。
ロボくんは言いました。
「君も寂しいの? ボクも同じだよ。直してもらったら、またうんと遊んでもらえるから、頑張ろうね」
ぬいぐるみは言いました。
「ぼくはもう嫌だ、もう戻りたくない」
ロボくんはビックリしました。ここに来るのは、みんな持ち主に大事にされているオモチャばかりだったからです。持ち主と一緒にいられないことを悲しく思うオモチャばかりだったからです。
そのぬいぐるみは、本当にボロボロでした。うでとあしがなくなってしまって、顔もわたがはみでています。
ロボくんはぬいぐるみにぬーくんというあだ名をつけて、一緒におしゃべりをしました。
ぬーくんはロボくんの話を楽しそうに聞いてくれました。
ある日、ロボくんが「たーくんは、おそとに遊びに行くとき、僕のことをつれていってくれないんだ」と言いました。
すると、ぬーくんは言いました。
「それは大事にされているからだよ。おそとはとてもあぶないんだ」
そういえば、たーくんもお外でひざをすりむいて、半ベソをかいて帰ってきたことがありました。
「ぬーくんは、お外に詳しいね」とロボくんが言うと、
ぬーくんは悲しそうに笑いました。
ロボくんの目がまた光るようになったとき、
ぬーくんも、あたらしい「あし」と「うで」をつけてもらって、顔もキレイにしてもらっていました。
ふたりは、明日「退院」です。
ダンボール箱のベッドで眠っているうちに、もとのおうちに戻るのです。
ダンボール箱のベッドに入るとき、ぬーくんが言いました。
「ぼくも、たーくんのおうちのオモチャになりたいな」
ロボくんは
「そうなったら、ぬーくんとボクとたーくんとでいっしょに遊べるね!」
と、いいました。
ぬーくんがお別れをさみしがっている、と思ったからです。
その日の夜、
ロボくんは、ダンボール箱のベッドの中で、すすり泣く声を聞きました。
それはぬーくんの声でした。
「いやだよぉ、いやだよぉ……もう帰りたくないよぉ……、こわいよぉ、わーん、わーん」
ロボくんは、体を動かしました。
「たすけてよぉ、だれかたすけてよぉ……もう痛いのはいやだよぉ」
けれどもダンボール箱のベッドはびくともしません。
「うでをちぎられるのも、ジャングルジムにのぼるのも、一緒にブランコにのるのも、いやだよぉ……痛いのはいやだ、いやだよぉおお!」
ぬーくんの声はずっとずっと続いていました。
けれどもロボくんには、どうすることもできませんでした。
朝になって、もう一度夜になって、また朝がやってきました。
ダンボール箱のベッドが開きます。
「やったー! ロボくんだ!」
嬉しそうなたーくんを見て、ロボくんも嬉しくなりました。
目も光って、ぜっこうちょう!
玄関の向こうに、ぬーくんが「あぶない」と言っていた外の世界が見えます。お庭があって、その先には道路がありました。
その道路を、ぬーくんによく似たテディベアを持った女の子が駆けていきます。
そのぬいぐるみは砂で傷ついた目で、ロボくんを見つめました。
ロボくんはそれに、気づくことはありませんでした。
気の利いたことを書けるとよいのですが何も思いつきません!(頂いたサポートは創作関係のものに活用したいなと思っています)