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【第5章】猫に飼われたヒト 人間と猫 

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創作小説『猫に飼われたヒト』第5章をここからまとめて読むことができます→ 人間の使っていた言葉の表と裏。どう使うのが正しいのか、猫たちは葛藤する。そして動き出すフルーメンと、人間…
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#小説

【創作小説】猫に飼われたヒト 第43回 めおと

【創作小説】猫に飼われたヒト 第43回 めおと

秋晴れが心地よい日。事件は起きた。

「先生〜っ!」

アドはノックもなしにレックスの研究室に飛び込んだ。

本棚の整理をしていたレックスはびっくりしてアドの方を振り向いた。

「ど、どうしたんだい。そんなに慌てて」

「先生、わたしフォンスと喧嘩しちゃったんですぅー」

「そんなのいつもの事では…」

「わたし、とんでもないこと言っちゃった…」

そして涙ぐむアド。レックスも只事ではないと察した

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【創作小説】猫に飼われたヒト第42回 決別には秋がよく似合う

【創作小説】猫に飼われたヒト第42回 決別には秋がよく似合う

秋風が気持ちいい休日。

グッダは大学で公開講座をしていた。

月に数回しかない、一般の人向けに行われる特別講義。この日は特別に大学が開放される。

「皆さんもご存知かと思われますが、人間、特に我々が住む日本に生息していた日本人の歴史はとても古く--」

グッダが今日取り扱っているのは、日本人史。

グッダの専門である人間歴史学は学生にはあまり人気がないが、この日は大きいホールが数席しか空かないほ

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【創作小説】猫に飼われたヒト 第41回 煮付けとフライ

【創作小説】猫に飼われたヒト 第41回 煮付けとフライ

アニマ大学の第一食堂。レックスとグッダは共に昼食をとっていた。

レックスは好物のアジフライ定食。
グッダは日替わりランチ。今日はカレイの煮付け定食。

グッダは和食が好きだ。煮魚はグッダの好物。さかしグッダの顔は晴れない。昨日のミントとの会話が気がかりなのだ。

「…浮かない顔だな、グッダ」

グッダはほろほろと煮付けを箸で崩した。

「なあ、レックス」

「ん?」

「人の言葉は、どこまで信じ

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【創作小説】猫に飼われたヒト 第40回 揺らぐ午後のコーヒー

【創作小説】猫に飼われたヒト 第40回 揺らぐ午後のコーヒー

数日後、グッダはミントを喫茶店に呼び出した。

「ホット二つ」

「話ってなあに?」

「…分かってると思うが…」

「…ここ、懐かしいわね。初めて私があなたを連れ出したのがこの喫茶店だった。その時もコーヒーも頼んで…ああ、あの日は暑かったからアイスコーヒーだったわ」

「……」

「あのお友だち、レックス…先生よね?人間絶滅仮説で有名な」

「…そうだ」

「良かったわね」

グッダはミントの顔

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【創作小説】猫に飼われたヒト 第39回 決意のモーニングコーヒー

【創作小説】猫に飼われたヒト 第39回 決意のモーニングコーヒー

大学のカフェスペース。レックスがカウンターからカップを2つ、テーブル席に持ってくる。

「まあ、コーヒーでも飲んで落ち着くといいさ」

「ありがとう、レックス…」

「朝から大変だったな」

「騒がせてすまん」

「いや、いいんだよ。それにしても、困った人だね」

「……」

グッダの別居中の嫁、ミント。グッダは数年前に結婚したのだが、彼女の浪費癖、浮気性、虚言癖を理由に、結婚してすぐグッダが別居

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【創作小説】猫に飼われたヒト 第38回 グッダの嫁

【創作小説】猫に飼われたヒト 第38回 グッダの嫁

アニマーリア大学人間学部棟。
朝早くからグッダは自室で論文の添削を行なっていた。

ドアをノックする音。

鍵を開けてドアを開いた途端に抱きつかれる。

「久しぶりグッダ〜!」

「おい…!職場には来るなってあれほど…!」

「近くに用があったんだもの〜たまにはいいでしょ?」

「近くに用?どうせ朝まで呑んでただけだろ…酒臭い」

「えへへ〜」

別居中のグッダの妻、ミントだった。

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