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10、日本の少子化対策のやり方

ここから日本の少子化対策について論じる。欧米諸国では同棲から生ずる婚外出産が非常に増え、少子化という問題を解決する方法を結婚という要因に求める重要度は低下しているが、日本では結婚を経由せずに出産に至るケースは非常に稀だという。そして結婚したカップルの出生率である有配偶出生率は比較的安定し、むしろ1990年ごろより2005年のほうが増加しているのだ。一方年齢別の有配偶出生率は近年急速に低下している。これは結婚した夫婦は存外子供を一人以上作っているということと20代、30代の結婚適齢期の男女が結婚しなくなったということを意味している。確かに考えてみると日本では夫婦の間に必ず子供がいるというイメージが私にはあった。仮に私たちが30代で子供を持たない夫婦を見て思うのは意図的に子供を作らないという計画性ではなく、子供が欲しくても手に入らない個別的な事情があるのではないかと察するだろう。日本では子供は親の自由や労働を阻害する不要な存在ではなく「子宝」という愛を注ぐべき尊い存在として認識されており、昔からあった結婚したら子供を産むのは当たり前という社会通念が残っている証拠ではないかと思う。

現在の日本の人口学者の見解では少子化は、結婚している女性が以前より子供を産まなくなったという効果が3割、結婚適齢期の女性が以前よりも結婚しなくなった効果が7割であると研究で明らかにしており、日本では少子化の主因は若者の婚姻率の低さのほうが大きいようだ。便宜上この3割の要因を①、7割の要因を②と呼ばせてもらう。この二つのベクトル両方に作用するような少子化対策を実行すればある程度の効果が期待できる可能性が高い。

まず①の理由を2011年の人口問題研究所が行った第14回出生動向基本調査で予定子供数が理想子供数を下回る初婚同士の夫婦を対象に調査すると「子育てや教育にお金がかかりすぎるから」という費用面の回答が最も多かった。また同調査で25から34歳の未婚者を対象に②の理由を調査したところ男女とも「適当な相手に巡り合わない」という回答が最も多く次に「まだ必要性を感じない」という回答が両性とも多かったのである。男性で特徴的なのは「結婚資金が足りない」という回答が女性よりもかなり高く、一方女性は「自由さ気楽さを失いたくない」が男性よりも高い形となった。男女ともに金銭面が高い壁として立ちはだかっていることや女性は結婚や子育てに対する負担を現代になってより強く危惧しているようだ。女性が結婚や子育てを遠ざけることは晩婚を導き、晩婚は年齢に制限される女性の出産機会を減らすことになり出生率減少に直結する。そして明治からの見合い結婚や、女性は25歳になったら結婚しなければならないといった慣例(一例)が自由恋愛の先に結婚があるという考え方に置き換わり結婚市場の不平等性、狭隘性が強調された。見合い市場の衰退によって登場した自由恋愛市場は見合い市場ほどのパフォーマンスを発揮できず機能不全に陥っている。

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今年の3月、4月にコロナ禍真っ只中で暇なテルが書いた人口問題に関する論文じみた文章です。人口や少子化という概念を歴史的に分析し、主に人口と…

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