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突然現れたイケメンたち🇰🇭【スーパースターを目指すカンボジアの若者たち】第12話

🇰🇭リンとティー

ケンの事務所の出勤時間は、朝の8:30です。
みなさんご存知の通り、日本人って世界一、時間に厳しい国民性ですよね。
1分の遅刻も許されないけど、1分の残業はOK!みたいな感じなんでしょ?

ケンとレナもそんな日本社会の申し子ですので、カンボジア人が時間にルーズなことにしょっちゅうイライラしていました。
時間を守るって、厳しいなーと感じる一面もあるけど、合理的でもあるのよね。

事務所のメンバーにお給料を渡し始めてからは
「出勤時間に1分でも遅れたら笑顔で筋トレ!腹筋・背筋・腕立て10回ずつの刑」
という施策が実行されるようになりました。

(笑顔・罰→スマイル・パニッシュ と、みんなは呼んでいました。みんなネイティブではありませんので、文法の間違いは笑って許してネ)

その施策は思いのほか功を奏して、みんなは時間をちゃんと守って出勤!
キンは当時、自分のバイクが壊れると、兄貴分のコンのバイクに乗って出勤して来ました。
だけど、時間ギリギリになるとあっさりコンを裏切ってバイクから一人先に飛び降り、事務所に滑りこむのよ。

「俺、セーフ!!」

そしてみんなで朝礼をして、ランニングして、準備運動をして、ダンスの練習をして、歌の練習をする。
ケンの事務所ではそれ以外にも、いつかみんなが世界に羽ばたく時のために、一般常識の授業を取り入れ始めました。
基礎的な算数とか、理科とか、社会とかね。
まあ、レナが講師をやらされて、レナが解る範囲の事柄だから、大した授業じゃなかったけどね。

1日を終えると、ソヒャップが
「あなた、肩を揉むわ」
とノリにベタベタする。
「ありがとう、ベイビー」
ノリは可愛い女の子が大好きな男子だけど、ソヒャップの相手もちゃんとしてあげる(ただし無表情)。

そしてみんなで夕ご飯を食べる。
食べ終わった後は、ジャンケン。

「パー・シー・スー!!」←これ、カンボジアのジャンケンね。

このジャンケンは、食後の食器洗いは誰がやるか?をかけて行われます。
最初はレナとヘアンが食器洗いをやっていたんだけど、ケンが

「食事を作ってる人が当たり前に食器を洗うのはおかしい、ここは平等にジャンケンで決めよう。」

と突然言い出したのがキッカケ。

10人に近い人数の食器洗いはそれなりに大変なので、みんな物凄い形相でジャンケンに臨んでいました。ちなみに負けた2人が犠牲になります。

そんな毎日が続いていた頃、ケンの芸能事務所に「テレビ出演」の話が舞い込んで来ました!
ただし、出演できるのは選抜3人。
まだ学生で、日中は高校や大学に行かなくてはならなかったタタやノリは、残念ながら断念。
同じく、日中は他の仕事をしていたソヒャップも断念。

ここは、コン・キン・ヘアンで確定か?と思われたある日。

いつも通り、みんなで練習をしている事務所に、二人の青年がやって来ました。

「アタシ、ノリとは離婚するわ・・・」

「え?オレ、ソヒャップにフラれた?」

二人の青年の名前は、リンティー

リンは、ソヒャップじゃなくても、誰もが目を奪われるようなイケメンでした。
タタも、レナの腕を掴んで「かっこいい、かっこいい!」と覚えたての日本語をリピート。
(ちなみに、レナとケンは、みんなに日本語を教えたりはしませんでした。彼らを日本で売り出したいのではなく、彼らの国カンボジア・そしていずれは世界に羽ばたいて欲しいと思っていたからなの。日本語は日本人相手にしか使えない言語だから、世界で多くの人が話す英語でやり取りしていました。
でも、毎日のように一緒に過ごしていたので、お互いの日本語とクメールがちょっとだけ解るようになったのよ。)

筋肉質な身体にタトゥーが多め入っていたけれど、リンはとても物腰柔らかく丁寧な青年でした。

「初めまして。僕はリン。ここに芸能プロダクションがあるって聞いて来ました。僕もここに入りたいんです。」

「来てくれてありがとう、君はダンスが好きなの?」

「はい、ずっと自分でダンスを練習して来ました。踊ってみてもいいですか?」

リンが披露したダンスは、事務所のメンバーの誰もを上回る
ダンス素人のケンやレナでもわかるような
そう、リーダー・コンのずっと上をいくような
そんなダンスでした。

彗星のごとく現れたリンの存在に、ケンは運命を感じたほど。

「今日からよろしく。俺は厳しいけど、頑張って欲しい。」

リンは、バイクの修理工として働きながら、アメリカのヒップホップ文化に憧れてダンスの練習を始めたそうです。
そして、SNSでケンの事務所を見つけてくれた。

リンの加入は「スーパースターを目指す」事務所のみんなの夢に、現実味を持たせることになります。

誰もが認めるその実力と誠実な性格で、当然ながら怠け者のキンの評価を上回り、一定期間の練習を経て、コン・ヘアン・リンがテレビ出演を決めました。

テレビ出演の会場は、カンボジアの首都・プノンペン。
アンコールワットのお膝元・シェムリアップに残留メンバーは、キャーキャー言いながらテレビの前で3人のパフォーマンスを応援しました。私もね!

そして、リンと一緒にやって来たもう一人の青年・ティー。
彼もリンとは違うタイプのイケメンで、切れ長の目に、ムキムキの筋肉。
ティーはボディビルダーの仕事をしていて、並大抵ではない美ボディの持ち主でした。

実はこの時、ティーは友達であるリンに頼まれて、ケンの芸能事務所にリンをバイクで送り届けただけでした。
ところがどっこい!

「ティー、君も一緒に、ダンスや歌の練習をしなさい」

ケンは、てっきりティーも事務所に入りたいのだと勘違い。
言われるがままに、ティーは事務所のメンバーになってしまったのでした。

ティーはその見た目とは裏腹に繊細な神経の持ち主で、森や山、自然をこよなく愛する男。
釣りも得意、木材で何かを作るのも得意!

その後、ケンの事務所の殆どのものはティーによって作られました。
防音設備、スタジオの鏡、家具、などなど。

それに、ケンは「行ってきまーす」と家を出て、ほぼ100%の確率で忘れ物を取りに帰ってくるような男なんだけど、ティーの加入によってだいぶそれが軽減されました。

出張に行く前なんかも、ティーが
「はい、ケンちゃん。パスポート持った?時計持った?カメラ持った?充電器持った?」
と確認してあげるんです。

レナは常々、ケンのお世話が大変で、もう一人奥さんがいれば・・・なんて思うことがあったんだけど、ティーがその役目を担ってくれるようになりました。

レナ、良かったわねぇ。

実物が1番カッコいい、リン
シェムリアップ1の美ボディの持ち主、ティー

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