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陽気でお茶目なマネージャー🇰🇭【スーパースターを目指すカンボジアの若者たち】第10話

🇰🇭カンニャ

タタ、ソヒャップ、コン、キン、ノリ、ヘアン

なんとなくメンバーが固定化されて来たところで、ケンはマネージャーを雇うことにしました。

彼らを売り出したり、スケジュールを管理したり、仕事の指示を出すのは日本人であるケンではなく、彼らと同じカンボジア人の方が良いと思ったみたい。

それにはミッキーが適任だったけれど、カンボジアとオーストラリアを行き来するミッキーの穴を埋めるべく、ケンはもう一人のマネージャーを募集することにしました。


そのマネージャー募集の面談に来てくれたのは、タタのお姉ちゃん・カンニャ。

カンニャは日本語・英語・クメール語が話せるトリリンガルウーマンで、即・採用となりました。

カンニャの存在に日々助けられたのがレナです。

暑くて眠くて、なんだか気分がパッとしない日でも、30代前半にして疲労が取れない朝でも、カンニャが元気に「おはようございまーす!」と出勤してくると、今日も頑張ろうと思えたらしいです。

カンニャはみんなのお姉さん的な存在となり、チームをまとめてくれました。

ミッキーはオーストラリアで教育を受けていることもあり、カンボジア人が知らない事をたくさん知っています。機材の名前、音楽用語などなど。

その知識を活かし、物事の詳細を的確に通訳してくれたのがミッキーであれば、レナやケンの「気持ち」を通訳してくれたのがカンニャでした。


ノリは相変わらず毎日、事務所に来ているのに

「自分の夢は、あくまでビジネスマンである」

と言い続けていました。

流石に、みんなわかるようになってきました。
なぜノリは、毎日のように事務所に来るのか。
ノリは、歌もダンスも、大好きなのです。

本当は歌やダンスが誰より好きで、スーパースターになりたい!と思っているはずなのに、賢い反面、怖いのです。
だからいつも言い訳を連れて歩いているのね。

他メンバーが本気で「スーパースターになる!」と念じてレッスンに取り組む中でのノリのそんな態度に、いよいよケンがブチ切れます。

「お前、スーパースターにならないなら、何で毎日ここに来て無料でレッスン受けてるんだ」

「俺はただ・・・お母さんにビジネスマンになれって言われてるから。お母さんが望むように、安定した給料をもらえるようなビジネスマンにならなくちゃ。」

ケンの圧に、怯えながら話すノリ。可哀想に。

「お前、何でも母ちゃんのせいにするなよ。お前の人生なんだから、お前のやりたい事をちゃんと母ちゃんに話して、これからどうするのかハッキリ決めてこい!
それまでここには来るな、分かったな!」

ノリは落ち込みました。
私は、事務所の片隅で落ち込むノリの側にいたのだけど、そこにカンニャとレナがやって来ました。

「ノリは誰より才能があるのに、どうしてビジネスマンになりたいの?好きなことを仕事にしたくないの?」

「好きなことが仕事になるなんて・・・そんな事あるわけないんだ。」

「私ね、20歳になるまで、親にずっと医者になれって言われて育ったの。自分も医者になるつもりで勉強してきた。でも最近、気づいたんだよね。それって私にとってハッピーじゃないって。」

レナは、そんな二人のやり取りを傍観していたわ。
ノリはそんなレナに言いました。

「俺に数日、時間をちょうだい」


数日後。

ノリは英語塾の講師の仕事を辞めて、ケンの事務所に戻って来ました。

スーパースターになる、その覚悟を胸に抱いて。


カンニャがノリを説得したこの日は、後にケンの事務所にとって大きな大きな柱となりました。

崩れそうな時、みんなを支える太い柱に。


ノリのお母さんは、スーパースターを目指すノリのことを幸せそうに応援してくれました。

ケンやレナのことを信頼して、事務所のみんなを大事にしてくれたノリのお母さん。

ケンとレナを含めた事務所のメンバーたちは、なぜか年越しはノリの実家で過ごすようになりました。

ノリのお母さんだけでなく、お父さん、お兄ちゃん、妹さんとの交流が、あれから何年も経った今でも続いているのは、きっとカンニャのおかげです。

ちなみに当時のカンニャは酒乱で、酒に酔うとタチが悪かったです。目つき変わってました。

あと、バイクで暴走癖がありました。
レナはカンニャのバイクの後ろに乗って、無駄な大ジャンプを経験したことがあります。

暴走ドライバーのカンニャ

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