「ちょっと待ってくださいよ〜」と言うようになってしまった
芸人という職業を始めてかれこれ十数年ですが、いつのまにか上から目線の大人とか知らないおじさんとかにヘラヘラ笑いながら「ちょっと待ってくださいよ〜」と言えるようになってしまった。
大阪の養成所に通ってた20歳の時に、1ヶ月くらいだけ、ダーツバーみたいなところでバイトしたことがある。
ボーイみたいなことをするのかと思えば席に着いて、おじさんと若い謎のギャルと話をしなければいけなかった。
店のマネージャーに言われたので、仕方なく片膝立てて、将軍の命令を聞く忍者の姿勢で話をした。
灰皿の交換とか、他人に酒を注いだ経験もないので、それなりに緊張する。
マネージャーから「彼芸人をやってるんですよー」という話題になり、まぁまず言われるのが「なんかおもろいことやってー」
これはやっぱしキツイ。
何をやったか忘れたけど、まだまだペーペーの半熟にもなってない生卵芸人。今考えばつまらないことをしたんだと思う。
ギャルは、ぼくに「全然おもんないし!」
そりゃまぁ仕方ない。面白くなかったと思う。
「ああ、そうっすか」と心ない返事を返すぼく。
一丁前に尖ってる。
「私の方がおもろいし!」
「じゃあなんかやってくださいよ」
客に無茶振り返しする接客0点の対応。
「コマネチンコ!」
「なんすかそれーゲラゲラゲラ」
ギャルのギャグで爆笑するマネージャーとおじさん客。
コマネチンコの動きは、コマネチそのまんま。
それを黙って笑うでもなく怒るでもなく、表情のX軸、Y軸があれば中心にあたる虚無の顔で見るぼく。
何も考えてない時の顔。
風呂上がりにホッと一息入れて、次何するか考えてる時に一瞬だけする顔の筋肉のブレーカー落ちてる顔。
お前、木とぶつかって体入れ替わったんか!って言われそうな顔。
そんな無表情でただただ時間が過ぎることだけを願っていた。
そういうのが嫌で結局そのバイトもすぐに辞めてしまった。
それから十数年。
たまにバーでバイトすることがあります。
今もたまに「お前つまんねーよ!」とか「俺の方がおもしれーよ!」とか言われることはあります。
そう言われたら「ちょっと待ってくださいよ〜」というようになりました。
というか、なってしまいました。
別に無理に接待してるつもりもないんですけど、なんか、まぁ楽しんでもらえたらいいや!と思えるようになりました。
あと、そういう人は、ツッコまれたら喜びます。
ツッコんだら、それでゲラゲラ笑ってくれます。
気分良く飲んでもらえたら、それでいいと思います。
こういう時は大人になったのかな思います。
楽しんでお酒を飲むのは、ぼくも好きなんで。
夏ですね スイカでも食いたいもんですわね