日本翻訳大賞でいただいた感想から〜情報の公開について

日本翻訳大賞にチャレンジしています。2022年中に刊行されたベスト翻訳書を決める賞。1月31日まで、どなたでも推薦することができ、読者推薦の上位10点が二次選考対象となります。もしよろしければひとこと推薦コメントとともに、ぜひご推薦ください。(いつの時点からか、googleでのログインが不要になっているので、ぜひお気軽に。)

賞そのものは非常に狭き門なのでどうなるかわかりませんが、翻訳者にとっては、読者の方からのもっぱら「翻訳」に関する感想が読めるのはとても励みになります。作品の感想はあっても、なかなかそういう機会ってないですからね。公開されているのがすべてではないそうですが、一つひとつ、本当に嬉しく、何度も読み直しています。感想をお寄せくださった方はもちろんですが、このような貴重な機会を設けてくださっている運営の方々にも心から感謝しています。ありがとうございます!

ところで、ある方の感想の中で、「関連資料のweb上での公開、商業出版と並行した同人誌の出版」などについても触れていただきました。このことは阿部大樹さんとのトークでも話題になったのですが、影響源について申しあげておきますと、前者(資料の公開)については、わたしが勝手に私淑する立岩真也さんの姿勢(→http://www.arsvi.com/ts/0.htm)や勤務先の思想、後者(同人活動)については、東海晃久さんのKindle本(→例:https://www.amazon.co.jp/dp/B00U2U12PA/)とかが影響として大きいです。立岩さんや勤務先からは「知識は公開・蓄積・共有するもの」という姿勢を叩き込まれ(何しろ立岩さんのHPには編集者宛てメールが公開されているほどです)、東海さんからはこんな形の翻訳活動もあるということを教えてもらい、「ゆめみるけんり」をスタートするきっかけの一つにもなりました。

情報の公開に関連して、ちょっと別の話ですが、研究者の方こそwikipediaをどんどん編集するといいのになぁとつねづね思っています。日本における知識の入口としてのwikiの役割、あんまり軽視できないと思いませんか(韓国ならNaverとか、国によって知識の入り口はいろいろだと思うんですけど)。もし訂正したいことや正しい知識を共有したいということがあるならば、wikiの一般への訴求力はかなり大きいと思います。

(一般の知識の仕入れ先が貧弱ということでもあり、それはそれで改善していくとよい問題ではあるのですが、実際問題、「とりあえずの知識」の仕入れ先として、日本インターネットでwikiの比重はかなり大きい/大きくなってしまっているのではないでしょうか)

例えばですが、数年前に「ロシア宇宙主義」の項目を更新したことがあります。ロシア宇宙主義が「学派」であるというような誤解がツイッターで散見され、それを訂正したかったので、「学派じゃなくてそういう傾向ってだけ」と書いてみました。すると、個人的な体感ですが、その数か月後にはツイッターでの言及が目に見えて変化したことを実感しました。(書名は挙げませんが、ロシアの宇宙開発をめぐるある書籍の中の宇宙主義の解説で、明らかにわたしのwikiの文章を参考にしたと思われる箇所を見つけたこともあります)

他のロシア関係でいえば、例えば「フョードル・ドストエフスキー」の項目については、わたしが学生の頃から反ユダヤ主義に偏って記述されていると批判があるのですが、2023年に至るまで基本的には保持されてしまっている現状があります[→ノートに問題提起がある(24/9/2022付)ので、関心ある方は議論に参加されるとよいのではないでしょうか]。わたしはドストエフスキーについて何もわからないので、どなたか研究者の方こそ編集されるといいのではないかなと期待しています。むろんヴォランティアなので割に合わないと思われる方もいると思います。しかし見返りがまったくないかというとそんなことはなく、一般の知を訂正できる実感は確実にありますので。

こう書くと、わたしが今までwikiで編集した記事とか辿ろうと思えば辿れてしまうんですが……(まあ変なことはないので大丈夫なんですけど、あるバンドの記事を新しく立てたりとかですね)。

余談でした。

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