見出し画像

掌編小説「非ジンドー兵器」(700字)


『ヤツらは狂っている』

『もうこの兵器を使うしかない』





俺達のメリ村と、ヤツらのジパ村は目下戦争中だ。

人口、技術、戦略、すべてこちらが上回っているが、ヤツらはなかなかしぶとい。戦局としては余裕があるのだが、いかんせん戦争が長引くのは望むところではない。

そして俺達が最も恐れているのは、ヤツらの”ある部隊”の存在である。


”雷ジン特攻部隊” そう呼ばれるジパ村の兵士は、おのれの体に大量の爆薬を仕込み、こちらに突撃してくる。

そしてそのまま俺達を道連れに死んでいくのだ。



このままではいたずらに被害が拡大するばかり。

仕方ない、やはり今回の戦争も俺達のカミサマに頼る他ないだろう。



「カミサマ、カミサマ」

『プログラムを起動します』

『対象を設定してください』

「ジパ村、全村民」

『消去するものを設定してください』

「他人の幸福を願う心」


”雷ジン特攻部隊”には合言葉がある。

「 友に幸あれ 愛する者に幸あれ 未来の子らに幸あれ 」

そういってヤツらは死んでいく 幸福な笑みとともに死んでいく

自分の幸福を捨てて爆炎に消えていく 


ヤツらは狂っている

もうこの兵器を使うしかない


「カミサマ」は俺達の村の研究者が開発した洗脳兵器

設定した対象の、設定した『心』を消去する

ヤツらの『他人の幸福を願う心』を消去すれば、もはやこの戦争は勝ったも同然だ。


さあ諸君、最後の戦いといこうじゃないか

他人の幸せのために戦えなくなったお前らを、せめて俺達が蹂躙してやろう



「隊長!下がってください!雷ジン部隊です!前列が吹き飛ばされました!

「敵の後続が来ます!隊長!」



なんだと

なぜだ なぜ死ねる

なぜ



その答えを知ったのは爆炎に飲まれる瞬間


その瞬間に見た 敵兵の浮かべた悪魔のような笑み


そうか今お前らが願っているのは


俺達の

不幸


サポート頂けるととても嬉しいです