見出し画像

雑記|タイムトリップしたら、どうやって生きる?"コンティンジェンシープラン"を考える 

ポエジオな日々・・・
"ポエジオ"は詩情のこと。くだらない話からまじめな話まで、気ままに綴ります。

会社員時代に培われた能力を発揮したところ…

"詩のソムリエ"になる前、教育系の会社で5年働いた。仕事を通じて身につけたものはたくさんあるけど、そのひとつはズバリ「危機管理能力」

失敗すると影響が大きい仕事がその能力を磨いてくれた。その最たるものが、センター試験(※現在は名称変更)の自己採点を集め、即座に合格可能性を判定する業務。全国から集められた膨大なデータを迅速に、正しく処理できないと、受験生の運命を左右してしまう。失敗できない、絶対にだ。

そんなときは「コンティンジェンシープラン(不測の事態が起こった時の対応策)」。夏のうちから天災、人災、システムエラー…あらゆる危機を想定しプランを立てておく(1月になると、スキーと牡蠣もNGだった)。わたしは一年目から毎年この業務に関わり、パートリーダーも二度務めたが、胃の痛くなる仕事だった。
危機は見通すべし、そして備えよ。

***
こうして培われた危機管理能力ゆえに、ずっと真剣に考えてきたことがある。それが、「突然、過去にタイムトリップしてしまったら、どうやって生きていこうか」ということである。

タイムトリップはとつぜんに

身一つで過去に飛ばされてしまったら、なにもできない。いきなり不審な女が現れたら、捕らえられ、殺されてしまうかもしれない。「殺さないで、わたし◯◯ができます」と役人(?)に訴える必要がある…すごい知識とか。特技とか。芸術とか。「ふむ、生かしておこう」と思えるなにか…

なーんにもないわたしは、どう生きればいいんだろう。

そうだ、夫に相談してみよう


ある朝。テレビで、椿の種から椿油をとるシーンが流れていた。いざとなれば再現できるように…と真剣に観ていたのだが、圧搾する機械が出てきた瞬間に、「あ〜だめだ〜〜」となってしまった。生きるって難しい。

機械が出てきたらもう無理である

一人で悩むのも辛くなってきたので、ちょいと夫に相談してみるか…まぁ、みんなそれぞれに悩んできたのであろうから(※これは、このあとの夫の反応を観るにちがうらしいとわかった)と思い、コーヒーを飲んでいた夫に話しかけた。

「ねぇねぇ、わたしが過去に飛んでしまったとするじゃない。どうやってその時代を生き伸びられると思う?」

固まる夫

夫はしばらく固まったのち、ちょっと考えて、「英語ができるじゃん」と言った。

!!!

英語。それは盲点である。ちょっと生存率が上がった気がした。やはり人に相談すべきだなぁとありがたく思いながら、その話を仕事関係の方にしてみたところ、

「渡邊さん、どれくらい英語できるんですか?」と言われた。ドキリ。
英語はまぁまぁできるつもりでいたけど、コミュ力と雰囲気で乗り切っていただけなのでは…。

たとえばペリー提督と話ができるほどではないのは確かだ。開港ってなんていうの。オープンゲート?日本の将来がかかっているんだぞ。テンションで乗り切るわけにもいかない。

これはまずい。勉強しなければ。でも、社会人が英語をはじめるとき、100%「なんのために英語を勉強するのですか?」と先生に聞かれる。みな将来のために勉強するのに「えーと、過去に突然戻されてしまったときのために…」などと答えようものなら、別の所に連れて行かれるかもしれない。

待っているのは沈黙

***
生き延びるのは難しい。
家でふたたび夫にその話をしてみたところ、「まず、どの時代に飛ばされると想定しているのか。その上で対策を練ったほうがよい」というアドバイスをもらった。

目からうろこ

なるほど!33年間真剣に悩んできたわりには、細かい設定をせずにばくっと過去をとらえていたことがわかり、課題が明確になった。さすが夫。

たしかに、時代によって、生きるスキルと生きないスキルがあるだろう。英語が武器になるのは、江戸時代から?鎌倉時代に英語は意味がない。歴史の知識をフル活用して預言者っぽく振る舞うにも、だいぶ曖昧になってきている…。大化の改新、みなごろし。いやでござんす、ペリーさん。 

宇治拾遺物語にヒントを探る

そんなことを考えているうちに、学校で習った古文を思い出した。罪人が、うまいこと和歌を読んで許される、みたいな。

ググったら、宇治拾遺物語「歌詠みて罪を許さるる事」がヒット。大隅守が、郡司の職務怠慢を耳にし連れてこさせたら、白髪の老人だった…という話。鞭を打つのはかわいそうになった大隅守が尋ねるシーン。

「おのれはいみじき盗人かな。歌は詠みてんや」といへば、「はかばかしからず候へども、詠み候ひなん」と申しければ、「さらば仕れ」といはれて、程もなく、わななき声にて打ち出す。
(だいたい訳:「和歌は詠むのか」→「まぁ一応」→「詠んでみろ」)

そこで老人が詠んだのがこんな歌。

年を経て頭の雪はつもれどもしもと見るにぞ身は冷えにける

年をとって頭に雪(白髪)が積もり、霜には驚かないはずですが、笞(ムチ)を見ると身体が冷えてぞっとします
※しもと見るにぞ-「霜(しも)」と「笞(しもと)」を掛けた

それほどいい和歌でもないけど(失礼)、これを聞いた大隅守は

いみじうあはれがりて、感じて許しけり。

宇治拾遺物語 9-6 歌詠みて罪を許さるる事

と許してあげたそうな。(職務怠慢はどうなったんだ)

過去に飛ばされたときのコンティンジェンシープラン

古文から学ぶことは多い。やっぱり、和歌とか漢詩とかができると、英語が通用しない時代にも生き延びる確率があがるかもしれない。

というわけで、コンティンジェンシープラン(暫定)は以下の通り。

パターン1:江戸以前
和歌と漢詩の暗誦(できれば即興で作れると強い)

パターン2:江戸以降
英語

ふむ。
まだまだ知識・スキルを伸ばす必要はあるものの、こうやって整理したらなんとなく生存率は上がった気がしてホッとした。

結論:生きぬくために、和歌のひとつくらい詠めたほうがよさそう

***

最後までお付き合いいただきありがとうございました!過去に戻ったらどう生きるか、ぜひコメント欄で教えて下さい。

▼連載 いろんな詩が読めます

▼ワークショップ



この記事が参加している募集

はじめての仕事

そのお気持ちだけでもほんとうに飛び上がりたいほどうれしいです!サポートいただけましたら、食材費や詩を旅するプロジェクトに使わせていただきたいと思います。どんな詩を読みたいかお知らせいただければ詩をセレクトします☺️