あの世をつなぐ大きな月
「月がきれいだから散歩に行こうか」
晩酌してご機嫌になった父が言った。
大好きな父と手をつないで歩く。
太い指、あったかい手に包まれる。
「どこに行っても月がついてくるよ」
無邪気なわが子が月とかくれんぼ。
またみつかったと逃げ回っている。
父は黙って優しい笑みでわが子を見守る。
いつからだろう、
父と手をつながなくなってしまったのは。
遠い昔の記憶は薄れていくのに、
いまでも月が大きく見える日に思い出す。
あの日の大きくてあったかい手を。
大きな月が見える時、
あの世の父の手、この世の私の手は
あの時のぬくもりを思い出すことで
つながれるような気がする。
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