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咀嚼音を聞いていると、生きていることが耳に届きこそばゆい。今年は、庭の金柑にアゲハチョウ…
空が私を眺めている その眼差しは大きくひとつ瞬きをして 今まさに閉じようとしていた ただそ…
雨 雨の音一粒 一粒 一粒 ひと粒 粒 粒 雫は 重なり合ってリズムを刻む 耳をくすぐ…
その日、夫と息子は一泊二日、いわゆる男同士の二人旅に出かけることになっていた。息子は三歳…
手 目を閉じる 闇夜からそっと伸びてくる やわらかく温かい手のひらが まるくなった背…
いのり 空気のさわり心地はどんなかな 九月に生まれておとめ座の予定だった 七月に生まれてか…
「まなざし」について、ときおり考える。きっかけは、高文祭――全国高等学校総合文化祭――写真部門の展示を鑑賞したことにある。 数年前のことだ。縁あってその会場を訪れていた。いわば、高校写真部の全国大会である。各都道府県の代表作品が、大きな体育館いっぱいに展示されていた。全紙サイズのパネル写真は迫力がある。まるで、ひとつひとつが異なる世界を見せる窓のようだった。それぞれに違った空気が閉じ込められて、そこにある。 景色の美しさをとらえた写真、生き物の生きるさまをとらえた写真、友
手紙 月を見ながら歩いた 空気が優しく湿っ…
その日まで うちのうちがわ どろどろしとるんじゃ 自分でもどうなっとるんかわからんで …
おめでとう妊娠です、と医者は言ってくれなかった。また来週来てください。袋が見えます。こっ…
二〇一一年三月十一日 二〇一一年三月十一日 それは私のなかの小さな命が 命として この世…
誰かにとって特別でありたいと願うとき「誰か」は「本当はあの人」のことあるけど、すれ違うだ…
早朝、窓を開ける。ひんやりとした風がカーテンを揺らす。秋の風だ。しんとした、まっすぐな空…
八月 弔うことを許されないまま三年が経つ 明らかに明けた 夜の余韻を空の端に捉えながら 陽の下に呼吸すること を受け入れられないでいる 仮定法過去完了は心の中に ずんと沈んで 茶色くなった葉っぱを抱いた動かない水 みたいだ 生ぬるく静かにとろみを帯びていく 鼓動も呼吸も言葉にのせて飛ばせたのに あの日 おめ でとうもありがとうもごめんなさいも私の手の中にあふ れるほどゆれていたのに きっとあの人は どの色をし てどの形で現れても間違いなく私を 私の輪郭で撫でて くれたはず